バンドパロ　一匹狼の加入

紫音 @honey2_honey0

バンドパロ～荒北加入～ 福富が荒北を連れてきたあの日、新開がバンドに入ってほしいという事を伝えると考えさせてほしいと言われた。 東堂は何故荒北を連れてきたのかを改めて福富に訊いた。 福富の口から語られた荒北は噂とは違っていた。

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@honey2_honey0 福富は新開がベースの弦を買いに行くというので、楽器屋に一緒に来ていた。 新開を待っている間、福富は店内を見て回ることにした。 最初は自分の楽器であるドラムの売り場を、次に新開の楽器であるベースの売り場を見て回った。

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@honey2_honey0 最後に高校の部活で知り合った東堂の楽器であるギターの売り場に来た。 そこで、ギターを試しに弾いている男に出会った。 男の細く長い指がコードを抑える。 右手で弦を鳴らせば、しっかりとした音が奏でられる。 それが繰り返され、音が繋がり曲になる。

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@honey2_honey0 曲に聞き覚えはなかったが、その数分にも満たない時間で、福富は男のギターに聞き惚れた。 話しかけようとしたところで、店員が先に男に話しかけ、男は去っていった。 どうやら、ギターを見てもらっていたらしい。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 受け取った彼自身のギターは、美しい空の色をしていた。 男の姿が見えなくなって、しばらくして新開に声をかけられるまで、福富は男の去って行った方を見ていた。 そして、次の日学校でその男を見つけた為連れてきたのだという。

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@honey2_honey0 また、荒北が度々学校に来ないのは、怪我の治療の為に横浜にある病院に通っているからなのだそうだ。 荒北とは同じクラスではないので、分からなかったが、教員が彼を注意する事は無く、むしろ心配をしていた様に思える。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 東堂は噂だけで人を判断してしまったことを恥じ、福富がここまで言う荒北という人物に興味を持った。 同じギタリストとしても話しをしてみたい。 新開は福富が連れてきた時点で興味が湧いたようだった。 こうして、三人は何としてでも荒北を加入させようと誓った。

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@honey2_honey0 チャンスはすぐに訪れた。 あの日から一週間経ったので、もう一度声をかけてみようと、荒北のクラスに行ったがいなかった。 荒北が何処に行ったかを訊いて回っていると、学校の近くにある公園の方向へ歩いていくのを見た者がいたので、その公園へ三人は向かった。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 そこには、荒北と三人の男がいた。 何やら揉めている様だったので、失礼だとは思ったが、三人はしばらく話し聞くことにした。 男達は荒北のいたバンドのメンバーらしく、荒北に戻ってきてほしいということらしかったが、荒北は戻る気がないようだった。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 両者とも引かずに言い争っていて、決着は着きそうになかった。 荒北は溜め息をついて、そこから去ろうとしたところで、一人が腕を掴んで止めようとしたが、その手は勢い良く振り払われた。 それを見た男達は悪いと謝り、荒北はもう来んなと言って去って行った。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 東堂たちは、あの後荒北について調べた。 ネット上でそこそこ有名なバンドのギタリストであったが、ボーカルの男と折り合いが悪く、揉めてしまい右肘を負傷した事。 その為、バンドを脱退した事。 あの男達はそれを知っているから、引いたこと。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 そして、いまだにギターを大切にしている事から、まだ荒北は弾く気があること。 様々なことが分かった。 おそらく、荒北はこの事件の為に他人を信じきれないのであろうと推測した三人は、まず荒北と友人なることから始めた。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 廊下で会ったら話しかける、昼食に誘う、少々嫌がられても強引に距離を詰めていった。 もともと情には厚い性格なのだろう、ひと月もすれば、向こうから話しかけてくれるようになった。 最後のひと押しに三人は、一週間後にある文化祭のライブに来るよう言った。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 ライブ当日、観客の中に荒北がいることを確認した三人はステージに上がった。 最初は有名なバンドの曲を、短い自己紹介のMCをはさみ、最後の曲を演奏した。 最初に福富が聞いた荒北の曲を演奏した。

紫音 @honey2_honey0

@honey2_honey0 かなり難しいギターテクニックを必要とする上、東堂はボーカルもつとめていた為、間違いも多かったが、やりきった。 終わった後に現れた、荒北は嬉しそうで、でも泣きそうな顔で言った。 「オレを、お前らのバンドに入れてほしい」 三人は笑顔で、荒北を迎えた。