二人の軍師、同盟喫茶にてお互いの犬と猫について語る
同盟喫茶にて、灰斑の髪をした軍師と黒髪の軍師による閑話。
黒髪の軍師はhttp://nightcat-works.tumblr.com/
同盟アーティストにして、ノーラの宿敵。風使いのフーガさんのところにいる【昼行灯の軍師】、キョウ・シガさん
灰斑の男はhttp://togetter.com/li/781346
ノーラ・フォン・ヘルダーの友人でこの頃オプション【昼行灯の軍師】になった、プロフェットのガブリエリ・レヴィアタン。
ある日の同盟喫茶にて。 黒髪の男が、きょろきょろとあたりを見回した。混雑する時間だ、席にこだわってはいられない。 ふと見れば、一つ席が空いている。頬をかきつつ、彼は先客に尋ねた。 「相席構わんかのう」 「……。ああ、どうぞ。これだけ混み合っていると席を取るのは難しいだろうし」
2015-03-07 15:57:08先客の男は愛想なく、ちらりと彼を見上げて答える。 すまんのう、と答えながらへらりと笑って、彼は席に腰掛けた。給仕を呼び、桃まんと黒茶を頼む。そのままさくりと会話を切り出した。 「誰かと待ち合わせかのう?」 「どうしてそう思う」 「服に女子の髪がついていた故な。色男め、にくいのう」
2015-03-07 16:00:10そう警戒せんでくれと苦笑しながら言った甘味好きに、若干げんなりとして先客は答える。 「アレを伴侶にしたいなんて物好きがいるとは思えねぇな。野良猫の面倒見てるだけさ」 「ほう。猫か」 「目を離すとどっか行く辺りは猫としか言いようがないな。勝手に危機に陥って痛い目見て帰ってくる」
2015-03-07 16:03:20それは手を焼くのぅ、と笑って届いた桃まんを一口二口しながら、男は話を続ける。 「そういえば、うちは野良犬の面倒をみておってな」 「面倒見てるなら野良じゃないだろ」 「おぬしも野良猫の面倒を見ておるのじゃろう? まあなんというかこれがまた小汚い。遊び疲れて眠るまで汚れる聞かん坊よ」
2015-03-07 16:07:13それは手を焼くな、と我が事のように灰斑の髪の男は言った。じゃろう、と返しながら黒髪の男は答える。 「だから目が離せん」 「――」 「おぬしも、それは同じと見るがどうかのう?」 先客は口を沈黙を守った。苦笑して、桃まんを飲み下すと彼は続けた。 「なかなか素直にならん男じゃのう」
2015-03-07 16:12:37「そういうアンタはよく喋るな、『渭水の釣人』」 「おや、バレておったか。『墜ちた蛇』の情報網は侮れん」 言葉の割に険悪さはない。そも、互いに戦う術はあれど戦う気もなければ意味もない。第一この場所で揉め事を起こせば必ず自分にも返ってくる。 互いに理解しているからの会話であった。
2015-03-07 16:20:43「そちらの猫は元気でやっておるようじゃな」 「そっちの犬の話もこっちには多少流れてくるがな」 「ほう。ほう。それならばあの野良の機嫌も直ろうよ。今は少々お偉いさんに呼ばれているらしくな。珍しく文句ばかり言って出て行きおった」 「そうかい、うちのもだ。まさか盟主でも狙われたか」
2015-03-07 16:23:50「心当たりがあるような言い草じゃな?」 「勘違いすんな。そういうのやるならうちの猫が堂々と正面から心臓ブチ抜きに行く」 「はは。噂以上の活きの良さだの」 「どうせそっちも同じだろう。だから目が離せないんだよ」 「おっと、これは一本取られたのう」 黒茶に手を出す男に、先客は言った。
2015-03-07 16:27:15「やる情報はないし、仲良く茶しばく間柄でもないだろ。とっとと立ったらどうだ」 「なんじゃ。わしは楽しく茶の時間を過ごしているのじゃがのう」 「俺は楽しくない。何が悲しくて野良犬の飼い主と同席する意味がある」 「安心するが良い。どうせ犬はここには来んよ」 「どうしてそう言い切れる」
2015-03-07 16:31:19「犬はここの連中に嫌われておるからのう。もっとも、給仕の名だけは定着したようだが」 「――いい話を聞いた。猫もここで遊ばせる分には安心できそうだ」 「おっと、これは大事な情報を渡してしまったかのう? ここの茶代くらいにはなりそうじゃが、どうか」 「つくづく腹立つなお前」
2015-03-07 16:33:40言って勘定をひったくる辺り、男は見た目によらず律儀なようだった。 なに、と甘味好きは呟く。 「たまには息抜きも重要じゃろう。犬も猫も生き急ぎすぎる、手綱を取る側までそのペースに引かれてはかなわんよ。だらりべたりと、益体もない話をする相手にくらいはならんか」 灰斑の男はしばし沈黙。
2015-03-07 16:37:43「アンタの話に興味はない、が」 「が?」 「……猫がいる間の駒遊び程度なら付き合ってもいい。さっきも言ったろう、目を離せないってな」 「それはいいのう」 笑って、男は茶を飲み干した。
2015-03-07 16:39:25