人間のもっとも強い力は「さみしさ」だ。作家 中森明夫さんが渾身の著書『寂しさの力』の発刊を前に連続ツイート。
1)2011年3月11日、あの大地震が起こった時、一番最初に顔が思い浮かんだ人がいるはずです。その人を幸せにしてください。その延長上に社会も日本も世界もあると信じます。(続く
2015-03-11 14:47:122)先と同様のツイートを毎年、私は発信しています。あの日、大地震が起こった時、私が一番最初に思い浮かべたのは…母の顔でした。意外でした。田舎で暮らす母とは疎遠にして、めったに会わない。それでもあの時、慌ててTELしてつながらない不安といったらなかった。(続く
2015-03-11 14:50:023)震災後、母とは電話でよく話すようになった。老齢の母は愚痴っぽくなり、意味不明のことを口走り、やがて「寂しい、寂しい」と泣き出した。たまらない気持ちになった。電話を終えた後、私は以下のツイートをしました。(続く
2015-03-11 14:53:414)〈人間のもっとも強い力は何だろう? 寂しさの力じゃないか〉〈人はなぜ寂しいのか? そりゃ生まれてきたからでしょう。生きるとは、寂しさを肯定することですね。寂しい人ほど、より生きている気がする〉(続く
2015-03-11 14:55:405)リプライがあった。〈寂しさについての本を書いてください〉出版社の方からです。会ってお話すると、私のツイートに感じるものがあったと言う。寂しさの本を書こうと思いました。母のために。母の人生を、その寂しさを肯定するために。(続く
2015-03-11 14:58:366)苦闘しました。尋常小学校出の無学な母でも読める文章でなければならない。書いては直しの繰り返し。筆が進みません。一年が経過した。母が病に倒れたという。思い肺炎だそうです。慌てて伊勢市の病院へと駆けつけました。(続く
2015-03-11 15:02:447)鼻に酸素吸入の管をつけ、腕に点滴の針を刺した変わり果てた母の姿が…。私は寄り添い、母の手を握った。「母ちゃんのために書いたんや」と書きかけの生原稿を母の耳もとで読み上げました。「これが完成するまで死んだらあかんで」母は微笑みました。(続く
2015-03-11 15:06:008)翌々日の朝、母は息を引き取りました。未完成の生原稿は棺に入れ母と一緒に焼いてもらいました。母ちゃん、ごめんな、間に合わんかった、僕の本…と謝りました。母は自分にとって一番大切な人だった。亡くなってわかった。馬鹿息子です。(続く
2015-03-11 15:09:449)私みたいな親不孝者が一生に一度、母ちゃんのために本を書いたのに…。神様って残酷だなと思いました。意欲を失って本の執筆は中断しました。気持ちを取り直したのは『あまちゃん』のおかげです。私はこのドラマにハマり毎朝、感想ツイートを続けた。(続く
2015-03-11 15:13:0110)全国に『あまちゃん』ファンの仲間ができた。ドラマ終了後、盛岡や大阪へ行ってファンイベントに参加した。楽しかった。なぜ、みんなに会ったんだろう? 寂しいからじゃないか。私は寂しさの本の執筆を再開しました。(続く
2015-03-11 15:16:1311)昨年夏、盛岡で「あまちゃんサミット」に参加。その夜はすごく盛り上がった。翌朝、ホテルで目覚めるとノートに原稿を書き始める。最終章は盛岡駅の待合所で書き上げました。迷った末に亡くなった母のことを。涙があふれて止まらなくなった。母との本当のお別れでした。(続く
2015-03-11 15:19:5612)震災の年から書き始めた私の本は、4年を経て完成、まもなく出ます。『寂しさの力』(新潮新書)です→amzn.to/1FJiw3o その間、私は大切なものを失った。けれど、東北へ行って震災によって大切なものを失った方々からお話を聞きました。(続く
2015-03-11 15:23:5413)「悲しさ」は時を経て「寂しさ」に変わります。私の母はもういない。私が捧げた本を受け取らなかった。反対に私にくれた。すごい力を。自分の命と引き換えに。母が亡くなって人生でもっとも寂しかった。その寂しさの力で本を書き上げたんです。この力が通じないはずがない。(続く
2015-03-11 15:27:1414)『寂しさの力』の最終章は55年生きて、30数年ライター生活を続けた私の全力を振り絞ったものです。自分はもうこれ以上の文章は書けないかもしれない。私が死んだら、この本を棺桶に入れてもらって、一緒に焼いてもらうつもりです。(続く
2015-03-11 15:30:5115)3月19日に盛岡へ行って『寂しさの力』の出版講演会に出ます→→jyosi100.com/?p=5074 地元の、さわや書店さん主催、あまちゃん仲間のマキリンリンさん→@makirinrinn が尽力してくれました。盛岡で書き上げた本、東北に力をもらった本です。(続く
2015-03-11 15:35:1116)3月28日(土)には大阪で『寂しさの力』イベントがあります→ptix.co/1MGUniC 関西あまちゃんオフ会のホリーニョ→@horinyo が主催してくれる。関西の皆さん、ぜひご参加ください。関西で面白いことやりましょう! 寂しさの力を使って… (続く
2015-03-11 15:38:3317)3月25日には東京の三省堂書店有楽町店さん主催で『寂しさの力』トークイベントがあります→goo.gl/ckNF4C 三省堂有楽町店は私の小説『アナーキー・イン・ザ・JP』をもっとも応援してくれた副店長の小松崎敦子さんがいらっしゃったお店です。(続く
2015-03-11 15:41:3218)3年前、小松崎さんは若くして亡くなられました。私は自分の新しい本が出ると、必ずこの書店の売り場へ行って、心の中で小松崎さんに手を合わせます。小松崎さんの魂は彼女の愛した本のそばにいると信じて。小松崎さんに恥じない書き手でありたいと思っています。(続く
2015-03-11 15:45:0619)東日本大震災から4年がたちました。震災で亡くなられた方、今も避難生活をされている方、つらい思いをされている方、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。私は微力ですが、それでも、また東北へ行こうと思っております。東北の地に感謝しています(続く
2015-03-11 15:49:1420)あれから4年が過ぎました。私と同様に大切なものを失くされた方もいるでしょう。「悲しさ」は「寂しさ」に変わります。しかし、その「寂しさ」には人間のもっとも強い力があると私は信じています。連続ツイート、失礼いたしました。(終わり
2015-03-11 15:52:50