Loving Brings Love (前編)

りえぷぅ @riem124blue

1 わたしが勤めるこの会社は、とある町の小さな楽器店。 社員も少ないので、みんなが兼任、協力して仕事をしてる。 村上「出すの忘れとっただけやん！精算してや！」 ☆☆「当日出すようにいつも言ってるじゃないですか！」 村上｢それは分かっとるがな！頼むわー！｣

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2 村上専務はこうやっていつも経理長の☆☆さんと喧嘩？してる。 この２人、実は怪しいとわたしは睨んでるんだけど。 専務はピアノ技術士。 基本的に個人宅や学校などを訪問してピアノの調律などをしてる。 錦戸「専務！社長は？」 村上「あれや！あのー！この前言うてたやつ！」

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3 錦戸「えぇ？それじゃ全然わからん…。」 先輩の錦戸くん。 先輩だけど年下で、普段は亮ちゃんと呼んでる。 というか、そう呼べって言われた。 亮ちゃんはいわゆる営業マン。 安田「あれちゃう？入札。」 村上「あー！それや！」 安田くんは亮ちゃんと同期・同級生。

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4 安田くんも営業、外回りが主な仕事。 章ちゃんって呼んでる。 安田「じゃ、俺外回りいってきます！」 彼が席を立ったその時、事務所のドアが勢いよく開いた。 横山「あー！腹立つ！」 それぞれが「おつかれさまです」と言う。 横山社長、まだ若いけど、実は結構なやり手。

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5 村上「なんや、入札あかんかったんか？」 横山「いや！落とした！」 みんなが「おぉ！」とか「ふぅ～♡」とか言うと、ちょっと照れつつのドヤ顔。 ほらね、今日もこうやって契約取って来た。 横山「いやさ！あの狸じじぃがまた喧嘩ふっかけてきたから、直前に見積り書き直してん！」

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6 まぁ多少強引。 村上「あぁ？！あれより金額下げたんか？！」 横山「まぁな！」 村上「まぁなちゃうわ！あほか！！あれでもギリギリやったやろ！！」 横山「まぁ、そこは村上専務の腕でなんとか仕入値を…なぁ？」 両手を合わせて専務を拝む。 こんなじゃれ合いが日常。

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7 社長は横山社長だけど、実は村上専務と一緒に立ち上げたこの楽器店。 横山社長は酔うと「ヒナがおらんかったら、この会社はできとらん！」っていつも言ってる。 その感謝の意味を込めての社名なんだとか。 村上「仕入値もギリギリまで値切っとんねん！これ以上できるかいな！」

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8 横山「そこをなんとか！お願い！お願い！お願い！お願い！」 安田「…ほな、俺行ってくるわ。」 そんな２人を横目に、章ちゃんが今度こそと荷物抱えて事務所の出入口へ。 開けようと手を伸ばしたドアが、反対側から勢いよく開く。 渋谷「ヤス！」 安田「うわぁっ！びっくりした！」

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9 渋谷「おっ！セーフ！！」 安田「セーフちゃうわぁ～。もぉ出んで？俺。」 渋谷「いやいやいやいや！その前にちょっとギター見てみ？」 安田「修理？渋やん見れるやろー？」 渋谷「いやいや、ちょアドバイスやん！」 店長の渋谷部長。 店頭の責任者で、楽器の修理などをしてる。

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10 時々こうやって章ちゃんに甘えたりするんだけど、幅広い楽器を修理できる、優秀な人。 接客をしながらの作業なんだけど、唯一残念なのが、ちょっと無愛想なこと。 極度の人見知りなのだとか。 専務から「接客業やのに無愛想ってなんや！」といつも怒られてる。

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11 そして、結局連れて行かれる章ちゃん。 村上「自分で値下げ交渉しぃや！」 横山「そんなん言わんと！お願い！」 錦戸「俺、社長に話あんのに…。」 まだやってる…。 ☆☆「いい加減にしてください！落札したもんはしょうがないでしょ！！専務！すぐ仕入先に交渉！」

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12 ☆☆「社長！錦戸くんが話あります！」 「はい…」と大人しくなるみんな。 さすが☆☆さん！ 言い終わって、また平然と仕事に戻る。 結局影で１番強いのは彼女かも(笑) そんな☆☆さんは、経理長。 わたしは彼女と一緒に経理をしている。 そんな楽しい会社――――横村楽器店。

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13 ☆☆「〇〇、お昼入っていーよ？」 〇〇「お先にいいんですか？」 ☆☆「これ先にやっつけたいから。」 横山「おー、〇〇一緒行くか？」 電話やらお店もあるので、休憩は交代制。 〇〇「じゃ、お先に入らせてもらいます。」 社長と一緒に会社を出る。

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14 横山「まるんとこでえぇ？」 会社の近くにある丸山さんが経営している“居酒屋まんまる”は、お昼にはランチの営業もしてる。 丸山さんは社長の大学の時の後輩。 お店が近いこともあって、まんまるには会社のみんな毎日のように通っている。 丸山「いらっしゃーい♪」

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15 いつものニコニコ優しい笑顔で迎え入れる丸山さん。 お店はさほど広くはないが、シンプルな作り・内装で、落ち着ける空間。 丸山「今日の日替りランチはこちらですよ～♡」 横山「あー、俺これでいいわ。〇〇は？」 〇〇「わたしもこれで。」 丸山「はい、かしこまり～♪」

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16 丸山さんは爽やかにその場を立ち去る。 現在、アルバイトを１人しか雇っていない為、丸山さんは注文から調理までなんでもこなす。 横山「相変わらず元気やなー！忙しそーやのに。」 〇〇「そうですね。」 横山「まー、あいつも嫁もらうからには頑張らんとなー！」

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17 実はまだ紹介していない横村楽器店の社員がもうひとり。 店頭販売員の◎◎さん。 彼女は丸山さんとお付き合いしていて、もうすぐ結婚することが決まっている。 ◎◎さんは、結婚してこのお店の手伝いをする予定の為、うちの会社をもうすぐ退職するのだ。

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18 横山「うちの大事な社員盗みとるんやから、頑張って繁盛してもらわな、な！」 〇〇「盗むって…(笑)」 横山「専務に任せとるけど、募集の方はどうなってんの？知ってる？」 〇〇「何人か応募はあったみたいですよ？近いうちに面接するんじゃないですか？」

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19 横山「へー、そうなんや？」 〇〇「へーって、社長も面接はするんでしょ？」 横山「そうなんかなぁ？」 そこへ「お待ちどうさま～♪」と丸山さん。 「いただきます」と、社長と一緒にランチを食べ始める。 〇〇「社長の会社でしょ？面接はちゃんとしてください！」

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20 横山「おん…てか、おまえ、だんだん☆☆に似てきたんとちゃう？」 〇〇「え？そうですか？」 横山「うーん…あんま似らんといてくれ。あんなん２人もおったらコワくてしゃあないわ！」 冗談まじりに言って、社長が笑った。 もちろんランチは社長の奢り。

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21 かっこよくて、ちょっと抜けてて、照れ屋で、優しい…社長なのに、みんなにイジラレちゃったりして…そんな社長がみんな大好き。 この社長だから、うちの会社はこんなに楽しく仕事ができるんだと思う。 会社に戻ると入れ代わりで村上専務と、☆☆さんが休憩に入った。

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22 店頭では渋谷部長が、退職の決まってる◎◎さんに、小物楽器の受注やら値段のことでレクチャーを受けてるようだった。 ◎◎「鍵盤ハーモニカのホースは絶対切らさないで下さいね？」 渋谷「でも売れるん春先だけやろ？」

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23 ◎◎「そんなことないです！本体と違って、ホースは消耗品みたいなもんですから！年中売れるもんなんです！」 渋谷「へぇー？」 あれだけ幅広く修理できるのに、関係ない商品の事とかは、無知だったりする部長。 無愛想でもかっこいいから、部長目当てで来るお客さんもいたりして。

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24 あ、ほら、今日も来てる。 あの子絶対部長のことが好きだ。 今日もちらちら部長を見ながら店内をうろうろ。 ギターをやってるらしくて、ギターを見たり、たまにピックとか弦とか楽譜を買って行く。 部長…こんなふうにモテるのに、彼女の影を感じないんだけど…やっぱりいるのかな？

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25 休憩終わって戻った専務と☆☆さん。 ２人も“まんまる”でランチしたらしい。 今日の日替りもおいしかった、みたいな話で盛り上がる社長と専務。 そこに亮ちゃんが外回りから戻ってきた。 錦戸「社長！今朝の見積り通りました！」 横山「おー！ホンマかぁ！やったやんけ！」