《おてて》安田くん、サバンナへ行く

hikari∞短めのお話 @love_suzume

1. 「カップルシートしか空いてないっす」 って満喫の受付の金髪の兄ちゃんが言って...。 「安田くん、平気？私全然いいけど」 ちょっと動いたら手も足もぶつかりそうな狭いブースで、あいつとふたりっきり。 プロジェクトが無事成功して打ち上げで飲んで、案の定終電逃して...。

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2. 同期入社のこいつは、そもそも女として見るのはちょっとアレなタイプで。 ってこいつも俺に言われたないやろけど。 帰国子女でB型で末っ子の3月生まれって、俺的なわがままスペックもれなくフルコンボやし。 気も強いけど我も強いし。

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3. 「あー眠い。ごめん、寝る〜」 さっさとパンツスーツのジャケットを脱いで、一個しかないデカいクッションに身体をうずめて目を閉じた。 ほらほら。 そーゆーとこやで、俺がゆってんのは。

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4. でも、先月初めて二人で任された企画では、抜けの多い俺を何度もフォローしてくれたし、クライアントにも気に入られてたし、正直こいつがおらんかったらって考えるとぞっとする。 仕事仲間としては頼りになるええヤツやねんけどなぁ。 だまってりゃ、美人ってことにしてやってもいいのにな。

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5. 部署恒例の男限定飲み会ではいつもそう言われてる。 あいつはないない。 エッチのとき怒られそうじゃん。 そこ違うっ！とか言われそうだし。 女たらしで有名な先輩にすらそう言われてた。 かわいそうなヤツ。

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6. 早くも隣から、健やかな寝息が聞こえてきた。 ガサツやわぁ。 何でこんな空気の悪い不衛生なとこで何のためらいもなく寝られるんやろ。 それも、目の前に一応男おんのに。 こいつ、危機管理シュミレーション能力ゼロか。 や、俺がバカにされてんのか。

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7. 考えんのもアホらしなって、雑誌でも取りに行こうと思って立ち上がった。 「んっ...だめぇ...んぁっ」 いかがわしい声が聞こえてギョッとする。 えぇ...何よ...。 まさかアレちゃうやろな...。 となりのブース...からちゅぱちゅぱ音が聞こえて...。

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8. おそるおそる上から覗き込んだ。 見るからに頭の弱そうな、大学生とおぼしきカップルが半脱ぎで乳繰り合ってる。 「んやぁっ、声...出ちゃう...」 女がそう言うと、男がキスで口を塞いだ。 何をしとんねん...。 ホテル行かんかいホテル！

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9. うしろでガサって音がして、びくっとして振り返ると、あいつが寝返りを打ったとこやった。 はぁ...。 焦ったぁ...。 って、なんで俺が焦らなあかんの。 アホらし。 ワザと音を立てて立ち上がってブースを出ると、隣は静かになった。

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10. 戻ってきて、雑誌と漫画をパラパラしてると、またちゅぱちゅぱ始まった。 「んっ...ねぇ...ヤバイって...」 「だって...もう入りたいって」 あいつがまた、もぞもぞ動く。 声デカいっちゅーねん...。 起きるやんけ...。 「っ...誰...が？」

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11. 「俺の、ぞうさんが」 何を言うてんのこの男。 「えっ...すごい、インドゾウみたいっ」 「ちげえよ、アフリカゾウ」 ...どっちゃでもええわ。 「ぞうさんは〜、何が食べたいのかな？」 「え〜、トムソンガゼル」 「ちがうよ、マングースだよぉ」 あったま悪ぅぅっ！

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12. んで、何でさっきからサバンナ縛りやねん。 「早くしないとアフリカ帰っちゃうって」 ...逆にキニナルわ。 その自称アフリカゾウがいったいナンボのもんなんか。 出来心ですよ。 ほんの出来心。 息を殺してそっと上から覗く。 あほ、その手がじゃまやっちゅーねん...。

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13. 振り返ってあいつがしっかり寝てんのを確認して、パソコンの乗ってるデスクの上に膝をつく。 「帰っちゃやだぁ...ぁっ」 「ん、じゃあこっち...」 あ、もーちょい向こう...。 「安田くん、何してるの？」 心臓がバウンドして、派手な音と一緒にデスクから滑り落ちた。

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14. 「え？あーあーあー」 サバンナカップルの喘ぎ声をかき消すべく、咄嗟にデカい声が出る。 「ちょっと！しーっ！」 あいつが言って、隣は流石に静かになった。 ............。 「あーっと、ちょっと、身体痛なって...た、体操...？」 「ふーん」

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15. あいつはぐっと伸びをして立ち上がった。 「ど、どこ行くん？」 「え？飲み物。なんかいる？」

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16. 持ってきてもらったうっすいコーラを飲んで、気持ちを落ち着ける。 ふぅ。 ヒヤヒヤするわ。 いくら隣がこいつでも、うっすい壁の向こうでアンアンやられたら、気まずくてしゃーない。 「シてあげよっか」

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17. 「...は！？なな、なにゆーてんの？」 「ばーか。マッサージ。身体、痛いんでしょ？」 深夜２時に密室でマッサージって、なかなか卑猥な響きやけど、そんなん感じる暇ないほど、あいつのマッサージはホンキやった。 「あ...痛っ...お前...めっちゃ上手ない？何...っ」

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18. 「昔、ボランティアしてたの」 散々いじられた後、おしまいって言って、背中をばんって叩かれた。 「ボランティア？」 「そ。老人ホームとか、障がい者施設とか。そこで覚えたんだよねー」 なんか...意外。

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19. こいつはよく言えば合理的なやつで、悪く言えば 「労働と報酬は等価交換であるべきです」とかなんとか、上司にもさらっと言ってサビ残ぶっちぎるやつで、善意の無償労働なんて忌み嫌うタイプやと思ってたから。 「はぁーあ、眠。安田くん寝ないの？」 「え？あ、うん、寝るわ。寝る寝る」

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20. 隣がおとなしくしてるうちに眠ってしまえば、心乱されなくてもいいわけやし。 なのに数分後、健やかな寝息が聞こえてきて、俺はまたもやサバンナに放り出された。 「っ...もうムリ...挿れていい？」 「んっ...だめぇ...」 「はぁ...お前...ぐっちょぐちょじゃん」

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21. 「っあ...やっ...指だめぇ...」 ちゅぱちゅぱに加えてぴちゃぴちゃ音がしてる。 あんなアホカップルやって分かってても...あー、あかん、めっちゃムラムラしてきた。 ぎゅうって目を閉じて耳を塞いで...。 喘ぎ声が小さくなって、意識がだんだん遠のく。

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22. ...このまま眠れそ...。 はぅ...めっちゃ気もちい............。 ......！ はぁ？ 気もちいって何？ 股間がサワサワしてんのに気づいて、慌てて目を開けると...。 「あ...起きちゃった？」

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23. あいつが、俺の...その、ソレを服の上からさすってる...。 「なななな、なに？なんしてんの...？」 「マッサージ？」 にこって笑ってそう言うと、絶妙な力加減で扱いた。 「...あ...っ」 「大変そうだったから、助けてあげようと思って」 「ちょっ......っ」

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24. 「ほら、私、ボランティア精神に溢れてるから」 なんなん？ こいつ、普段は全然下ネタとかあかんタイプで、先輩が大人しい新入社員の子に「彼氏いるの？」って聞いただけで「それセクハラです！」って先陣切って言うタイプだったはずで...。 やっとの思いで身体を起こす。

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25. 「あかんって...ちょっと...」 「だってこれじゃ眠れないでしょ？」 いやいや、そーゆー問題ちゃうねんけど...。 力ずくで跳ね除けることなんて余裕でできんねんけど、このサービスが気持ちよすぎて、このまま最後までしてくれへんかなってちらって思ってしまって...。