黒　SS

すみれ♡ @magic88word

1 「…もしもし」 『…きみくん？起きてる？』 「起きてるから電話出とんねん」 『もう寝る？』 「ん？まあなぁ」

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2 『誰もそばにいない？』 「はあー？」 『誰かいるの！？』 「誰がおんねんな」 『ほんとに？』 「なに言うてんの？」

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3 『じゃーあー …今から行ってもだいじょうぶ…？』 「え…」 ピーンポーン♬ な、なんなん…？ ドアスコープをのぞいたら あいつが立ってる えー？マジかい！ 慌ててドアを開ける

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4 「どした！？」 『んふ♡』 「んふ…て、おま… こんな時間にどうやって…」 『あ、そうそう…』 もう一回廊下に戻ると 下の道に向かって 頭の上でおっきい丸を作って手ぇ振る のぞいてみたら タクシーのそばで おっさんがおんなじように 丸を作っとった

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5 「あれ、誰？」 『タクシーの運転手さん』 「せやろな」 『入れてもらえなかった時のために 待っててもらってたの』 「黙って来るからやろ しかもこんな時間…」 『…そうだった！早く！入って！』

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6 背中を押されて中へ入る …って俺んちやん 「なんやねん…」 『10、9、8、7、』 なに？なんか発射するん？ 急に大きい声出すから 耳ふさいでしゃがみこむ

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7 『3、2、1、おめでとう～!!』 うわうわ… 「なにすんねん」 『お誕生日おめでとう♡』 「ありがとう…ってこれぇー」 『時間的にクラッカーはうるさいから 銀テープ…』 「また、ようけ…」 『新幹線の中で巻いてきたの』

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8 「おまえはもう…」 『きみくん…』 銀テープ拾ってるのを つかまえて抱きしめた 「こんな時間にひとりで危ないやろ」 『仕事終わりに最終の新幹線に 乗れたら間に合うなって思って…』 「俺おらんかったらどうすんねん」 『ごめんね…』

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9 『世界で一番そばにいたかったから …5月9日になった瞬間に…』 ほんま時々びっくりさせられるわ 「日曜日までおれるん？」 『いてほしい…？』 「…おん…」 真っ赤になってる顔を 見られないように腕に力を込めた pic.twitter.com/ZnsOx2fF5w

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1 ピンポン♫ …こんな時間に誰？ 音をたてないようにドアの外をのぞく …きみくん！ いそいでドアを開けたら 寒そうに襟を立てた きみくんが立っていた 「ただいま」 『ただいま…ってびっくり…』 「そこはおかえり…やろ」

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2 カバンを持ってない方の手で 私を抱き寄せて入ってくる 「最終の新幹線乗れてもうた…」 『こっちで仕事なの？』 「いいや…また帰るで月曜日…」 カバンを置くと 「ほら…あれや、ホワイトデーやろ」 私の頭を雑に叩いて言う 「ちょっと過ぎてもうたけど」

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3 『はい』 ソファのきみくんの脚の間に座って 見上げると両手を出す 「なに？」 『ホワイトデーのプレゼントは？』 「えっ？…わ、忘れた」 『えーうそ～』 「かわりに甘ーいチュウやるわ」 『…』 「おまえ今つっこむとこやで」

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4 『じゃ…ちょうだい』 「へ？」 『あまーいやつ』 きみくんの膝の上に跨って 首に手を回す 「んふふ…も、やめろ…て」 つっこみに弱いきみくん さっき見ちゃったよ コートのポケットの中に 駅で買ったマシュマロ pic.twitter.com/vVGjdNXxiI

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1 「インフルなってもーた(^^;」 きみくんからの LINEに気づいたのは 残業を終えて帰宅するバスの中 夕方の診察が始まるのを待って 受診したのかな もう３時間近く経ってる… 寝てるよね 『だいじょうぶ？』 それだけ送ってみる

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2 すぐに既読になって驚く 起きてるの？ そして間を置かず浮き出す吹き出し 「はあーしんどいー」 だいぶやられてる 弱気になってるときのやつ 『ごめんね今バスの中だから 電話できないの』 またすぐに返信がある ｢ええよ、うつってまうから」

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3 電話ではうつらないよ、きみくん そう返そうとしてやめた 弱ってる声聞かせたくないのかも… 「点滴うたれて最悪」 『きみくん注射嫌いだもんね（笑） 熱は？下がった？』 「笑い事ちゃうで、おまえ… まだ38℃もあるねん」 『そうかー、とにかく寝ないと』

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4 「しばらくは外出禁止や」 『ごはんは？なにか食べれてる？』 「んー、今日はなんも」 『水分は？』 「水飲んでる」 ひとりで何もできないのに こんな時ぐらいそばにいたいのに… 「こういう時ひとりでよかったわ」 『え？』 「おまえにうつさんですんだ」

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5 聞こえたの…？ 私の心の中の声 こんな時に強がって 今すぐとんで行きたくなる 「そういうことやから 今週は帰られへんで、風邪引くなよ」 『うん』 「そこはつっこむとこやで おまえが言うなって」 『きみくん元気だね 熱下がってきたんじゃない？』

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6 「そうかもなー ほな寝るわ、おやすみ」 やっぱり電話しなくて正解 弱ってたのは私のほう 結局励まされたのは私… 来週は大威張りで帰ってきてね 「また痩せてもうたで」って pic.twitter.com/y4T8zn7b3I

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1 『もしもし…きみくん』 「ん…ちょうどよかったわ 今帰ってきたとこや」 『今日も遅いね…おつかれさま あ、雨は？降ってなかった？』 「うん、めっちゃ寒いけどな… 雪降るんちゃうかってぐらい」 ときどき鼻をすする きみくんの小さな声

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2 ほんとは電話なんかしないで 早く寝たいのかな 声聴きたいの 私だけなのかな 『きみくん…』 「せや、駅前のたこ焼き屋台 もう出てきたか？」 『…うん、一昨日から』 「そーか…いつもめっちゃ寒なったら タイミングよう現れんねんなー ほんでどうやった？」

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3 『え？ほんでって？』 「買うたんやろ？もちろん」 『うん、おいしかった 8個250円になってたけど』 「とうとう値上げしよったんやー あ、おっちゃん元気やったか？」 『うん…おっちゃんも言ってた きみくん元気かー？って』 「お、そーか」

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4 「久しぶりに食いたいな～ おっちゃんのたこ焼き…」 『うん』 「逢いたいな～」 『…』 「ん？どした…？」 『ううん』 「…心配すんな」 『え…』 「屋台あるうちに帰るから…」 『きみくん…』 「あのおっちゃん、ぬくなったら すぐおらんくなるからなー」

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5 「なんや…寝てんのか?」 『…』 泣いてるのバレるから 返事ができない 「俺の声…きこえてる？ いま世界で１番そばにおるやろ」 きみくんが やっとききとれるほどの 小さな声でささやく 『…』

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6 「今のつっこむとこ！恥ずいやろ」 いつもの調子に戻ってどなるから 泣き笑い… さっきの台詞 録音して残したかった 離れてるけど 電話だからこそ言えることもあるね あったかくなる前に たこ焼き食べに帰ってきてね pic.twitter.com/e17U8Lu5iS

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