(備忘録)戦間期~WW2の英戦車のあれこれ

まとめました。
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Bunzo @Kominebunzo

40年の8月にエジプトへ戦車を送り出したようにチャーチルも陸軍も本土防衛に戦車が足りないとは考えない。制空権も制海権も無いままドーバーを越えて来ても何とかなるという理屈で大陸の港を監視し続けて9月には「やっぱり諦めたな」と思っている。 pic.twitter.com/Z60su0e0Dy

2014-11-30 20:51:33
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Bunzo @Kominebunzo

この惚れ惚れする位に強気な情勢判断の結果がマチルダ2908輌、ヴァレンタイン7041輌クルセーダー4917輌チャーチル4276輌の大増産で「初期」の英戦車だけで3号以降のドイツ戦車の生産数に量的に釣り合う数。そのしっぽにくっついているのがカヴェナンターの1770輌ということ。

2014-11-30 21:05:59
Bunzo @Kominebunzo

海軍と爆撃機コマンドの威力を過大視してドイツの生産力を過小に見たことを笑うのは簡単なんだけれども「とりあえず量産可能な戦車を」と大増産されたガラクタ戦車の役割は「本土の危機を救う」為ではサラサラなくて、急速に衰える(はずの)ドイツに「これを使って勝つ」為の装備だった、というお話。

2014-11-30 21:11:40
Bunzo @Kominebunzo

昭和14年、帝国陸軍は戦車委員会を設けて次世代戦車の仕様を討議していた。47㎜砲の採用はここで決まり、その最中にノモンハン事件が起こり、BT砲塔を真似たチハ改の砲塔が生まれたりしている。では外国ではどうかと言えば、英国でも同じころ、同じようなことをやっている。

2014-12-02 05:15:35
Bunzo @Kominebunzo

英国戦車がとにかく数を作った理由は戦争見通しにあったにせよ、それだけでは納得が行かない。質的にどうして「あんな」なんだろうという疑問がいつまでも残ってしまう。とにかく数を、と決まってから丸々3年もの間、ろくな修正がなされなかったのは何故なのか知りたくなるのが人情というものだ。

2014-12-02 05:23:22
Bunzo @Kominebunzo

英国で第一回戦車委員会が開かれたのは1940年6月後半。この時に戦車の性能で優先されるべきは何は無くとも第一に装甲、それから火力、三番目に信頼性という結論。1939年の参謀本部要求で歩兵戦車主体の生産が決まり、大陸の戦闘で少数のマチルダが活躍した戦訓がベースで大きな変化はない。

2014-12-02 05:36:33
Bunzo @Kominebunzo

歩兵戦車中心の戦車整備方針はそんなに長く続かない。ドイツの電撃戦の研究が進み北アフリカの戦訓が入って来る1940年暮れには参謀本部が「やっぱり戦車生産の比率は機動戦向きの巡航戦車70%、歩兵戦車21%、あまり役に立たないことが解った軽戦車は9%にしたい」と言い始める。

2014-12-02 05:43:41
Bunzo @Kominebunzo

参謀本部要求の変化に戦車開発と生産を合致させようと開かれたのが第二次戦車委員会で巡航戦車の増産や2ポンド砲から6ポンド砲への主砲の強化などが検討される。けれどもこれが実行に移せない。一旦、仕込んでしまった最初の方針に沿った車種と数量がどんどん形になって来ていたから変更できない。

2014-12-02 05:51:21
Bunzo @Kominebunzo

6ポンド砲100門の生産要求は既に進行中の2ポンド砲600門の生産を妨げるとして却下され、戦車委員会の答申にも拘らず既製戦車の大量生産という方針が堅持される。参謀本部要求の変更がなぜこうまで反映されないのかといえば、既製品の急速大量生産を主張しているのがチャーチル本人だったから。

2014-12-02 05:57:03
Bunzo @Kominebunzo

1941年1月の第二次戦車委員会のセンスは悪くない。この時期に6ポンド砲搭載の巡航戦車を準備できていれば「Death by Design」なんて本は書かれなかったかもしれないし、英陸軍参謀本部は先見の明を賞賛されたかもしれない。けれども大量受注をひっくり返される製造側は堪らない。

2014-12-02 06:05:53
Bunzo @Kominebunzo

現在進行中の大量生産を妨げない、という制約で骨抜きになった第二次戦車委員会の後、1941年8月に始まった第三次戦車委員会でも6ポンド砲搭載と軽戦車の削減、中止が求められる。けれども軽戦車は止められたものの、製品完成までのリードタイムが長い巡航戦車、歩兵戦車はまだどうにもならない。

2014-12-02 06:26:33
Bunzo @Kominebunzo

「カヴェナンターのような駄作戦車の量産を誰も止めなかった」のなら単純に愚かな話で終る。けれども何度も止めよう、止めよう、と声が上がってそれでも止まらないのだから一旦大量発注された戦車という製品の厄介さが解る。1942年に6ポンド砲搭載車が控えめに現れたのが第三次委員会唯一の成果。

2014-12-02 06:33:51
Bunzo @Kominebunzo

値段があるなら上がったり下がったりするだろう、と思えばその通りで、長く生産されたマチルダやヴァレンタインの価格は量産が進むと40%程度も安くなる。安くはなるけれども兵器としての価値はそれ以上に暴落しているので世の中はまことに厳しい。 pic.twitter.com/fl4Qxtz4NV

2014-12-04 01:53:40
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Bunzo @Kominebunzo

あって無きが如し、と思われているレンドリースのシャーマン戦車にも値段はある。£10211という価格は数字だけで比べればクロムウェルよりちょいと高い。 pic.twitter.com/XznNXDmLI6

2014-12-04 01:59:37
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Bunzo @Kominebunzo

英国戦車に足りなかったものと言えばまず17ポンド砲が思い浮かぶ。けれど6ポンド砲にサボ付徹甲弾を組み合せるとソコソコに用が足りてしまう。では重装甲かと言えばご存知マチルダもチャーチルも重装甲戦車。これさえ早く手に入れば、もっとずっと素晴らしく何とかなったのは、そう、エンジンだ。

2014-12-04 16:28:35
Bunzo @Kominebunzo

新巡航戦車クロムウェルの雄姿・・によく似たセントー。違いはマーリンの戦車エンジン版であるミーティアを積んでいない点。リバティは戦車に積むと気筒は抜ける、馬力は足りないで、碌なことが無い。しかも組合せたクラッチがやくざという運の無さ。 pic.twitter.com/1vzYQFX0TP

2014-12-04 16:38:28
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Bunzo @Kominebunzo

マーリンの戦車用転換は1941年にはクルセーダーで試験されていて「あれが来れば大概の問題は解決」という英戦車開発にとって「年末ジャンボ」のような存在。装甲も厚くできれば重武装もOK、何より速くなる上、言いたくないが陸式より品質がいい。 pic.twitter.com/EfXs2zSnZq

2014-12-04 16:45:08
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Bunzo @Kominebunzo

戦車用のエンジンとしてマーリンを眺めると実はあんまりよろしくない。製造に手間が掛かり工数がシャーマンのフォードV8の2倍。切削加工が多いので金も手間も掛かる。大きな違いは主力航空エンジンとして改善に次ぐ改善を繰返して原型とは別物になる位に改設計されていたことが重要。壊れないのだ。

2014-12-04 16:56:40
Bunzo @Kominebunzo

1941年春に搭載実験を済ませているマーリンはその気になれば1942年初めには戦車に積めた。けれども英国戦車にとって世間の風は限り無く冷たい。1942年と言えば独本土爆撃用に4発重爆が最優先で量産されていたのだから航空省が許さない。 pic.twitter.com/LQ0sI9o7Ku

2014-12-04 17:07:01
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Bunzo @Kominebunzo

マーリンを4発も使うランカスターを1機造ればクロムウェル1個小隊がセントーになってしまう。けれど戦車なんぞを改良するより戦車工場を爆撃できるランカスターを優先するのが戦争の理屈というもの。RR社が戦車用に割けるとしたマーリンは1942年中にたったの500基。陸軍要求は3000基。

2014-12-04 17:13:08
Bunzo @Kominebunzo

3000基のマーリン転用は当然のように反故になり、RR社が「これ位なら」と差し出した転用可能分500基も守られない。どれ位守られないかというと、3000基の約束だった処に1942年中に引き渡されたRR製戦車用マーリンの供給数はたったの37基。これじゃリバティを止められない。

2014-12-04 17:16:00
Bunzo @Kominebunzo

マーリンがちっともやって来ないのは誰の目にも明らかだったのでリバティを増産する決定が下る。1943年から仕込まれた大量のリバティエンジンはそれから数か月後に完成し始めて、この仕掛品と部品、材料その他が今度はミーティアの生産を遅らせるのだけれど、その前にまだひと波乱あるのが英国だ。

2014-12-04 17:21:23
Bunzo @Kominebunzo

困った時には米国。1942年末に渡米した戦車エンジン視察団が目を付けたのがフォード製のV8エンジン。前の大戦のように米国エンジンに頼ろうという発想なのだけれども、同エンジンはM4A3のエンジンに指定されたばかり。そもそも手に入るのか、どうなんだ、と揉めつつV8支持派が生まれる。

2014-12-04 17:23:54
Bunzo @Kominebunzo

生産性はV8が優る。いやミーティアより100馬力足りないのは拙い。モーリスでのミーティアライセンス生産は止めてフォードV8をライセンス生産すべきだ。いや戦車は自国製エンジンで賄うべきだ。とV8支持派とミーティア擁護派の論争は続き、時間を無駄にしつつ「ミーティア待ち」が結論になる。

2014-12-04 17:40:28
Bunzo @Kominebunzo

RRがミーティア用のマーリンを供給しないので、陸軍は独自にモーリスとローバーにライセンス生産を指示する。陸軍管理の工場で造ればあれこれ言われずに欲しいだけ手に入るという考え方だけれども、モーリス製ミーティアが完成し始めたのは1944年4月、ローバー製は5月から。間に合うのか。

2014-12-04 17:44:58