- tenndouaruku
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少女と母親は互いの事を話し合いました。 「…まさか、本当に女神様がいらっしゃったなんて…」 「あたしは精霊…それも見習いなんだけどね。でもビックリ!キミたちあたしの子孫なんだ!あたしは早くに死んじゃったから弟のかな?だから声も聞こえて姿も見えてるのかも…!?」 #少女はかく語りき
2014-12-25 03:25:36少女は内心、とても嬉しかったのです。久しぶりに人と…それも自分の子孫と話すことができたから。 「ねえ、もっと近くでその子たち見ていいかな?」「ええ、もちろんですよ」 改めて、少女は双子の顔を見つめました。瓜二つな顔のただひとつの違いは、キラキラと輝く瞳の色。 #少女はかく語りき
2014-12-25 03:30:38アメジストの瞳は少女の顔を見つめ、その小さな手を伸ばしました。 一方、ブラウンの瞳は少女を何度か見た後に、母親に向けて甘えた声を出しました。 「そういえばこの子たち、名前は?」 「二人とも星の名前からいただいたんですよ。兄のこの子がカストゥール、弟は――」 #少女はかく語りき
2014-12-25 03:35:50少しの、幸せな時間の後。少女は時計を見て驚きました。 「そろそろ行かないと!こっそり抜け出したから、女神さまにバレたら怒られちゃう~…」 「あら…残念です」 「大丈夫大丈夫、また会いに来るから!バレないようにだから、数年後になるかもだけど」 「…そう、ですか」 #少女はかく語りき
2014-12-25 03:40:54「それじゃ、またね!キミたちもバイバイッ♪」 「…あのっ!」 駆けだそうとした少女を、母親の声が呼び止めました。 「…もしよければ、これからもこの子達のことを、見守ってくれませんか?」 #少女はかく語りき
2014-12-25 03:46:01「…?うん、もちろんだよっ!だってあたしの家族だもん♪これからも、ずっとずっと見守ってるからっ!」 そう声をかけると、母親は優しく、でも、どこか寂しそうにほほえみました。 #少女はかく語りき
2014-12-25 03:50:05トタトタと響く、おそらくここにいる三人しか聞こえない足音が遠ざかるのを聞きながら、母親は双子の頭を交互に、何度も、何度も、優しくなでました。 「お母さんが亡くなっても、あなた達はふたりきりじゃないからね…」 二粒の雫が、双子のほほを濡らしました。 #少女はかく語りき
2014-12-25 03:55:10夢のカケラ・ひとつめ
今日はにいさんと森にあそびにいきました。森のなかにはいろいろなどうぶつがいて、ながめていているだけでもたのしいです。つい、むちゅうになりすぎて、ころんで足をうってしまったけれど、にいさんが「だいじょうぶか?」とぼくの足をなでてくれました。あったかくて、なみだもすぐおさまりました。
2015-03-28 03:22:57ぼくには、にいさんいがいにかぞくがいないけれど、にいさんはとってもつよくてやさしいから、さみしくありません。村の人たちもやさしいけれど…でも、たまにつめたくかんじます。村長さんは、とくに。 ぼくのかんがえすぎなのかな…?
2015-03-28 03:23:52そんなことをかんがえていると、にいさんがこちらをじっとみていました。にいさんとぼくは、かおがよくにています。けれど、目の色だけちがいます。にいさんの目はきれいなむらさき色で、なんだかとくべつなきがします。
2015-03-28 03:25:03明日もあの森にあそびにいこうとにいさんと“やくそく”しました。このまえみかけたキツネさん、明日はあえるといいなとにいさんにいうと、にいさんも「おれもあいたい!」といいました。ぼくたち、かおがそっくりだけど、かんがえてることもおなじだとふたりでわらいました。
2015-03-28 03:26:22とつぜん、にいさんの「はなせ!」という声がきこえて、おどろいておきました。 みあげると、村の人がにいさんをかかえて、どこかにつれていこうとしていました。ぼくがにいさんにかけよろうとするのを、べつの大人の人がとめました。「よせ!そいつは魔物の子だ!」 まものって、なに?
2015-03-28 03:29:14なにがおきたかよくわからないまま、ぼくは村長さんのへやにつれていかれました。村長さんはいいました。おまえはこの村の“きゅうせいしゅ”にえらばれたのだと。それはとてもこうえいなことだ、ちからを、ちえを、おおくつけて村につくせといわれました。
2015-03-28 03:30:58にいさんは?とたずねると村長さんは、むっとしたかおでこたえました。「あいつは魔物の子だ。あの瞳はとても人のものと思えん。お前を貶める為に同じ腹から出てきたのだろうが…ともかくあいつのことは忘れろ。おまえに兄など最初からいなかったのだ。」
2015-03-28 03:33:45そんなことできない!にいさんにあわせて!と、ぼくはなきながらおおごえでいいました。すると村長さんといつもいっしょいる大人の人が ぼくのほほをたたきました。なんどもなんどもたたきました。とてもいたいです。
2015-03-28 03:34:48あたまがぼうっとしていたので、まわりのこえもぼうっとしていました。「まだ子供ですよ…さすがにかわいそうです」「本当にこいつで大丈夫なのか!?」「だいたいあの女が双子なぞ産むからこんなことに…!」 …大人たちはこわいよ。にいさん、たすけて。
2015-03-28 03:37:52ふるえていると村長さんのおくさんがやってきて、ぼくにいいました。にいさんとはしばらくあえないけれど、ぼくが村をすくえるようがんばるのなら、いつかあわせてあげると。村長さんは、ぼくをこわいかおでずっとみつめています。「どうする?」 …にいさんにあえるなら、と、ぼくはうなずきました。
2015-03-28 03:39:21「あれは村はずれのあばら家にでも閉じ込めておけ」「生かしておいていいのですか?」「しかたあるまい」大人の人たちがなにかはなしています。たぶん、ぼくのことはきにしていません。しばらくぼうっとしていたら、女の人がぼくのうでをひっぱってへやのそとにつれていきました。
2015-03-28 03:41:08「救世主は2人もいらんのだ…。そういう筋書きではないからな。」 村長さんの声が、なぜだかはっきりきこえました。 にいさん。どこにいってしまったんだろう。ほんとうにまたいつかあえるのかな。ぼくが、がんばらないと…。 ひとりはとてもさみしいよ。
2015-03-28 03:43:51