忍殺深夜の真剣創作一本勝負 ＊ 大遅刻組 ＊ 【アイ･ソー･ザット・ウィー・ワー・ディセイブド】

テキストカラテ用yulou @glscat

ネコ耳型のウェアラブル端末は、重金属酸性雨も意に介さぬ。ネコめいたサイバネ尻尾と相まって、その外見は敬虔なNERDZめいている。だが、ネコネコカワイイのようなカラフルとは対極のモノトーンカラーだ。そのどちらも、彼女のビジネスを、戦闘を、おおいに支援する。 1

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ビジネス。そう、ビジネスだ。そのはずだった。なのに、何だ？目の前のこの……「どうした、ネコチャン。コワイのか？」余裕綽綽の声にグラスキャットは尻尾を歪める。（（（ああ、アンタの変身がコワイよ……）））眩しいほどの美貌に目を遣りながら、彼女は首を振った。 2

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【アイ・ソー・ザット・ウィー・ワー・ディセイブド】

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「アンタこそ。相棒と分断されたのに随分冷静じゃないか。さすがにこの数は厳しいんじゃない？」そう、目視で数えられぬ程いるのはモーターヤブだ。到底個人が集められるものではない。何かしらがバックについているか、あるいは横流しか。「ミスターダンディズムか？問題ない」「問題ない？」 3

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「探知重点」グラスが展開し、周囲をスキャンする。傍らに立つ美女にフォーカス。『ニンジャ存在確認な』「ワカル」グラスキャットは呻いた。『上空重点』「上ね」「ほう」アンブッシュも気付いてしまえば脅威ではない。「「イヤーッ！」」二人は同時に回避し、エントリーしたニンジャを見やった。 4

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「ドーモ、チップドカップです」若草を更に淡くしたカラーのニンジャ装束が、欠けたオチョコめいた大型のチャクラムを構えた。「ドーモ、ヴェイパーです」深いブラウンのニンジャ装束は赤く発光するカタナを抜いた。「まんまと騙されおったな。我々の仕事の邪魔をするフリーランスどもよ」 5

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「お前達のカラテが足りんだけさ」ヴェイパーの言葉を、プラチナブロンドの美女はせせら笑う。「ドーモ、フェイタルです」「ドーモ、グラスキャットです」続けてアイサツしながら周囲のモーターヤブに目をやる。改善、再び改善も混ざっている。「女ニンジャ二人。こやつらだけで十分だ」 6

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視覚情報を頼りにしていないマシンに、グラスキャットのジツは効かぬ。「よくもまあこんな型落ちを集めたもんだね。ドクロもなしだ」グラスキャットが鼻で笑う！「「ドーモ、モーターヤブです。今なら投降を受け付けています。ドーモ」」最前列のモーターヤブがジャンプし、進み出る。振動。 7

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「イヤーッ！」グラスキャットが仕掛ける！不安定な脚部をネコめいた柔軟な回し蹴りが捉え、鈍重な巨体を引き倒した！「「改善！」」モーターヤブ改善がサスマタを構え突進！「イヤーッ！」「ピガガーッ！」「イヤーッ！」「ピガガーッ！」フェイタルの的確な一撃が脚部を破壊！ 8

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フェイタルは人間形態でも実際強いと記録にある！「しかし元気なネコチャンだ」「グラスキャットだって言ってるじゃないか！」モーターヤブの跳躍！振動！「投降を受け付けています！」「じゃあ投降するよ」「投降を受け付けました！」BRATATATATA！ 9

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「最悪の仕様！イヤーッ！」「ピガガーッ！」「イヤーッ！」「ピガーッ！」『ニンジャ生体反応消失な！』「エッ？」グラスキャットは面食らった。レーダーを確認する！敵ニンジャのどちらかの反応が失せている！「改善！」「ンアーッ！」サスマタに薙ぎ払われる！ 10

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グラスキャットは吹き飛ばされ、別のヤブの側面に激突！「ンアーッ！」「ピガーッ！」苦心して身を起こす。『ニンジャ生体反応消失な！』「エッ？」グラスキャットは面食らった。レーダーを確認する！敵ニンジャの残りの反応が失せている！「改善！」「ンアーッ！」サスマタに薙ぎ払われる！ 11

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グラスキャットは吹き飛ばされ、別のヤブの側面に激突！「ンアーッ！」「ピガーッ！」苦心して身を起こす。『ニンジャ存在確認な』「……ワカル」「いつもならクライアントを調べ切れん此方側の責任と言う所だが」シュボ、と着火音が鳴る。「今回ばかりは"これ"が目的でな」紫煙。 12

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「ブラックヘイズ＝サン、さっきのニンジャ、もしかしてあんたが」「奴等か？今頃サンズ・リバーでバカンスしてる頃だ」「アノヨへの運び屋か。無茶をするな」グラスキャットは二人を交互に見やり、首を振った。「ワザマエ、ね」「埒が開かんな」ブラックヘイズは吸っていた葉巻を眺め、放った。 13

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モーターヤブが迫る！「この葉巻は爆弾だ。……メカに言っても分からんか」BOOOOM！煙幕だ！その煙から、モノトーンのネコが飛び出す！「私達が行くのは向こうだけどね。見えるのを恨みな」その瞳が、体が発光する！「「「ピガガーッ！！」」」 14

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「標的消失な！」「ピガガーッ！」「ピガッ」モーターヤブ軍団が混乱する！「おまけだ！」勝ち誇るグラスキャットの横を、傭兵二人が駆け抜けてゆく。「やるじゃないか、ネコチャン」「覚えてくれってば！」棒立ちになったモーターヤブの脚部を消し飛ばし、走る！俄かに逆方向に走り出す軍団！ 15

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「標的確認！」「モーターヤブは賢く強い！」「改善！」あっと言う間に走り去るモーターヤブの軍勢を見送りながら、「やってられんね。全く割に合わん」ブラックヘイズは、改めて葉巻を取り出しながら呟いた。 16

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暫しの後。戻った事務所にクライアントの姿はなかった。当然だ、とフェイタルが鼻で笑った。「あのニンジャどもがクライアントだったからだ、哀れなネコチャン」「哀れ！！」金庫に仕舞われた報酬を山分けし、二人は去った。 17

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グラスキャットは二階に上がり、半ば放心しながら主のいなくなった寝床に座った。嗅ぎ慣れない匂いに眉を寄せ、尻尾を大きく揺らす。マタタビ・タブレットを齧る。遥かに良い。遠くでサイレンの音がする。部屋を漁る。いくつかの武器とトロ粉末、素子が大量に出てきた。 18

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冷蔵庫にはスシと、それぞれ「ヴェイパーな」「チップドカップな」と書かれた包みがあった。中身は甘味だ。二人は肉親だったのだろうか。……グラスキャットは感傷的になった。今日はここを借りるとしよう。ショーユもある。完璧だ。ごろりと転がり、慣れぬ天井を見つめる。 19

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「あの二人、実は最初からこいつらを潰すつもりだったんだ。なんとなく分かってたさ。私は巻き込まれただけだ……」グラスキャットは呻いた。「スゴイ・バカ」 20

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【アイ・ソー・ザット・ウィー・ワー・ディセイブド】終わり