即興童話・赤と青の双子のお話

深夜に即興で書いたお話です。
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さささ @sasasa3397

あるところに、双子の女の子が住んでいました。名前はリザとユージー。二人は、背の高さも体重も同じ、顔もそっくりで、いつも同じところで笑い、ただ、髪の長さだけが違っていました。リザは背中まである長い髪。ユージーはばっさりと短く切った髪をしていました。

2015-04-02 02:11:01
さささ @sasasa3397

二人は家の、赤い部屋と青い部屋でそれぞれ暮らしていました。赤い部屋のタンスには、赤やピンクのお洋服が、青い部屋のタンスには、青や水色の服がたくさん詰め込まれていました。二人は別々の部屋で寝て起きて、別々のタンスの中の服を着て毎日外に出かけていました。

2015-04-02 02:13:06
さささ @sasasa3397

赤と青の部屋を用意したのは、二人のお父さんとお母さんです。両親は、二人があまりにそっくりなので、混ざってどちらがどちらなのか、自分でもわからなくなってしまわないように、とても気を配っておりました。リザが帽子をかぶったり、ユージーが髪を伸ばすことは固く禁じられていました。

2015-04-02 02:15:19
さささ @sasasa3397

二人は、毎日連れ立って学校に行きます。両親のおかげで、リザとユージー、どちらがどちらか間違えられるようなことは全くありませんでした。リザは休み時間はおとなしく本を読んでいましたし、ユージーは元気に外で遊んでいたので、そのおかげもあるのでしょうね。

2015-04-02 02:17:41
さささ @sasasa3397

でもある日、リザはふと思いました。私もユージーみたいに、木登りとかしてみたいなあ。こんなピンクのかわいらしい服でそんなことやったら、笑われるかな? ユージーもふと思いました。リザの読んでいるファッションの本はちょっと面白そう。こんな青の男の子みたいな服の私が読むのは、変かしら?

2015-04-02 02:20:53
さささ @sasasa3397

リザは思いました。長い髪の毛は時々邪魔だなあ。もっと短ければ風が吹いてもそよぐくらいで素敵なのに。ユージーも思いました。長い髪の毛は素敵だなあ。いろんなアレンジができて、きっと楽しいでしょうに。二人は一緒にため息をつきました。同じ表情を、同じ顔に浮かべて。

2015-04-02 02:24:13
さささ @sasasa3397

リザとユージーは顔を見合わせます。自分の持っていないものを持っている双子の姉妹。別々の部屋で寝ていても、考えていることはよくわかりました。「私、あなたになりたいわ」二人は手を繋いで学校から帰る間に、いろいろな話をしました。髪のこと、服のこと、好きなもののこと。

2015-04-02 02:28:00
さささ @sasasa3397

家に着くと、リザは赤の部屋へ、ユージーは青の部屋へ、それぞれカバンを置くと、二人は青の部屋へ集まりました。リザが持ってきたのはハサミ。リザは、思い切って髪の毛をじょきり、じょきりと自分で切り出したのです。ユージーが取り出したのはウィッグ。色も長さも、リザのものと同じくらい。

2015-04-02 02:31:03
さささ @sasasa3397

二人はひそひそと話をしながら、準備を整えました。リザはピンクのワンピースを、ユージーは青のジーンズを、それぞれ脱いで逆のものを着たのです。あとはユージーがウィッグをかぶれば、さあ、これでもうどちらが本当はどちらなのかわかりません。双子はにっこりと笑いました。

2015-04-02 02:33:23
さささ @sasasa3397

その日の夕飯は、最高にどきどきする一幕となりました。お父さんも、お母さんも、ウィッグをかぶったユージーをリザと呼び、髪の毛を切ったリザをユージーと呼びました。二人は内心で大喜びをしながら食べ終え、お皿を片付け、そして、それぞれの部屋へと戻りました。

2015-04-02 02:35:35
さささ @sasasa3397

それから。赤の部屋に、ユージーのふりをしたリザが、そうっと訪ねてきました。「起きてた?」「あんなことがあって、眠れるはずがある?」二人はひそひそ話を交わします。「あなたになりたい」はほぼ叶ったのです。少なくともしばらくの間は、両親は入れ替わりに気づかないでしょう。

2015-04-02 02:37:58
さささ @sasasa3397

双子には、もうひとつだけ、やりたいことがありました。それは、同じベッドに入って、二人でぐっすり眠り、同じ夢を見ることでした。今まではお母さんに禁止されていましたが、髪まで切ったのです。もう怖いものなどありません。二人はベッドに潜り込み、くすくすと笑いました。

2015-04-02 02:40:04
さささ @sasasa3397

二人は顔を見合わせ、同じタイミングでくすくすと笑いだしました。どちらがどちらでもいいだなんて、なんて素敵なことでしょう! 「今日は私がリザね」片方がウィッグをかぶります。「それなら私はユージー」もう片方は洗面所に寝癖を直しに行きました。

2015-04-02 02:46:02
さささ @sasasa3397

朝の光が、カーテン越しに差し込みます。鳥の鳴き声が聞こえます。双子は、あくびをしてベッドから起き上がりました。するとどうでしょう。どちらがリザで、どちらがユージーだったか、二人はすっかりわからなくなってしまっていたのです。お母さんの心配通りに。

2015-04-02 02:43:51
さささ @sasasa3397

その日、リザとユージーは望み通りに同じ夢を見ました。二人で手を繋いで、草原を、森を、砂漠を、あちこちをどこまでもどこまでも一緒に歩いていく夢でした。二人の手は固く結びすぎて、溶けてくっついてしまっていましたが、そんなことは気になりませんでした。

2015-04-02 02:42:17
さささ @sasasa3397

二人は、それからしばらく、二つの名前を代わる代わる使っては楽しみました。まだ飽きていないのであれば、今も物陰でこっそりウィッグを受け渡ししている双子を見つけることができるかもしれません。でも、どうか二人のお父さんとお母さんには言わないであげてくださいね。これは二人の秘密ですから。

2015-04-02 02:50:36