2015/4/6 しおいちゃん掌編まとめ
- Kinoko3416
- 842
- 0
- 0
- 0
そしてぼくはきみを口に含む。暖かく、どこか乾いてさらさらとした、そう、まるであの夏の日差しに照らされて白く輝いていた砂浜のようで
2015-04-06 19:29:44「かえして。かえして。かえして。」 しがみつくあの子の声で、目が覚める。毎朝。毎朝。 ぼくは薬に頼るようになった。白い錠剤はあっという間に増えていった。
2015-04-06 19:36:51きみの骨のように、真っ白な楕円が瓶に詰まって、それが日に日に減って、増えて、減って、増えて。 ぼくは小さな骨を手のひらにとって飲み下す。毎日、毎日。 すっかりぼくはきみに置き換わってしまったかもしれない。ぼくの腕に、足に、背中に、肩に、きみの小さな楕円が、ぎっしり、みっしり。
2015-04-06 19:41:32きみが笑う声が聞こえる。きみが泣く声が聞こえる。 あの夏の日から聞こえる?ぼくの頭の中から聞こえる。 頭蓋の小さな水槽の中で、あの夏がぐるぐると廻って叫び声を上げる。 ああ、しおい、しおい、ぼくを、助けてくれ、見棄ててくれ、殺してくれ、生かしてくれ。
2015-04-06 19:43:48巣立ちゆくきみへ Feat laurassuoh
原題「夢を見ていました」laurassuoh
・・・・・・・・
・・・・
・・
たとえ目が見えなくとも雪で軋む家の柱の無言の悲鳴、夜にしんしんと降る雪の歌声、パチパチと爆ぜる温かな囲炉裏の火、そう言った人生のすべてを何も失わないのと同じように、僕はしおいと二人でこの家に生きているんだ。
2015-04-06 18:02:11「静かだね」 「そうだね」 「あ、そうだ、明日まーさん来るって」 「そうなの?じゃあ明日は吹雪かないといいなぁ。また南の海の話聞きたいな」 「うん、そうだね」
2015-04-06 18:06:14しおいは二階の窓から雪の世界に飛び出していく。僕は一階の囲炉裏の前にジッと座って君の帰りを待つ。帰ってこないかもしれない、なんてこれっぽっちも思わない。でも、君が新しい世界を見つけたというのなら、どうか帰ってこないでおくれ。 「ただいま」 君の声に僕はまた安堵と後悔を胸にためる。
2015-04-06 18:05:05目が見えない僕なんて雪の中に閉じ込めて、目が見えるしおいは未来へ旅立ってほしいと思いながら、君のいない孤独に耐えられそうにない僕は弱虫ですか
2015-04-06 18:06:05きみはいつかぼくの元を旅立ち、広い世界を知る。それはぼくにとってもきみにとっても耐え難い苦しみで、とてもつらく寒い孤独に身を預けることになるだろう。それでも、きみという青い鳥にとって、この小さなかごの中の世界で、ぼくという鎖に繋がれていることは決して真の幸せではないのだろう。
2015-04-06 18:08:56ああ、しおい。ぼくの愛しい愛しい小さな青い鳥よ。どうかこの鳥かごから大きな空へ飛び立っておくれ。その幸せの囀りを澄み渡る大空へと響かせておくれ。そして、こんどはぼくではなく、きみを幸せにしてくれる誰かととこしえに壊れぬ堅い鎖で、つよく、つよく……
2015-04-06 18:20:14