「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #6

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
第1巻「ネオサイタマ炎上」より 「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」#6
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掛け軸の裏に隠されたLAN端子に自らのバイオLAN端子をケーブル直結したナンシー・リーは、電脳IRC空間内へと精神を飛翔させる。このセキュリティ・プログラムに用いられた関数名などをもとに構築されたコトダマ・イメージは、先程のレーザートラップと同じく……不吉な日本漁村であった。
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禁酒法時代の婦人服と帽子に身を包んだナンシーは、デリンジャーを胸に挿しながら、再び古式ゆかしい夕暮れの日本漁村に現れ、高いトリイの上に佇んでいた。遥か上空には淡い月と、得体の知れぬ金色の構造物が浮かんでいる。何もかも先程と同じだ。プログラマが同じなのだろう。手早く解除できそうだ。
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ジンジャ・カテドラルの鐘が鳴ると、海辺に半漁人めいた村人が姿を現し上陸を開始する。いわゆるカッパだ。砂浜には、ブードゥーめいたイカが吊るされた邪悪な大コケシが何本も立ち並ぶ。ナンシーは何事か呟きながら、トリイで鉄棒選手のように大回転を決め、斜め下にある市役所のカワラ屋根を破った。
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市役所の資料室に突入したナンシーは、先程と同じく、日記帳を抱えた学生を探す。いやな波長のデジャヴを感じ、ニューロンがチリチリする。奥の暗がりに人影が見えた。先程と流れが違う。関数名が違うのか? ナンシーが不審に思いながらも懐中灯を捻ると……ナムサン! そこには何とニンジャの姿が!
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「ドーモ、ナンシー=サン」黒尽くめのニンジャ装束、頭から生えたゴーゴンのごときLANケーブルの束、円環状のサイバーサングラス、それはまさにソウカイヤのネットワークセキュリティ担当ニンジャ、ダイダロスであった!「降伏しなさい。そして、私と一緒に電脳IRC空間でネンゴロしましょう」
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「TAKE THIS!」ナンシーは一瞬の躊躇もなく、ダイダロスにトビゲリを喰らわせる。「グワーッ!」ダイダロスは市役所のガラス窓を突き破って落下し、そのまま無数の言葉と数字になって消滅した。LAN直結者であるナンシーのKICKコマンドは、0コンマ1秒以下の反応速度を誇るのだ。
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(((何故、ダイダロスがここにいるの? ヨロシサンのセキュリティネットに侵入を?)))ダイダロスを蹴り出し終えてから、ナンシーは自分の今の立場がかなり危険であることを察した。LAN接続を解除すればダイダロスからは逃げられるが、それでは回廊の物理ロックをいつまでも突破できないのだ。
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ナンシーは、回廊の物理ロック解除パスワードが書かれた日記帳を探した。資料室中には、カビの生えた分厚い書物がいくつも書棚に並び、丸いチャブにはヤカンやトックリが無数に置かれている。だが、日記帳は見つからない。緊張感で胸元に玉のような汗が滲む。その時、4つあるドアが、一斉に開いた。
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「「「「ドーモ、ナンシー=サン」」」」ナムアミダブツ! 4つのドアから4人のダイダロスが一斉に現れ、オジギしたのだ!「「「「諦めなさい。あなたのタイプ速度では私に勝てない。これ以上、自分の精神を痛めつけるのはやめなさい。私はあなたの精神ファイアウォールを破りたくないのだ」」」」
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ナンシーは自らのニューロンを酷使し、電脳IRC空間内を高速飛翔した。物理法則を無視したハチドリのような動きで、4人のダイダロスに痛烈なKICKコマンドを炸裂させる!「「「「グワーッ!」」」」ダイダロスは再び蹴り出され、消滅! ナンシーはキリモミ回転しながらふわりと着地する。
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だが、彼女の表情に余裕は無い。ダイダロスの言葉が真実であること、すなわち自分がまだまだ非力であることを、彼女は痛感していたからだ。敵は明らかに、自分より上手のハッカーである。さらに、ダイダロスがニンジャスレイヤーに対して行ったようなウィルス攻撃を仕掛けてこない点も不気味だった。
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「まるで、こちらが無抵抗になるのを待っているかのよう…」ナンシーはそう呟きながら、ふと、割れた資料室の窓から、夕暮れに染まる漁村の浜を見やった。そこでは、先程の電脳IRC空間ダイヴ時と同様に、何十体ものカッパが上陸を……いや、違う! それらは今、全てダイダロスに置き換わっていた!
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「ドーモ、ナンシー=サン」資料室のドアから、天井の落とし戸から、本棚の陰から、チャブの下から、ぞろぞろとダイダロスが出現してきた。恐るべき多重ログイン能力! ナンシーは必死にKICKをくり出すが、蹴りだされて消滅するダイダロスよりも、入室してくるダイダロスの人数のほうが上だった。
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「無益な抵抗は止めグワーッ!」発言したダイダロスが蹴り出され、すぐにまた新たなダイダロスが現れ発言を行う。「探していたのです、貴方のように感受性豊かなヤバイ級ハッカーグワーッ!」ナンシーのソバットで首を切断され、次のダイダロスが発言を引き継ぐ「不思議に思ったことは無いのですか?」
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電脳IRC空間内のナンシーは、資料室の中央にへたり込み、息を切らしていた。精神力が限界に近い。ザゼンドリンクの薬物の力が無ければ、これ以上のブーストは不可能だ。資料室内のダイダロスの人数はすでに50人近くに達し、全員が同じ発言を一斉にくり出してきていた。
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「コトダマ・イメージとは何なのか、考えたことはないのですか? 何故、誰にプログラムされたのでもないこのような電脳空間を、ヤバイ級ハッカーたちは共有し、同じ光景を、同じ物理法則を味わうことができるのか、不思議に思ったことはないのですか?」
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「文字情報からイメージを引き出しているだけよ」ナンシーは、マジックハンドめいた手を伸ばしてきたダイダロスの頭を、回し蹴りで刈り取る。激しく血を噴出させながら、サイバーニンジャの1体が消滅。「血が出るのは、最初に部屋を立てた私が、空間の物理法則を一般的なリアリティに定義したからよ」
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「では、常に上空に浮かぶ、あの黄金色の浮遊物体は何なのですか? 私はこれまで数々のヤバイ級ハッカーの精神ファイアウォールを破壊し、廃人にしてきました。その全員が、自らのコトダマ・イメージ空間の中に、黄金の浮遊物体を有していたのです」ダイダロスは抑揚のない機械音声のような声で語る。
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(((これは罠だわ。狡猾な詐術で、私の精神ファイアウォールをショウジ戸のように破ろうとしているのよ)))絶対に辿り着けない黄金の浮遊物体の事を言い当てられて一瞬動揺していたナンシーだったが、すぐにいつもの冷静さを取り戻す。奴の言葉に耳を貸してはならない。今はただKICKあるのみ!
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「諦めなさいナンシー=サン! イヤーッ!」ナンシーを取り囲む8人のダイダロスは、彼女の服を脱がせ精神的防御力を削るべく、マジックハンドめいた手を一斉に突き出した! 「イヤーッ!」その顔に不屈の表情を浮かべたナンシーは、その場で高く開脚ジャンプしてダイダロスの攻撃を回避! コワイ!
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「TAKE THIS!」ナンシーはさらに、空中で上半身を高速で捻り、開脚した両足をバズソーのように回転させ、迫ってきた8人のダイダロスの首を一瞬にして刈り取った! 噴水ショーの如き血飛沫! ゴウランガ! 現実空間においてはニンジャスレイヤーですらも行使困難な、殺人カラテ技である!
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「グワーッ!」8人のダイダロスは、クローンヤクザのように同時に倒れて消滅した。ナンシーは血みどろのタタミに回転しながら着地し、絶対抵抗の意志をみなぎらせた強い目で、迫り来るダイダロスたちを睨み付ける。 「生憎だけど、ドレスを剥こうとするような殿方とは、ランデブーしたくないわね」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「……では、しばらく気絶してもらいましょう。ニューロンが多少傷つくと思いますが……仕方ない」数十人のダイダロスは、ぞっとするほど無表情に言い放った。彼の円環サイバーサングラスに、「ナムアミダブツ」「LAN直結したい」と、相手の恐怖心を煽る言葉が赤いLEDドット文字で流れ始める!
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
かくして広さ50畳ほどの資料室を舞台に、常人を狂気へと誘うほどの壮絶な死闘が始まったのだ。ダイダロスはログイン人数を増し続け、ナンシーの服を破壊すべく高速タイプをくり出してくる。ナンシーは失禁寸前までニューロンを酷使し、次々と現れるダイダロスをKICKコマンドで殺戮していった。
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年12月23日
「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #1 http://togetter.com/li/78144 「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #7 http://togetter.com/li/81830
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