「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #2

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
第1巻「ネオサイタマ炎上」より 「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #2
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(これまでのあらすじ。アンタイ・ニンジャウイルス「タケウチ」に冒された、師匠ドラゴン・ゲンドーソー。特効薬を求め、ニンジャスレイヤーは自称ジャーナリストのナンシー・リーと、IRCサイバースペース内の茶室で秘密会議を行っていた。そこへ、ソウカイヤの刺客ダイダロスが侵入してきたのだ)
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「ドーモ、ダイダロスです。お久しぶりですねワームども。観念してください」彼は茶室の中央に座す2人を威圧的に指差した。 だがその一瞬後、ボンテージ・キモノ姿のナンシーが、正座の状態から物理法則を無視したトビゲリをくり出したのだ! 「グワーッ!」フスマの外へと蹴りだされるダイダロス!
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ナンシーはショウジ戸を閉め、敵の再ハッキングに備える。流石はLAN直結サイバネ手術を受けた彼女である。ダイダロスの姿を見たニンジャスレイヤーは反射的にOJIGIコマンドをタイプしかけたが、彼がOをタイプしている一瞬の間に、ナンシーはもうKICKコマンドを入力し終えてていたのだ。
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「この茶室は発見も侵入も不可能だったのでは?」フジキドが問う。 「敵は私より上手のハッカーだわ」とナンシー。露出した美しいハーフバストが緊張で汗ばむ。「サイバースペース内に絶対は無い。すべてのリアリティはハッカーによって書き換えられうる。どうやら会議に時間を費やしすぎたみたいね」
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「ドーモ」ナンシーが警戒していたのとは反対側のショウジ戸が開き、再び黒ニンジャ装束のダイダロスが姿を現した。「観念してください。ファイアウォールなど私の前ではショウジ戸も同然なのですグワーッ!」 再びナンシーのトビゲリ! だがナンシーの着地と同時に、別のショウジ戸がさらに開いた!
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「ドーモ」ダイダロスが姿を現し余裕のオジギを決める。「何度やっても無駄です。ファイアウォールなど私の前ではショウジ戸も同然なのですグワーッ!」 ナンシーをサポートするように、ニンジャスレイヤーのジャンプ・カラテキックが決まる! だが次の瞬間、全方位のショウジ戸が同時に開いたのだ!
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「「「「ドーモ、ダイダロスです」」」」東西南北から出現した4人のダイダロスは、再び胸の前で手を組み、全員同時に余裕のオジギを見せる。ナミアミダブツ! 果たしていかなるジツを使ったのか?  ナンシーは茶室の中央へ側転で移動しながら、絶望にも似た声を上げた。「……多重ログインだわ!」
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陰鬱な重金属酸性雨が、今宵もしとしととネオサイタマを濡らす。明滅するカンバンの下で、フード付きの黒い耐酸性レインコートを着た3人組が、薄汚いファミリーマンション「ロイヤルペガサス・ネオサイタマ」を見上げていた。うち一人は、その両手に無骨な無線LAN通信傍受デバイスを抱えている。
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別の一人は、IRCトランスミッター機能付きサイバーサングラスをかけ、ダイダロスからの遠隔指令を受けていた。3人は顔を見合わせて頷くと、電子ロックされた入口のドアをブーツで蹴破り、廊下でショウギをしていた老人たちを踏みつけながら、感情なきマシーンのごとくエレベーターへと向かった。
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3人組は指令通りエレベータに乗り込み、67階をプッシュ。動きを制限するレインコートを脱いだ。紫色の背広と、隠し持っていたアサルトライフルが露になる。クローンヤクザだ。ナムサン! ダイダロスはニンジャスレイヤーのIPアドレスを一瞬でスキャニングし、物理アドレスを割り出していたのだ!
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目的階に到着すると、3人組はアサルトライフルを構えて臨戦態勢をとりながら薄暗い廊下を歩き、ニンジャスレイヤーの潜伏先を探す。あまり治安の良いマンションではなさそうだ。バチバチとタングステン灯が明滅し、廊下に散らばったバリキドリンクや、注射針や、タッパーや、マグロの頭などを照らす。
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笑顔の親子が「職はありますか」「プロジェクトに参加したい」と吹き出しで訴える色褪せたポスターが打ち捨てられている。これを踏みながら廊下を歩くと、傍受デバイスが発するサイバーな緑色光が次第に強まっていった。そして3人のクローンヤクザは「ヤマダ」と表札に書かれたドアの前で立ち止まる。
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厚さ数ミリのドアの向こうでは、復讐の戦士ニンジャスレイヤーが湿ったタタミに正座し、UNIX画面の放つ暗い光と向き合っていた。彼は全神経をモニタと指先に集中させ、現れては消えるダイダロスに対して、深刻な顔でKICKコマンドを高速タイプし続けている。やはり電脳世界の戦いは不利なのだ。
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ニンジャスレイヤーは、すぐ近くに忍び寄るクローンヤクザの気配に気付く余裕すら無かった。彼の視線は、モニタ、キーボード、そして右手にある外付けファイアウォール装置群を交互に行き来する。無線LAN装置からUNIXの間には、スゴイテック製のファイアウォールが7台も直列接続されていた。
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パシン! というショウジ戸が破られるような独特の音を立て、5台目のファイアウォールが破壊される。ナムサン! 敵のハッキング能力は圧倒的だ。それまでの4台も、すでにダイダロスのハッキング攻撃によって突破され、焦げ臭い匂いと灰色の煙を吐き出していた。残るファイアウォールはわずか2台!
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ニンジャスレイヤーとナンシーは、茶室から脱出すべくコマンドをタイプし続けたが、すべて寸前で阻止されてしまう。恐らくチャットルーム内のリアリティが書き換えられているのだ。茶室内のダイダロスをすべて蹴り出さなければ、脱出は不可能。だが、茶室内のダイダロスはすでに13人目に達していた!
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パシン! 6台目のファイアウォールが突破された。ニンジャスレイヤーは鋼鉄メンポから荒い息を吐き出しながら、膝の上に乗せた強化カーボン製キーボードを高速タイプする。だが間に合わない! パシン! 7台目が突破される! 「ナンシー=サン、例の場所で落ち合うぞ! オタッシャデー!」
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フジキドが断末魔のごときメッセージをタイプし終えると同時に、UNIXモニタの光が中心に向かって収束。その1秒後、猛爆発を起こした。「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは地を這うワニの構えを取り、間一髪で火柱の直撃を回避。だが、同時に背後でドアが破壊され、クローンヤクザが突入してきた!
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「ザッケンナコラー!」三人のクローンヤクザは、背筋も凍るような恐ろしい叫び声とともにライフルの引き金を引いた。凄まじいマズルフラッシュが暗闇を切り裂く。もし、ここが冷凍マグロを吊るすコンテナだったら、一瞬にして大量のネギトロが出来上がっていただろう。それほど猛烈な一斉射撃だった。
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しばしの静寂。最後の薬きょうが廊下に落下し、カランカランと乾いた音を立てる。合成綿布フートンの成れの果てが、惨殺されたハトの羽のように部屋中を舞っていた。クローンヤクザたちはサイバーサングラスのスイッチを押し、視界を温度感知モードに切り替えてから、タタミ部屋へと踏み込む。
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3人はクローンならではの統一感のある動きで互いの背中を守りながら、ニンジャスレイヤーの潜伏先であったタタミ部屋を踏み荒らした。UNIXは完全に破壊されている。脱出できそうな窓は無い。通風用の網戸は小さすぎ、とても大人が通れるとは思えない。どこにも、人の気配は無い。仕留めたのか?
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少しずつ硝煙が晴れ始めた。「血痕だ」と、クローンヤクザの一人が言った。砂壁に何枚か額入りの写真が飾られており、その周囲だけ何故か壁に銃弾が命中した痕跡が無い。その代わり、いくらかの新鮮な血が、飛沫となってそれらの額にかかっていた。 「回収する」クローンヤクザの一人が写真に近づく。
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「何の写真だ?」と別のクローンヤクザ。 「家族の写真のようだ。若い夫婦と、子供が一人……」砂壁に接近したクリーンヤクザが、その写真の映像をサイバーサングラス内に捉えようとした時、黒い影が頭上から落下してきた。床には、粉々になったコンクリートの破片。天井に大穴が開けられていたのだ。
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年12月12日
「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #1 http://togetter.com/li/78144 「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #3 http://togetter.com/li/78154
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