デッド・バレット・アレステッド・ブッダ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その叫びを聞きつけた男たちがいた。男たちは銃弾でこれに応えた。BLAMBLAMBLAMBLAM!ゾンビーをヘッドショット殺!「くそったれめ!」「庶子!ブッダ!前後してください!」それは生き残りと合流すべく死に物狂いでコメ・エリアへ到達したススムとラッキー・ジェイクであった。 24

2015-04-05 01:53:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブンブンブンブブンブブンブーン、ブンブンブンブブンブブンブーン。『今日も、明日も、コケシ、コケシ……』心躍るようなベースBGMに合わせて、プログラムされた電子マイコ音声がエレベータ内に鳴り響く。 全身を返り血で染めた厳めしい四人のアウトローが、その中で弾丸の再装填を行う。 25

2015-04-07 15:48:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『恥知らずのブッダは俺のマンションの地下で日夜ニセ札を印刷していた!その音が俺の部屋に響いてきて俺は寝られない!』狂った犯人の店内放送が響く。動く死体、弾丸、そして逮捕されたブッダ。謎が謎を呼ぶ。生き残った4人のアウトローたちは大型業務用エレベータで49階へと向かっていた。 26

2015-04-07 15:55:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バチバチと非常ボンボリ灯が明滅する。老朽エレベータは悲鳴を上げるように滑車を軋ませ、緩慢な動きで縦穴を這い昇る。「おいしいお肉です」「はい」と書かれた食品ポスターが、先に待つ不吉な運命を暗示しているかのようだ。彼らは限られた時間で情報を整理し、作戦を立てねばならなかった。 27

2015-04-07 16:00:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「3億円は目前だぜ」ススムが言う。「けど問題は……ニンジャだ」ハッカーのクウェルト555が声を震わせる。「動く死体は科学で説明がつくはずだ。そういう映画を見たことがある。だがニンジャは無理だ。俺たち全員、確かにニンジャを見た。ニンジャが実在するとしたら、俺たちにはもう……」 28

2015-04-07 16:08:59
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「だがあのニンジャは、一斉射撃を浴びて逃げていった」ススムが言う。「サイバネアイでもパターン補足できないほどの速度で連続側転を決めながらだけどな」「俺たちの時もそうだった。ニンジャは俺たちを殺さなかった」クウェルト555がうなずく。「ゾンビーと戦うのを見物しているようだった」29

2015-04-07 16:16:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今のところは、かもな」ジェイクが言う。「この話をするたび、俺はサイコ野郎だと思われてきた。俺は以前にも何度かニンジャを見た。俺はカラテで戦ったことだってある」誰もが一瞬、狂人を見る目で彼を見た。だが真実の重みが、この不法滞在ガイジンの言葉にはあった。「あいつら、バケモノさ」30

2015-04-07 16:22:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャが何でそんな行動をとったかなんて、考えるだけムダだ。神秘的な存在なんだ。奴らの頭の中にあるのは、突然出てきて殺すこと、それだけだ。それも、なるべく相手をいたぶって殺すのが好きなんだ」ジェイクは説いた。だがスモトリが渋い顔を作った。「……本気でニンジャが実在すると?」31

2015-04-07 16:27:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ならあんた、本当にブッダが逮捕されたとでも?あのコーヒー豆袋を被せられた人質がブッダだと思ってんのか?」ジェイクが返す。ススムが顔をしかめた。ハッカーもスモトリの影でジェスチュアを作り、危険を知らせる。スモトリ以外の誰も、ブッダ逮捕を信じていない。だがその質問は、軽率だ。 32

2015-04-07 16:34:22
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スモトリは小さな目を見開いてジェイクを睨んだが、相手はガイジンなのでこらえた。そして理性的に言った。「ズダ袋を取り去るまではわからない。誰にも、それがブッダなのかどうか言い当てることはできない。もしブッダだったら、世界は取り返しのつかないことになる。お前はそれでいいのか?」 33

2015-04-07 16:41:38
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「シュレディンガーの猫か……!」クウェルト555が突然何かを悟った。「ネコ」「何だそれは?」誰も知らなかった。「旧世紀のコトワザだ。フタを開けてみるまで、ブッダかどうかわからない。つまり量子論的には……ブッダの可能性が常に50%存在する」「ゼンめいてるな」ジェイクが頷いた。 34

2015-04-07 16:45:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そういう事じゃねえんだ」スモトリが首を振った。「信心深さ……いや、善良な魂が試されているんだ。人間だれしも心の中にある善良な魂が。ひとつたしかな事がある。ブッダは何も悪くない。いい奴だ。それが卑怯な奴に掴まって、銃を突きつけられてる。黙って見てられるのか?そういう事なのさ」35

2015-04-07 16:53:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エレベータ内に閉鎖極限空間の狂気が満ちる。49階が近い。パーティーの心はバラバラだ。このままでは全員死ぬ。それを察し、ススムが言った。「議論は終わりだ。俺がリーダーになる」全員がそれに合意した。彼が最年長者すなわちセンパイだからだ。「ニンジャとゾンビーのことは、深く考えるな」36

2015-04-07 17:01:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ススムは力強く拳をにぎった。「いいか3億円だ、とにかく3億円のことだけ考えろ。邪魔する連中には銃弾叩き込んで殺す。そして生きて逃げる」「いいこというね」ジェイクが笑顔で煙草を吹かす。「シンプルなのは好きだよ。世界が明日滅ぼうと、3億円持ってたほうがいいに決まってる」 37

2015-04-07 17:09:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あんたはどうだ、セキトリ=サン。3億を奪うってことは、ブッダを助け出すってことだ」「俺は3億はいらない。ブッダのことだけ考えている。世界を救いたい」スモトリは脳内でデジ・ネンブツを繰り返し再生した。電子がゼンめいてキマっていく。「よし、そうしろ」ススムが笑顔で肩を叩いた。 38

2015-04-07 17:15:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

47階を通過。四人は臨戦態勢を取る。「ここから生きて逃げだすだけでもそうとう難しいだろう。その難易度を10とするなら、3億持って逃げ出すのはせいぜい11くらいだ。こんなたとえ話がある。俺たちゃブッダの…」ススムは言い直す。「いや、あるマンションにハック&スラッシュをしかけた」39

2015-04-07 17:19:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そしたらそこは偶然にもジーザスの家だった。預金通帳を見つけたところで、奴が帰ってきた。こいつはメチャクチャ強敵だ。そのまま逃げるのも、通帳持って逃げるのも、奴をファックしてから通帳持って逃げるのも、難易度は大体同じだ」ススムは散弾銃をコッキングした「なら、やろうじゃねえか」40

2015-04-07 17:29:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「聖徳太子よ、守りあれ」スモトリが祈る。『49階ドスエ』電子マイコ音声が鳴り、エレベータの銀色扉が開いた。配備されていたゾンビーの大群が、一斉に襲い掛かる。だが即席で結成された四人のハック&スラッシュは、それを切り裂く銃弾と刃と狂気の塊と化し、凄まじい勢いで飛び出したのだ。 41

2015-04-07 17:41:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【デッド・バレット・アレステッド・ブッダ】#2終わり #3へ続く

2015-04-07 17:43:04