さくら

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∞すみれ∞ @magic88word

1 桜が咲くと 心躍るようでいて 切なくて 苦しくて… でもやっぱり好き 香りに包まれて 花びらにふれたい… pic.twitter.com/K92xgQITuI

2015-04-01 23:49:28
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2 「今度の土日は休めるねん~ どっか行きたいとこあるかー?」 『んー…さくら、お花見に行きたい』 「おまえほんまに桜好っきゃなあ」 腕枕をはずして よいしょ、と身体を起こすと 覆いかぶさってくる

2015-04-01 23:49:50
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3 「なんか想い出でもあんの?桜に…」 私の頬を両手で挟んで じっと見つめる大きな目 『んーん…特にない…けど』 「けど?」 『高校のね桜がすごく好きだったの』

2015-04-01 23:50:04
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4 丘の上にある古い学校は 通学路も校庭も桜の木で囲まれていて 満開になるとうす桃色の雲に 包まれているようだった 学校帰りの坂道を下りると 文字どおり桜吹雪で 舞った花びらが髪や肩に落ちて それを取ってくれるのは…

2015-04-01 23:50:11
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5 「ん?なんか思い出したん?」 『…あ、ううん』 「やったらこっち見て」 ぷぅと頬をふくらませて おでこをくっつける 『んふ、すねしんご』 私から鼻先にチュッとしたら 唇を重ねて体重をかけてくる

2015-04-01 23:50:18
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6 信ちゃんの優しいキスを受けながら ぼんやり考える …どうしてこんなに 桜に惹かれるのかな 信ちゃんの言うように きっかけがありそうで なにも思い出せない きっと高校生活が充実してたせいだね 桜が名物だったあの学校 考えるのをやめて 逞しい胸に抱きついた…

2015-04-01 23:50:25
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7 お休みだって言ってたのに やっぱり朝ひとつ仕事が入ったと 信ちゃんとは現地で待ち合わせ 改札口で待っとけよ… そう言われたけど 小さな駅の中は お花見客でごった返してて 少しぐらいなら大丈夫だよね… 駅から出て人混みを逃れる

2015-04-03 00:12:40
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8 川沿いの遊歩道の桜並木が ピンクのわたがしみたいに つながっていて 思わず息を吸い込む 汗ばむくらいの暖かさに ストールを外したとき 強い風が吹いて飛ばされた 『あ…』 シフォンのストールは ふわりと浮いて遊歩道の方へ

2015-04-03 00:12:47
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9 あわてて階段を下りて後を追う 『あ…』 顔にかかった私のストールを手に 男の人が起きあがったところだった 「これ…きみのん?」 『ごめんなさい、風に飛ばされて…』 「大事なもん失くしてまうで」 柔らかい口調でそう言うと 首に巻いてくれた

2015-04-03 00:12:56
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10 『あ、ありがとうございます』 ん、って頷いてから ちょっといたずらっぽい顔になる 「きみのせいで目ぇ覚めてしもたから 責任とってや…?」 『え…?』 「ここ座って…桜みよ?」 芝生に敷いたシートを指さすと よっこいしょと座る

2015-04-03 00:13:05
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11 桜みよ…ってヘンな誘い文句… おかしいなこの人…でも ふざけてるわけではなさそう もう寝っ転がって空を見てる 「気持ちええなぁ…空は青いし 桜は満開やし…ほら、おいで」 今はじめて会った人なのに 不思議なほど自然に 私もシートに座ってた

2015-04-03 00:13:16
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12 「俺な、桜が好きやねん なんでかわからんねんけど…」 『私も…!なぜかわからないけど』 「名前…なんていうん?自分」 『…〇〇』 「ええ名前やな…俺はリュウ」 『リュウ…』 はじめて会った人の はじめて呼ぶ名前 …それなのに なんだかすごく懐かしい気がした

2015-04-03 00:13:25
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13 ポケットのスマホが震える …信ちゃんからだ 『私…行かないと』 「そうなん?」 身体を起こしたリュウの手が伸びて 私の髪に触れた 『あ…』 思わず目を閉じたら クスッと笑う声 「キス…される思た?…」 リュウの手に桜の花びら 私の髪についてたんだ

2015-04-03 00:13:39
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14 『そんなこと…』 「正解…」 花びらをつまんだ 私の手首を引き寄せて リュウの唇がかすかに触れた pic.twitter.com/TqM2ZQ3hsP

2015-04-03 00:14:05
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15 リュウの唇は重ならず そっと掠めて離れた あ… 懐かしい香り 胸がきゅっとなる リュウの瞳を見つめたら 悲しそうにちょっと笑った

2015-04-05 18:58:58
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16 「また鳴ってるで、それ」 また寝転んだリュウが 空を見たまま言った 「探してはんで、早よ行ったげ」 『でも…』 「また逢えるから…ほら」 促されて遊歩道を後にする

2015-04-05 18:59:06
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17 電話に出ると焦った信ちゃんの声 「おまえ今どこにおんねん!」 『ごめんなさい…』 「さっきから探してんねんで そこでじっとしとけよ」 川岸に降りた遊歩道にいたから 見えなかったんだ 居場所を伝えて振り向くと もうリュウの姿は見えなくなってた

2015-04-05 18:59:15
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18 「待たしてごめん!」 『ううん…桜が見えたら じっとできなくて…ごめんなさい』 「あーあ泣かんでええがな」 え…私泣いてた…? 思わず頬に触れると いつのまにか涙で濡れてる 「心配しただけや」 信ちゃんが両手の親指で 拭ってくれる

2015-04-05 18:59:22
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19 「ん、ほな行こか…あ、ついてる」 信ちゃんの手が伸びてくる 私のストールに一輪の桜 『あ…捨てないで…』 ハンカチにそっとはさんで バッグにしまった また逢える… リュウがそう言ったから

2015-04-05 18:59:31
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20 「どうしたん?」 『ん…?』 「今日はおとなしいな… いっぱい歩かしたから疲れたか?」 『ううん…お花見できて嬉しかった 綺麗だったね…桜』 信ちゃんと一緒にいるのに リュウの悲しげな瞳が離れない 胸につかえたような切なさも…

2015-04-05 18:59:46
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21 『今日は疲れてるのにありがと… 美味しくて食べ過ぎちゃった』 信ちゃんがわざわざ予約してくれてた イタリアンのお店は 大きな窓から ライトアップされた桜が見えた 「そんなんかまへん…また行こな」 信ちゃんの手に力がこもる

2015-04-07 02:02:50
∞すみれ∞ @magic88word

22 平日よりは空いている電車の ドアにもたれて ワインで少し酔ったのかな 後ろに立った信ちゃんが 腕を回して私を抱くように包む なんとなく信ちゃんの 顔が見れなくて 向かい合えなかったのは私だけど

2015-04-07 02:03:12
∞すみれ∞ @magic88word

23 『じゃ降りるね』 「ほんまに送らんでええか?」 『うん大丈夫、ありがとう』 ホームに降りて振り返る ドアが閉まる寸前に 信ちゃんが飛び降りた あっ…! 次の瞬間には抱きしめられてた 『もう、危ないよ…』 「ごめ…ん」

2015-04-07 02:03:20
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24 『信ちゃん…?』 「やっぱり一緒におりたい…」 顔をうずめたまま小さな声で言うから よく聞こえない 『信ちゃん…』 顔を上げた信ちゃんの唇が近づく どこからか 桜の花びらが舞い落ちて… リュウの顔が重なって目を閉じた

2015-04-07 02:03:27
∞すみれ∞ @magic88word

25 『よかったの? 帰ってお仕事しなくても…』 「ええねん… なんかおまえ元気なかったし… いやちゃうな…俺が淋しかったから」 ソファで私に寄りかかる信ちゃん 『おふろ酔いがさめてからにする?』 「酔うてへんで…甘えてるだけ」 『ふふ、どしたの?今日は』

2015-04-09 19:17:22