青葉島鎮守府 第九話

砲弾は弾かれた 前話(http://togetter.com/li/806803
0
跡地 @kkkkkkmnb

【青葉島鎮守府 第九話】

2015-04-17 22:21:42
跡地 @kkkkkkmnb

砲弾が、ダズル迷彩によって巧みに隠された主砲から放たれる砲弾が、彼女たちの乗る水上機関車に迫った! 山なりの弧を描きながら、列車に乗っている彼女たちめがけてみるみる距離を詰めた!

2015-04-17 22:26:53
跡地 @kkkkkkmnb

だが、夕張の操舵技術の方が上だった。戦闘開始以来、砲弾は一度たりともジグザグと複雑に進路を変えて走る汽車を捉えられていない。どれだけ近くで水柱が立とうとも、夕張はドンと機関室の真ん中に仁王立ちしている。

2015-04-17 22:46:22
跡地 @kkkkkkmnb

そしてその砲弾も、難なく避けることができた。ドッパーン!! 走る汽車の真横で凄まじい音と共に巨大な水柱が上がった。しかし夕張はそんなことには目もくれずに、思いっきり汽笛を鳴らした。再び、汽車が装甲列車との距離を詰め始めた合図だ。今度こそあの装甲を撃ち抜いてもらわなければならない。

2015-04-17 23:00:23
跡地 @kkkkkkmnb

その敵弾が降ってきたのは、こちらの列車砲発射まで丁度6秒だった。足柄はもう既に装填を終えて照準を定めていた。川内は偵察機との通信を繋げようとしていた。夕張も少し敵との距離の方に気を取られていたとはいえども、回避行動に手抜かりはなかった。敵弾はちゃんと走る汽車の真横に落ちた。

2015-04-17 23:20:47
跡地 @kkkkkkmnb

そして、その砲弾は爆ぜた。汽車の真横で、海面と接触する前に空中で自ら爆発した。しかし、その爆風は汽車には届かない。だが破片が、さっきまで爆薬を覆っていた殻が、爆発に耐え切れずに思いっきり四方にはじけ飛んだ。そしてその加害半径の中には、水上機関車が入っている。

2015-04-17 23:30:30
跡地 @kkkkkkmnb

熱されて真っ赤になった無数の破片が、水上機関車にめがけて降り注いだ! 客車の壁や窓を突き破って艦娘達に襲い掛かり、機関車のボイラーを覆う壁にも容赦なく突き刺さった! 割れた窓から潮風が吹き込んできて、ズタズタになったカーテンが激しくたなびいている。

2015-04-17 23:51:09
跡地 @kkkkkkmnb

先ほどまで、こちらの攻撃が効かなくて重い空気が立ち込めていた客車内が一気に騒然とした。そして、六秒が立った。後部の列車砲が爆音とともに徹甲弾を放ったが、いくら探しても望遠鏡をのぞく綾波と叢雲には砲弾による水柱も、装甲の穴の開いた箇所等の変化を見つけることは出来ない。

2015-04-18 00:04:23
跡地 @kkkkkkmnb

「くそう! 各部被害報告をせよ!」  綾波が悲痛そうな顔でこちらを見てくるが、構ってやれる余裕はない。川内の怒鳴り声が車内電話を通じて各所に響き渡る。各部から、報告が次々と挙がってくるが、特に異常は出ていないようだ。

2015-04-18 00:11:22
跡地 @kkkkkkmnb

「大井ってぃ、計器類は無事?」  車内電話に向かって川内が大声を出すと、舌打ちと共に大井がぶっきらぼうな声で問題なしと返事をした。 「さすが私の右腕大井ってぃ、愛しているわ」 「私もよ団長殿、だから先に地獄で待ってて頂戴」  川内はニヤリと笑うと、今度は足柄につないだ。

2015-04-18 00:15:30
跡地 @kkkkkkmnb

「異常はないわ……でも……」  足柄の声からは明らかに勢いが失われていた。このまま撃ち続けてもあの装甲列車を沈めることは出来ない。そう続けようとして言葉を飲み込んだのだろう。

2015-04-18 00:49:31
跡地 @kkkkkkmnb

「水城さんからの命令は、装甲列車の撃沈。それ以外の命令は私には届いていないわ。あと残り17秒。自発の装填を急いで頂戴」  川内の淡々とした口調に足柄の口から、わずかにくやしそうなうめき声が漏れ出た。そして、分かったわ。とだけ言うと通信は途切れた。川内も大きなため息をついた。

2015-04-18 00:56:03
跡地 @kkkkkkmnb

そうこうしている間にも榴弾は規則正しい間隔でどこかで爆発を起こし、破片が彼女たちになにかしらの被害をもたらした。飛沫でビショビショだった床にはガラスが飛び散って、誰かが上を通るたびに、嫌な音を立てた。足柄の撃った四発目も、命中こそしたがいとも簡単に弾かれてしまった。

2015-04-18 01:04:07
跡地 @kkkkkkmnb

「……なんでだ」  川内がついに弱音を吐いた。今まで、どんな時でもニヤリと楽しそうに笑っていたこの指揮官が、突如こんなことを言い出したかと思うと、突然横にいた大井の肩を掴んだ。大井が睨みつけるが、川内は大井を掴んだことにすら気が付いていないのかもしれないくらいに考え込んでいた。

2015-04-18 01:16:02
跡地 @kkkkkkmnb

……この装甲列車は一体何なのだ?

2015-04-18 01:32:02
跡地 @kkkkkkmnb

その圧倒的な防御力と破壊力等のスペックもそうだが、何よりも敵の目的が分からないのだ。もちろん、敵は我々を攻撃している以上こちらを撃沈、あるいは損傷を与えようとしているのだろう。ではどうしてそんなことをするのか? という疑問が生まれる。これも簡単だ。

2015-04-18 01:49:10
跡地 @kkkkkkmnb

我々が艦娘で、向こうが深海棲艦だからだ。ではどうしてこの海域で損害を与えるのか? ここは、輸送船のルートにも入ってはおらず、滅多に航行には使われない海域だ。周辺の海図を広げても、小さな島一つすらも見つからない、海の平原とでもいうような場所なのだ。

2015-04-18 01:54:58
跡地 @kkkkkkmnb

なのに、この装甲列車はここで目撃されて、今現在もその報告と同じ場所で交戦を開始した。その理由が川内にはどうしても分からない。敵にとってこの場所は特別なのか? それとも、あるいは……様々な可能性が川内の頭の中を駆け巡ったがどれもいまいちピンとこない。

2015-04-18 01:59:05
跡地 @kkkkkkmnb

そんな川内に、彼女の放っていた水上偵察機から通信が入った。偵察機に乗り込んでずっと装甲列車を見張っている妖精は怪訝そうな声で川内に尋ねた。 「どうして先ほどから列車砲を撃たないのですか?」  その質問の意図が理解できなかった川内は眉をひそめた。

2015-04-18 02:06:02
跡地 @kkkkkkmnb

何かがおかしい。そう直感した川内は半ばすがる気持ちで、その妖精の言葉に耳を傾けた。

2015-04-18 02:07:50
跡地 @kkkkkkmnb

【青葉島鎮守府 第九話】終了

2015-04-18 02:08:29