青葉島鎮守府 第七話

装甲列車との戦い その1 前の話(http://togetter.com/li/794724
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跡地 @kkkkkkmnb

【青葉島鎮守府 第七話】 敵艦、見ゆ

2015-03-26 00:04:32
跡地 @kkkkkkmnb

水上蒸気機関車から外を眺めても、ただただ水平線が広がるばかりで島影一つみつけられなかった。広い大海原を汽車がポツンと走っている。結構な速度、おそらく60ノット近い速度が出ているはずなのだが、周りの風景が全く変わらないのでそう言われてもイマイチぴんとこなかった。

2015-03-26 00:14:04
跡地 @kkkkkkmnb

この光景は、武蔵野のように真っ平らでどこまでも続く田園を走っている風景ようにも思える。それはやはり、一昔前まで、汽車が陸の上を走っていたからなのかもしれない。  しかし、この汽車は、黒い煙をあげながら力強く、大海原を走っていた。装甲列車が目撃された海域に向かって。

2015-03-26 00:19:26
跡地 @kkkkkkmnb

一両だけ牽引されている客車の中では、護衛船団と第一艦隊の艦娘達がゴトゴトと揺られていた。あるものは窓の外に目を光らせながら、あるものは目をつぶってリラックスしながら、またある川内は、目の前に座っている瑞鶴に何か話しかけるべきかどうか思いを巡らせながら……

2015-03-26 00:24:47
跡地 @kkkkkkmnb

叢雲は顔を真っ赤にして一人座っていた。

2015-03-26 00:26:16
跡地 @kkkkkkmnb

理由は至って簡単。古鷹に向かって護ってやるなんていう大口を叩いたことが、今更になって恥ずかしくなったのだ。それも大勢の艦娘がいる前で、なんの脈絡もなくいきなり。出撃するまでは色々と準備に追われて考える暇もなかったが、こうやって座席に座った途端に思い出してしまった……

2015-03-26 00:32:15
跡地 @kkkkkkmnb

これ以上、叢雲には触れないでおこう……なんだか作戦に支障がでそうだし、たぶん触れたら向かいに座っている綾波が黙ってはいないだろうから……護衛船団は戦闘中に二人一組の小隊で戦うことが多いが、叢雲と綾波のバディはとてつもなく強力だ。で、お茶を濁しておこう……

2015-03-26 00:43:21
跡地 @kkkkkkmnb

問題の海域に到着しても周りの景色は相変わらずで、一面に大海原が広がるのみであった。装甲列車はおろか、島影も深海棲艦らしき影も視認できない。列車に積み込んだ電探にもなんの反応もなかった。

2015-03-26 00:50:46
跡地 @kkkkkkmnb

汽車は一度大きく蒸気を吐きだすと、その場に停車した。汽車が止まってしまうと、辺りはとても静かになった。停車していたのはほんの五分ほどだったが、まるで時間が止まってしまったかのようになにも変化がなかった。

2015-03-26 00:55:45
跡地 @kkkkkkmnb

風が吹いた。その風が、客車の窓ガラスにあたってガタガタと音を立てた。すると、まるで止まっていた時間が動き出したかのように、色々な音が一度にした。まずは、ソナーが何かを見つけた音、それに艦娘達が反応する音、そして汽車の汽笛の音、機関の始動音。そして、また窓ガラスがガタガタと震えた。

2015-03-26 01:02:56
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「総員戦闘配置!」  戦闘班長である川内の鋭い声が響き渡った。足柄と補佐の衣笠が、後ろからけん引している列車砲へと走り去っていった。

2015-03-26 01:07:55
跡地 @kkkkkkmnb

装甲列車がその姿を見せたのは、こちらの列車砲の長大な射程距離よりもさらに遠くからだった。海面が暗くなり、歪んだかと思うと、装甲列車が走行をしながら、徐々に海面へとその姿を現した! 遠目からでもわかるその大きさに、艦娘たちは息をのんだ。

2015-03-26 01:17:28
跡地 @kkkkkkmnb

「索敵をしろ!」  川内がそう指示を出すと窓から腕を突き出して、勢いよく水上偵察機を発射した。瑞鶴も乗降口の扉を開けて、そこから矢を放つ。矢は大きく弧を描くと、一番高い所で彩雲へと姿を変えて、装甲列車の方へと向かって行った。

2015-03-26 01:26:23
跡地 @kkkkkkmnb

綾波と叢雲が備え付けの望遠鏡で、じっと装甲列車を観察する。しかし、ピントを合わせた瞬間に綾波がうめき声をあげた。 「船団長! 迷彩です! ダズル迷彩です!」  そんな報告聞いてないぞ! 川内がうめき声をあげながら悪態をついた

2015-03-26 01:35:16
跡地 @kkkkkkmnb

幻惑迷彩とも呼ばれるその幾何学的な迷彩は、見るものに速度や進行方向の把握を困難にさせてしまう。川内が咄嗟に搭載兵器の視認を行え! と指示を絞ったが、綾波と叢雲のつらそうな顔は変わらない。水上偵察機からの報告も漠然としていて、要領を得ない。

2015-03-26 01:40:01
跡地 @kkkkkkmnb

「敵装甲列車、われわれと並走しています!」 「まだ、こちらの列車砲の射程外です!」  いつもの戦闘より数段遅れてなんとか情報が集まってきた。川内が装甲列車へ近づくために面舵を命じた時だった。汽車の近くに砲弾が落ちた。外れたが、そんなに遠くないところで巨大な水柱が立った。

2015-03-26 01:55:45
跡地 @kkkkkkmnb

全員の血の気が引いた。こちらの列車砲よりも、相手の大砲の方が射程が長いことに……

2015-03-26 01:56:54
跡地 @kkkkkkmnb

【青葉島鎮守府第七話 終了】 装甲列車との戦いは続きます

2015-03-26 01:57:52