青葉島鎮守府 第十話

不可解な通信 前話:http://togetter.com/li/809724
0
跡地 @kkkkkkmnb

【青葉島鎮守府 第十話】

2015-04-25 23:39:29
跡地 @kkkkkkmnb

水上偵察機からの通信は多少のノイズが混じっていただが、その怪訝そうな声は一言一句ハッキリと聞き取ることができた。どうして列車砲を撃たないのか? その問いに対して川内はどういうことだ!? と問い詰める。するとほんの少しのラグと共に返ってきたのは、困惑に満ちた声だった。

2015-04-25 23:51:32
跡地 @kkkkkkmnb

しどろもどろな妖精に川内が更に問い詰めようとするのを横で聞いていた陸奥が制した。そっと川内の肩に手を置くと、陸奥もマイクのスイッチを入れた。 「水上偵察機、こちら陸奥。状況を報告せよ」  落ち着かせながら、しかし凛とした声で陸奥は妖精に命じた。私に視えたものの全て報告せよ、と。

2015-04-26 00:03:17
跡地 @kkkkkkmnb

長門とよく似たその声に、妖精は一度黙ると 「列車砲の第一射、第二射が装甲に弾かれて以降の砲撃を確認しておりません」  陸奥が、既に6発の砲撃を行ったと告げると妖精は驚いた様子で 「しかし、命中も水柱も私は確認しておりません!」  と答える。通信を聞いていた全員が愕然としていた。

2015-04-26 00:13:06
跡地 @kkkkkkmnb

「装甲の貫通も、水柱も貴方は確認していないのね?」 「はい、そうです」  更に聞けば、この妖精は敵砲が火を吹く様子はおろか、そもそも主砲があるのかどうかさえも確認できていない。この妖精の眼には何事もないかのように走行しているようにしか見えてないのだ。

2015-04-26 00:30:09
跡地 @kkkkkkmnb

陸奥は手早く妖精に観測を続けることを指示してから通信を切った。そして川内に向かって力なく笑うと、独り言のようにつぶやいた。 「まるで独り相撲だわ」

2015-04-26 00:42:54
跡地 @kkkkkkmnb

窓の外では、列車砲7回目の砲撃が巨大な爆音と共に発射され、すぐさま敵との距離を取るために舵が切られ、客車が大きく揺れた。そして間髪入れずに敵砲弾が降り注いでくる。

2015-04-26 00:57:56
跡地 @kkkkkkmnb

しかし、そのことに現実味がなかった。こちらの必死の砲撃は誰にも観測できないまま消息を絶ち、降り注ぐ砲弾がどこから発射されているのかは全く分からない。確かに敵が視える。あそこにいる。それなのに敵が捉えられない。その矛盾を前にした川内と陸奥は力なく笑うしかなかった。

2015-04-26 01:15:17
跡地 @kkkkkkmnb

「……だい! ……んだい! ……チッ!」  舌打ちと共に思いっきり川内が殴られた。みると大井が凄まじく不機嫌そうな顔で立っていた。川内はポカーンとした顔で大井を見つめる。すると大井は川内の耳を思いっきり引っ張りながら大声で 「敵襲なんですけど!」 と怒鳴った。

2015-04-26 01:25:36
跡地 @kkkkkkmnb

それでも川内がなんのことか理解できていないので、今度はほっぺを思いっきり抓りながら 「敵が、深海棲艦がうじゃうじゃ現れたんですけども!!」  川内の目がカッと見開かれるころには頬が真っ赤を通り越して少し紫がかっていた。 「……ったく。スイッチが切れるとすぐに弱気になる」

2015-04-26 01:35:54
跡地 @kkkkkkmnb

そう言って、大井が睨みつける。川内は目をぱちぱちさせて大井の目を見つめると、肩にそっと手を置いてから 「ありがとう大井ってぃ、愛していr」  最後まで言い切る前に表情一つ変えずに大井に思いっきりはたかれた。川内の余裕がなくなった時のお約束のパターンなのだ。

2015-04-26 01:42:49
跡地 @kkkkkkmnb

「電探! なにやってんのよ! 距離は?」  川内が虚勢交じりの大声を上げる 「急に現れました! 突然、装甲列車周辺に反応が……」 「綾波、視認できた?」 「いえ、突然現れました。ほんの一瞬目を離したら急に……」  川内がまーたそれかと苦笑する。

2015-04-26 02:01:19
跡地 @kkkkkkmnb

「ヲ級、タ級、ヌ、リ……重巡ネ級を視認! 他には……」  綾波が望遠鏡を片手に次々と艦種を特定していくが、その数は既に10を超えている。川内にだって遠目に黒々とした数多の深海棲艦がうごめいているのが見える。 「敵艦載機、発艦を確認!」 「応戦する! 瑞鶴、秋月は対空戦闘よーい!」

2015-04-26 02:21:51
跡地 @kkkkkkmnb

秋月と瑞鶴を見送った川内は、通信回路を機関室にいる古鷹繋いだ。すると古鷹の少しかん高い声が川内に要件を尋ねた。 「古鷹、いよいよ貴方の出番よ」  川内が少し笑ってそう告げると古鷹はさっきよりもさらに大きな声で返事をした。少しだけ緊張交じりの声で……

2015-04-26 03:00:05
跡地 @kkkkkkmnb

【青葉島鎮守府 第十話】終了

2015-04-26 03:01:08