────Side:ソラウ
(死ね、死ね、死ね)其ればかり(殺せ、殺せ、殺せ)其ればかり これといった快楽もなく、これといった嫌悪もなく、ひたすらに眺めるような気分で怨嗟を聞いていた。 幾重にも幾重にも絶えず響く呪詛、強いる声、怨嗟。 #nh_02
2015-04-24 18:19:25(其れ自体はどうでもよかった。 お父様、お母様、お兄様。だって何一つ変わらない。 私は其れを聞くだけ、其の通りに従うだけ)#nh_02
2015-04-24 18:21:01(欲しいものなんて、私の意志なんて、何一つなかったのだもの。) …ああ、けれど。 (服が、靴が、髪が、肌が汚れてしまう。それだけは、今まで美しく、商品としてあれと仕込まれた。其れ故に少し嫌だった。) #nh_02
2015-04-24 18:21:32(はじめて欲しいと思った、はじめて私の中に生まれたもの、それをくれた人。此の身体から流す魔力の先、パスで繋がる筈の愛しい人) ……ランサー。 (恐ろしい事に、悲しい事に、あってはならない事に、今は途切れてしまったけれど) #nh_02
2015-04-24 18:22:37(どんなにお願いしても、くれないから、どんなに欲しても、私のものにならないから)(はじめて欲しいものだったのに)(こんなにこんなに、欲しいのに) #nh_02
2015-04-24 18:24:36(邪魔ばかりするからいけないの。来てくれないからいけないの。彼をあんなに虐めるのに、なのに手放す気はないの。彼はあんなに辛い顔をするのに、私の元に来てくれないの)(だからケイネスを殺してしまえばいい。ランサーも殺してしまえばいい)#nh_02
2015-04-24 18:25:56(邪魔をするから、ケイネスのものだから、私の物になってくれないから、 こっちを向いても、笑顔を向けても、姿を見せてもくれないから。 私のものじゃないなら、持ち主を殺してしまえばいい)#nh_02
2015-04-24 18:26:20(私のものにならないなら、脚を捥いで、腕を捥いでしまえばいい。 殺してしまえば手に入る。そうしたら、ずっとずっと私の物になるわ)(だってそうしたら逃げられない)#nh_02
2015-04-24 18:27:21……ふふ、待っていてね、ランサー。私が絶対、手に入れてあげるから。 貴方は私のものだから。ふふ、うふふ、ふふふふ、大好き、大好き、大好きよランサー。愛してる、愛してる、愛してる。 #nh_02
2015-04-24 18:28:38────Side:バーサーカー
――ふ、ふふ。そうとも、我が身はゼウスの子にして巨人殺し、英雄、英雄――(夜の街を跳びながら、只管に巡る己への妄信。その歪さに、彼は気付くことはない。威容でなく暴威、傲慢さ。嘗て味わった辛酸は忘却の彼方。代わりに脳裏に浮かぶのは、泥に身を窶してまで掴み取った願い) #nh_02
2015-04-24 23:22:29(ハジマリだけは、その一瞬前までは確かに彼は正しかった。泥の中に眠る一筋の清流、その為に身を捧げた。だが――眼前には、黒く輝く醜悪な太陽。見上げれば黒い空に赤い雲、目線を下げれば泥の海。そして―――耳元でぶんぶんと煩わしい声たちと、既に染まりかけた身体) #nh_02
2015-04-24 23:24:54(泥の中だというのは、直ぐに理解できた。何故なら、ほら。 死ね、死ね、死ねと嘗て殺めた師の声で。 殺せ、殺せ、殺せと踏み躙って来たモノ達の姿で。こっちへおいでよ、と喪った我が子の顔で。そして――あらゆるモノ達からの、楽になれとの甘やかな誘い) #nh_02
2015-04-24 23:27:56(ああ、それは確かにどこまでも甘美な誘いであった。それを『認めよう』とも答えた筈だ。……本来ならば、その意思と魂がそんなことを言う筈がないと言うのに。それすらも気付かぬ、最早この時には手遅れで) #nh_02
2015-04-24 23:29:57(悪意の波、混沌の坩堝、この世全ての悪。その中からたった一筋だけのか細い声が。真っ黒な欲望の中でたった一つ、白く清浄な願いの滴が。そう、それこそがこの身の目指したたった一つの願い。――しかし残念だ。それに触れたその時には、彼はもう英雄ではなかった) #nh_02
2015-04-24 23:31:39(汚れた太陽から『引き摺り出す』、その声のあるじ。【救い出すのではなかったのか】 か細い声を、『聞いてやる』、その為に深みまで潜り込む。【受け止め、叶えるのではなかったのか】) #nh_02
2015-04-24 23:34:45(小さな、しかして眩い光のかけらは先代の聖杯の器、アイリスフィールの願いの残滓。 最期の力で投げかけられる意志に、そのまま答える。「誓いを此処に。その願い、確かに受け取った」【言葉だけは一丁前、ならばその歪んだ笑みは、傲慢さはなんだというのだ?】) #nh_02
2015-04-24 23:36:17(この身にただ一つ誤算があったとするならば、泥に触れた時点で既に終わってしまったいたということ。初めの一歩が、既に間違いだったということ。気付くこともない、気付かぬように歪められているのだから。その証拠に――嘗て心に刻んだ筈の後悔に、冷笑を向けているのだから) #nh_02
2015-04-24 23:38:19(この身は英雄。独り善がりの傲慢のために、全てを蹂躙する大英雄。粗暴で傲慢な半神の英雄。それこそが英雄としての正しき在り方なのだから。――なのに。なのにどうして、英雄の中の英雄たる我が師の顔が消えてくれないのだろう?それだけは最期まで、握り潰すことは出来なかった) #nh_02
2015-04-24 23:42:48