ジ・アイランド・オブ・ドクター・ベップ #7

過去ログが溜まりすぎて140字に収まらなくなった
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2015-04-24 20:45:19
劉度 @arther456

【ジ・アイランド・オブ・ドクター・ベップ】#7

2015-04-24 20:46:21
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。投下中はTLを余り見ないので、感想・実況などを #ryudo_ss に書いて頂けると、後でチェックして小躍りします。では、宜しければ暫くの間お付き合い下さいませ)

2015-04-24 20:47:29
劉度 @arther456

※注意※ 今回のSSにはホラー、スプラッター要素が多分に含まれます。苦手な方は明日まで本アカウントをミュートしておくことを推奨します。

2015-04-24 20:48:30
劉度 @arther456

前回はこちら(6冒頭に1からの過去ログがあります) togetter.com/li/811998

2015-04-24 20:50:37
劉度 @arther456

「厄介なことになったな」研究所地下、潜水艦発着所。潜水艦上で荷物の積み込みをする別府博士は、忌々しげに呟いた。状況は極めて悪い。せっかく見つけた理想の移植素体が逃げ出した。その上、日本軍にこの島が見つかり、攻撃されている。更に深海棲艦まで敵に合流している。 1

2015-04-24 20:51:28
劉度 @arther456

「チカ、コウ。すぐに撤退しろ」近江に通信を送るが、彼女たちの反応はない。そこまで追い詰められているのか。やはり、貴重な複製ではないシャム双生児を前線に出すべきではなかった。「置いていくしかないか」別府博士は苦渋の表情を浮かべて呟いた。自分が死んでは元も子もない。 2

2015-04-24 20:54:48
劉度 @arther456

それから博士は、研究所の自爆装置を作動させた。見つかった以上、この研究所を残しておくことはできない。人目も追手も気にせず、自由に研究できる素晴らしい場所だったのだが。「次の場所も、島がいいな」最後の積み荷を潜水艦に移しながら、博士はポツリと呟いた。 3

2015-04-24 20:57:59
劉度 @arther456

パァン!「ぐっ!?」博士の肩に激痛が突き刺さった。肩の銃創を押さえ、辺りを見回すと、入り口に銃を構えた人影があった。「別府博士ェ!」自衛隊の制服を着た提督だった。確か、あの服は複製体の方だ。監視カメラに雷巡チ級と共に写った姿を、博士は思い出した。 4

2015-04-24 21:01:17
劉度 @arther456

「どうしたんだい?」機材の影に隠れながら、別府博士は努めて冷静な声で呼びかける。潜水艦へのタラップは引き上げてある。複製体はこちらに来られない。打開策を考える時間はある。「君の艦隊が上で待っているよ。迎えにいったらどうだい?」「私の艦隊じゃないっ!」 5

2015-04-24 21:04:30
劉度 @arther456

2、3発の銃弾が機材に当たる。「電ちゃんも!不知火も!翔鶴姉も!私の艦娘じゃない!あいつの艦娘だ!私はもうあそこにいられないんだ!よくも、よくも私を創ったな!」絶叫と足音が、向こう岸をうろついている。こちら側に移る手段を探しているのだろう。 6

2015-04-24 21:07:41
劉度 @arther456

「体も!心も!思い出も!全部揃ってるのに、私はあっちに行けないんだぞ!アイツが本物で、私が偽物だから!こんな思いをするなら、生まれてこなきゃよかったんだ!」ふと、別府博士の目に、宙吊りになったコンテナが留まった。あれを使うおう。調整はしていないが、むしろ都合がいい。 7

2015-04-24 21:10:59
劉度 @arther456

「それで、君はどうしたいんだい?」話しかけて気を逸らさせながら、手元のリモコンでコンテナを動かす。「ここでお前を殺してやる!これ以上、私みたいな目に遭う人を、増やしてたまるもんか!」「短絡的だね」複製体の真上に動かしたコンテナを、ボタンを押して投下した。 8

2015-04-24 21:14:15
劉度 @arther456

ガシャァン。けたたましい金属音が響いた。別府博士は、機材の影から外を伺う。残念ながら、複製体は間一髪落下するコンテナを避けたようだ。「上手くいかないな」壊れたコンテナから、緑色の液体が流れ出る。「……そこを動くな!今、そっちにいってやる!」 9

2015-04-24 21:17:29
劉度 @arther456

ようやく複製体がタラップのボタンを見つけた。だが、もう遅い。「悪いね。私は忙しいんだ」ガシャン、ガシャン。落下したコンテナの軋みが止まらない。「代わりに彼女が相手をするよ」壊れたコンテナの隙間から、腕が伸びた。細い指がコンテナの鉄板を掴み、紙のように引き裂く。 10

2015-04-24 21:20:41
劉度 @arther456

提督は確かに優秀な移植素体だ。どんな生体組織も移植できるし、逆にどんな生物にでもその体のパーツを移植できる。しかし今回それが手に入ったのは、嬉しい誤算でしかない。本来の目的は、別にあった。「戦艦タ級をも上回る姫の複製体だ。君のパーツもふんだんに使ってある」 11

2015-04-24 21:23:55
劉度 @arther456

鉄板をこじ開けて出てきたのは、装甲空母姫の複製体だった。もちろん、手は加えてある。腕は6本、艤装は二基。目と視神経を増設し、360度の視界を持たせている。特筆すべきは、もう一つの上半身が生えた背中だ。脳を二つにすることで、近江のように艦載機の処理能力が向上した。 12

2015-04-24 21:27:14
劉度 @arther456

「クソッ!」複製体が拳銃を装甲空母姫、いや、双胴姫に向けて放つ。だが貧、銃弾はあっさりと装甲に弾き返された。6本の腕をくねらせ、ゆっくりと双胴姫が複製体に近づく。「まあ、精々頑張りたまえ」最後まで見届ける義理はない。別府博士は潜水艦に乗り込んだ。 13

2015-04-24 21:30:30
劉度 @arther456

この潜水艦は一人用に調整してある。別府博士が機器を操作すると、潜水艦は潜行し、トンネルをくぐって島の外側の海に出た。海戦は島の反対側で起きている。このまま静かに逃げれば、見つかることはない。そこでふと、連絡をとらなければいけない相手を思い出した。 14

2015-04-24 21:33:44
劉度 @arther456

「うっかりしていたよ」通信ブイを射出、周波数を合わせ、ある場所に呼びかける。「こちらドクター・ベッポ。ブリュメール・ルージュ、応答されたし。こちらドクター・ベッポ」数度の呼びかけの後、返答があった。『アロー、アロー。こちらブリュメール・ルージュ!』 15

2015-04-24 21:37:02
劉度 @arther456

通信機の向こうから聞こえるのは、快活な少女の声だ。別府博士のスポンサーであり、彼女の名前を正しく発音してくれる、貴重な友人でもある。『ドクター・ベッポかい?さっき、キミの研究所からデータが来たけど、どうしたんだい?』「艦娘の攻撃を受けた。今はサンプルを持って脱出中だ」 16

2015-04-24 21:40:25
劉度 @arther456

『ワーオ……それは大変だねえ。近江ちゃんは無事?』彼女は近江を特に気に入っていた。だから告げる知らせも、残念なものになってしまう。「駄目だな。呼んでも返事がない」『うえー、もったいなーい』「これから避難ポイントAに向かう。いいかい?」 17

2015-04-24 21:43:41
劉度 @arther456

『オッケー。それじゃあ、アレクセイを迎えに行かせるよ』「感謝する」別府博士は通信を終えた。通信ブイを引き戻す。スポンサーへの報告も終えた。多くのサンプルを失ったのは痛いが、ともかくこれで一段落ついた。安堵の溜息をついた矢先、突然、潜水艦が激しく揺れた。 18

2015-04-24 21:46:53
劉度 @arther456

「なっ!?」艦内に響くのは、浸水を示すアラート。「攻撃!?どこから!?」こちら側には艦娘も深海棲艦もいないはず。別府博士が驚愕した矢先に、操艦室のハッチが蹴破られた。海水と共に飛び込んできたのは、右腕が巨大な魚雷発射管になった深海棲艦。雷巡チ級。 19

2015-04-24 21:50:13
劉度 @arther456

「まさか、あの複製体を」追ってきたのか、と言葉を続けることはできなかった。チ級の右手の魚雷発射管が、別府博士の喉を叩き潰したのだ。ガコン、と発射管が作動する音が、博士の聞いた最後の音だった。零距離で放たれた酸素魚雷は、発射管ごと別府博士を跡形もなく吹き飛ばした。 20

2015-04-24 21:53:25