黒猫レストランの日常

最近は春の暖かさ通り越して暑いな。洗濯物がよく乾く。
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黒猫レストラン @rest_blackcat

『兄ちゃん、週末にあの子と出かけてもいい?』 ふんわりと石鹸の香りを漂わせる弟が控えめに質問する。 風呂上がりの濡れた髪を乾かす兄の手が一瞬止まった。

2015-04-24 23:56:26
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「前にも言ったろ、ダメだって。」 再び柔らかく指を動かし、髪を乾かす。 『でも、毎日窓から外を眺めて、お外に出たそうにしてるよ。最近は暖かくなったし、少しならいいでしょ?ちゃんと連れて帰るから。』

2015-04-25 00:00:46
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「もしものことがあったらどうする?外は物騒だ。進んで危険なところへ行かなくてもいいじゃないか。如何してもというなら、また夜に庭先に出るだけでもいいだろ。」 耳の裏を丁寧に温風が乾かしていく。 ふんわりとボリュームをつけ、乾かされた髪に櫛を通していく。

2015-04-25 00:05:29
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『でも……でも、明るい時にお外に出してあげたいよ。お日様の光を浴びさせてあげたいの。日光浴が健康にいいって学校の先生も言ってたよ。』 「日光浴なら二階のベランダで充分。わざわざ外へ出るなんて、兄ちゃんは反対だ。さぁ、乾いた。歯を磨いて寝る支度をしなさい。」

2015-04-25 00:12:32
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兄が自分の髪を手早く乾かしていく。 物言いたげな弟は言われたように歯ブラシを手にした。

2015-04-25 00:15:22
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日差しが差し込むベランダを少年が眺めていた。 窓枠の隙間から流れる柔らかい風に、前髪がふわふわと揺れている。 (「……」) 春の風を感じ、気持ちよさそうに目を閉じる。

2015-04-25 09:17:22
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床に寝転び本を読んでいた弟が顔を上げる。ベランダを眺めるていた少年を不憫そうに見た。 『君もお外に出たいよね……』

2015-04-25 09:28:49
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カーペットの床に座る少年が、指で縫い目の数を数えている。 細かく、シミの多い縫い目を丁寧に。 タイミングよく通りかかった兄が人差し指を踏みつけた。 「なんだ、まだ居たのか。」 じっくりと爪の先から痛みが湧いてくる。少年は踏みつけている靴を凝視したまま顔を上げれない。

2015-04-26 21:05:55