【第二部-四】誰かを見つめる時雨と扶桑と椿油 #見つめる時雨

扶桑×時雨 ※R-15気味
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誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

扶桑と山城の部屋。いつも和風の小物に彩られていて、僕はこの部屋の落ち着いた雰囲気が好きだった。僕は今、この部屋で座布団に座り、丸机に置かれた鏡に映る自分を眺めていた。お風呂あがり僕の髪に、扶桑の細い指が通る。 「椿油の使い方を教えて欲しいんだ」 きっかけは僕のこの一言だった。

2014-03-17 22:30:12
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「時雨くらいの長さなら、二滴くらいが丁度いいわ。それを手のひらによくのばしてから、毛先を中心に馴染ませていくのよ。こうやって…」 扶桑が僕の髪に椿油を馴染ませていく。扶桑の手付きは滑らかで、優しくて。何だか、すごい安心する…。 「濡れた髪は傷みやすいから、擦らないようにね」

2014-03-17 22:35:09
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「でも驚いたわ。突然、椿油の使い方を教えて、だなんて」 「…扶桑の髪、すごく綺麗だから、ずっと憧れてたんだ。でも、自分じゃ上手くできなくて…」 「ふふ、ありがと。コツさえ掴めば、簡単よ」 扶桑の優しい笑顔が鏡に映る。それを見て改めて思う。扶桑って、綺麗。

2014-03-17 22:40:10
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「毛先に馴染ませたら、手のひらに残った分をこうやって全体につけるの」 扶桑が僕の頭を両手で撫でる。鏡に映る僕の髪に艶が出てきているのがわかった。魔法みたいだ、なんて思う。 「最後にドライヤーで乾かします。上から下に向かって当てるのがコツね」 温かい風が、僕の髪をくすぐった。

2014-03-17 22:45:10
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髪が軽くなっていくのを感じる。サラサラした髪が肌に触れ、気持ちがいい。思わず目を閉じ、その感触に浸った。 「…あっ」 …?扶桑の声に、目を開ける。鏡を見ると…両サイドの髪がぴょんと跳ねていた。 「…ここはどうしようもないのかなぁ…」 残念…扶桑みたいになれると思ったのに…

2014-03-17 22:50:10
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「はい、おしまい。…ふふ、ここのハネ、やっぱり気になる?私はいいと思うわ。可愛いわよ」 髪を乾かし終えた扶桑が、僕の跳ねた髪を弄る。可愛い…。扶桑にそう言われたら、やっぱり悪い気分はしない。そして、僕は鏡に映る自分を見る。髪が艶々になっていた。すごい…。

2014-03-17 22:55:09
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「…ありがとう、扶桑。こんなに綺麗になるなんて…嬉しい」 鏡の扶桑がにっこりと笑った。 「時雨の基の髪質がいいのもあるわね。いい手触り」 扶桑が僕の髪を掬うように撫でた。指先が僕の首に触れ、少しゾクッとなる。

2014-03-17 23:00:16
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「使い方は覚えたかしら?わからなくなったらまた聞いてね」 そう言って、扶桑の指先が僕の髪から離れた。 「あ…」 途端に寂しさを感じ、それが声になって外に出た。扶桑が不思議そうに鏡に映る僕の目を見る。…僕は恥ずかしくなって、視線を逸らせた。

2014-03-17 23:05:09
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少しの沈黙の後…扶桑の指がまた、僕の髪に触れた。髪に沿って、指先が流れる。優しい感触が、伝わってくる。それは…とても心地が良かった。 「…気持ちいい?」 扶桑はそのしっとりした声で、僕の心を見透かしているように、耳元でそう囁いた。 「…うん」 つい、本音が溢れる…。

2014-03-17 23:10:10
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「…時雨って、結構甘えんぼさんなのね」 …否定しきれない自分がくやしい。でも、扶桑の手に安心し、もっとして欲しいと思ったのも事実だった。…僕ってお姉さんに弱いのかもしれないな…。普段は夕立たちの面倒を見ることが多いから、逆に優しく撫でられると、こう…駄目になる気がする…

2014-03-17 23:15:10
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髪を撫でていた扶桑の指が、徐々に首に触れ始める。髪に触れられていた時とは違う刺激が、体を通り抜けた。 「んっ…は…ぁ…」 やがて、扶桑の指が僕の前に進み、首の付け根を撫でる。ゾクゾクした感覚が身体を這い、僕は無意識に扶桑の手に自分の手を重ねていた。身体が、火照っていく…

2014-03-17 23:20:11
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うっすら目を開けると、鏡に…顔が紅潮し、大きく息をしている僕が映っていた…。あれ…?どうして僕…こんな…。 「ふ…ぁ…んくっ…」 どうしよう、これ…あの感覚だ…。扶桑に触られて…僕、イケナイ気分になってる…。

2014-03-17 23:25:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ここ、好き?」 扶桑が僕のうなじに人差し指を這わせた。 「んぁっ…」 僕の身体が、反射的に背を逸らせる。身体に力が入らない…。僕はそのまま扶桑にもたれかかるような姿勢になってしまった。 「あら…大丈夫?」 扶桑の心配する声が、酷く意地悪に聞こえた。扶桑のせいだもん…

2014-03-17 23:30:09
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でも、自分からねだったようなものなので、何も言えなかった…。これからは気をつけよう…。ああ、まだドキドキしてる…。 「ただいま、姉様」 突然部屋に入って来た山城の声を聞いて、心臓が一層大きな音をたてた。急いで立ち上がろうとしたけれど、力が入らない…。 「あ、時雨がいる」

2014-03-17 23:35:10
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「時雨がね、私に椿油の使い方を教えて欲しいって」 「へー、そうなの。わぁ…綺麗になってるじゃない」 そう言って、今度は山城が僕の髪に触れる。…うう…山城にまで触られるなんて…。いや、とっても嬉しいんだけど…我慢が…。僕はお腹の下の辺りがきゅうっとなるのを感じていた…。

2014-03-17 23:40:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「姉様にやってもらったの?」 「…え?…う、うん…」 「ふぅん、流石姉様ね。…私もやってもらいたいな…」 山城が僕の跳ねた髪をぐりぐりと弄る。あれ…もしかして嫉妬されてる…?そんな…。 「や、山城…!」 何とか体を起こし、山城に向かい合った。山城が何事かと目を丸くする。

2014-03-17 23:45:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「に…似合う…かな?」 山城は数回瞬きをした後、クスっと笑った。 「…ええ、似合ってるわよ」 山城の手が僕の髪を掬う。それは山城の手から抵抗もなく零れていった。 「綺麗。とっても」 …あまりに直球な言葉に、僕の方が恥ずかしくなってしまった。相変わらず山城って、ずるい

2014-03-17 23:50:11
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ありがとう、山城!嬉しいよ」 山城が今更恥ずかしくなったのか、少し視線を逸らせた。可愛い… 「扶桑もありがとう。またお願いしてもいいかな?」 「ええ、いいわよ」 扶桑の返事に、山城がギョッとする。 「え!?こ、今度は私がやってあげるわよ!」 …やっぱり嫉妬されてる?

2014-03-17 23:55:09
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「じゃあ、おやすみ。また明日」 僕は二人に手を振り、部屋を出た。…ええと、扶桑が山城に、山城が僕だから…僕は扶桑にしてあげればいいのかな?…いやいや。 「ふふ…」 髪を触る。夕立は何て言うかな。綺麗って言ってくれるかな?そんなことをちょっと期待しながら、部屋へと歩いた――

2014-03-18 00:00:39