【第一部-参】誰かを見つめる時雨と夕立 #見つめる時雨

時雨×夕立
18
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ほら、柔軟するよ、夕立。脚開いて」 お風呂上がりに、部屋で夕立と2人で柔軟体操をする。これは毎日の日課なんだ。身体を柔らかくしておくと、関節や筋肉に柔軟性が生まれて、いざという時に怪我をしにくくなるんだ。身体が資本の僕達には大切なことなんだよ

2013-12-25 21:28:31
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「じゃあ、背中を押していくよ。息を吐いてー」 「ぽーいーーーー……」 夕立は、あの艦長の影響からか、普段から積極的に体を鍛えていて、柔軟性も中々。すぐに胸が床に付いた。流石だ。 「時雨、もう少し押しても大丈夫っぽいー」

2013-12-25 21:34:40
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「そう? じゃあ、もっといくね」 とはいえ、このまま両手で押すとそこだけに負荷を与えちゃうな……そうだ、身体ごと乗っかってみよう。僕は夕立にのしかかってみた。 「よいしょ」 「ぽいっ!?」 夕立の上半身がさらに沈み、顎が床に付いた。すごいや、ばっちりだね

2013-12-25 21:42:20
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「し、しぐれー……」 夕立が変な声で僕を呼ぶ。どうしたんだろう? 「どうしたの、夕立。つらい?」 「そうじゃなくって……なんだか柔らかいのが背中に当たってるっぽいー……」 柔らかいの……それって僕の胸のこと? 今更恥ずかしがる事かなぁ

2013-12-25 21:49:55
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ほら、交代しよう。次は夕立が僕を押してよ」 「ぽいー……」 僕は夕立ほど引き締まってるわけではないけれど、柔軟性には自信がある。自分だけでも胸くらいは付くけど、押してもらったほうが伸ばせるから、いつもやってもらってる。 「いくよ、時雨」

2013-12-25 21:57:02
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

夕立が僕の背中を押す。僕はあまり苦もなく床まで付いた。 「ふぅ…いいよ、夕立。僕がやったみたいに乗ってきて」 「えっ!? う、うん……」 そうして夕立が僕の背中にのしかかって……来ない。 「夕立、早く。何恥ずかしがってるのさ」 「ぽ、ぽい…」

2013-12-25 22:04:06
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

ようやく背中に体重がかかる。そして柔らかいものが僕の背中に乗った。 「……」 何だろう、夕立が変に恥ずかしがっていたせいか、僕も妙に恥ずかしいものを感じる。 「時雨…? 顔赤いよ…?」 う…どうやら今感じている気恥ずかしさが顔に出てしまったらしい。何とか誤魔化せないかな…

2013-12-25 22:12:51
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「だ、大丈夫だよ。このまま続けて……」 「……うん」 ……沈黙。何だろう、この状況。ひどくシュールな気がするよ。せめて夕立に何か喋って欲しいな… 「…やっぱり時雨も恥ずかしいっぽい? 夕立と同じっぽい?」 そ、それを聞くんだ…どうしよう

2013-12-25 22:19:37
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

ダメだ、観念した方が良さそう…。 「う、うん…確かにちょっと、恥ずかしいね…」 「やっぱりー!」 夕立がぱっと僕から離れる。ゆっくりと僕も体を起こし、そして、夕立の方を向くと、何故か正座して僕の方を見ていた。 ん……?

2013-12-25 22:27:46
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「女の子に…恥ずかしいことをさせちゃ、いけないんだよ……」 夕立が人差し指を合わせながらもじもじする。微妙に納得できるような、できないような感じがあるんだけど…それに、僕も女の子なんだけどな…。 「聞いてる? 時雨!」 …何か僕がすごい悪いことをしたみたいになってるよ。

2013-12-25 22:35:00
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「もう!時雨ってば!怒るよ!」 夕立の耳…もとい髪の毛がぴょこんと跳ねる。え、えー……? 「僕、そんなに悪いことしたかな……?」 僕の返事は更に夕立の逆鱗に触れてしまったらしい。みるみる顔が赤くなっていく。 「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」 え、ちょっと…

2013-12-25 22:41:53
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

夕立が僕に飛びかかってきた。そして 「うわぁ!?ちょっと、夕立!?」 夕立が僕の腋に手を伸ばしてくる。 「え!?夕立、そこ、やめ、ひゃん!?」 僕は夕立に押し倒され、思いっきり脇腹をくすぐられた。これ、だめ、くるしい!

2013-12-25 22:48:21
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「どお?参った!?」 何か釈然としないけど、ここまま続けられたら僕の息が保たない。早くギブアップしないと…… 「ご、ごめ、夕立…僕がわる……んぁっ!?」 ちょっと、夕立……そこ、胸…… 「時雨!早く、降参した方がいいっぽい!」

2013-12-25 22:59:55
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

夕立の瞳が夜戦の時みたいにギラギラしている。不味い、この状態の夕立はそう簡単に止まってはくれない… 「夕立、本当に、やめ……うくっ!?」 肩に鋭い痛みが走る。夕立が僕の肩に噛み付いていた。 身体の危機を感じ、心臓の動きは早く、全身の感覚はより鋭利なものに変わっていく

2013-12-25 23:10:29
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

何かが弾け飛ぶ音がし、顔の横に何かが落ちた。え、何これ……ボタン? 「うぁあ!?」 胸に直の手のひらの感触が伝わってきた。このボタンは僕のパジャマのボタンだったんだ。夕立、夕立…本当に、止めて… 「だ、誰か、助け……」 その時、部屋のドアが勢い良く開かれた

2013-12-25 23:20:10
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ちょっと!いつまで騒いでるつもりなの!?……って何やってるの!?夕立!!」 入ってきた山城が夕立を抑えにかかった。 「もう!止めなさい、夕立!!」 山城は夕立を羽交い締めにし、僕から引き剥がし、そして、そのまま夕立が落ち着くまで抱きとめていた。

2013-12-25 23:30:43
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「あ…し、しぐれ…!?」 夕立の瞳が落ち着きを取り戻し、正気に戻っていく。途端に、夕立の目から涙が溢れ出た。 「ごめんなさい、ごめんなさい、しぐれ……」 夕立が崩れ落ちる。山城も、もう大丈夫だろうと判断したのか、腕を解いた。 「まったくもう…一体何があったのよ…」

2013-12-25 23:38:17
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「痛っ……」 山城が僕の肩の傷口の手当をしてくれている。僕はその間、この状況をどう説明すればいいのか、只管頭を巡らせていた。夕立は部屋の隅でうずくまったまま動かないでいる。 「そろそろ教えて?何があったの…」 「それは…」 夕立に襲われた。でも、僕はそれを言いたくなかった

2013-12-25 23:46:40
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

夕立は僕が辛かったり、泣いていた時にはいつも助けてくれた。何より大切な姉妹艦。今回のも、何かの間違いに決まってる。ちょっと、やり過ぎちゃっただけだよね。すぐに元の夕立に戻るよね。そう信じて、僕は…

2013-12-25 23:53:48
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「僕が夕立をちょっと怒らせちゃって…だから僕の自業自得だよ。ちょっと夕立もやり過ぎちゃったかもしれないけど、でも僕が悪いから。許してあげて…」 山城が困った顔をする。どう判断したものか考えこんでいるようだ。 ああ、また僕は、山城を困らせてしまった

2013-12-26 00:01:06
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「当事者の貴女がそう言うなら…私は何も言えないわ…」 「でも」と、付け加えた山城の手が、僕に伸びる。そして僕は、山城に抱き寄せられた。 「全部自分で抱え込まないで。駄目になる前に、必ず相談しに来て。お願いよ」 ……その山城の言葉に、僕は反射的に「うん」と言葉を返した

2013-12-26 00:07:46
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

山城は最後まで心配そうな目をしながら部屋から出て行った。山城が僕を心配してくれている。何だか嬉しい…な。 「さて…」 僕は立ち上がり、部屋の角へと移動した。夕立はまだ、嗚咽を漏らしながらうずくまっていた。 「夕立」 返事はない。ただ夕立のすすり泣く声が、部屋を包んでいた

2013-12-26 00:14:24
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

僕は、そんな夕立を抱きしめた。夕立の体がビクンと震える。 「僕はね、夕立のこと…大好きだよ。だから、大丈夫」 そのまま夕立の背中を優しく擦る。夕立の震えは、まだ止まらない。けれど…もう大丈夫、そんな気がした。 「夕立、そろそろ寝よう。僕、疲れちゃった…」

2013-12-26 00:20:40
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

布団は既に敷いてあった。僕は動こうとしない夕立を抱き上げた。夕立は何の抵抗もせず、僕に身を任せている。……あのソロモンの悪夢は、こんなにも小さくて、軽い。僕に噛み付いたのだって、何か理由があったんだと思う。僕は、そんな気がした

2013-12-26 00:28:44
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

僕は夕立を布団に連れて行き、一緒の布団に入った。そして、小さく縮こまった夕立を胸に抱き寄せ、夕立の嗚咽が寝息に変わるまで、ずっと身を寄せていた……

2013-12-26 00:32:33