俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 1
- Buts_Kirisaki
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#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 跡形もない。 ローブの男が創りだした魔力の矢は、一息にゼルドラドを貫いたかと思うと、そこに存在したものすべてを消し去ってしまった。 「片付いたな。無事か、トーマ」 私の名前を知っている!? 「兄さま…ッ!」アンルシアが駆けつけた。▽
2015-04-25 12:06:26#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 「兄さま、この方は…?」 妹も知らない輩か。私はかばいつつ剣を向ける。 「誰なんだ。貴様は…?」 鼻先に突き付けた剣先を見つめ、男は「ぼくは、君の盟友だ」そう言って目線をアンルシアへ移した。▽
2015-04-25 12:07:15#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 「えっ!? あの…っ」 妹は明らかに動揺した。もちろん私も動揺する。 「アンルシアの盟友…だと!?」 そしてあろうことか、私が言えずにいたあの事実をことも無げに言い放った。 「真の勇者アンルシア、ぼくが君を死なせない」▽
2015-04-25 12:08:26#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 「あなたが、わたしの…盟友?」 魔王軍を掃討し、魔元帥すら屠るチカラを持つ男。妹はあらためて男を見つめ返した。 「貴様…名は?」 妹の視線を遮るように問うた。 「エクス」▽
2015-04-25 12:09:13#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 盟友エクス。そう告げた彼の瞳は幾分か柔らかい。 「あの…エクス、わたしはその」 妹が真の盟友から目を離せずに、詰め寄ろうとしたそのとき。背後からかすかに魔力の残滓を感じた。それは突如として膨れ上がり、逼迫を予感させた。▽
2015-04-25 12:10:41#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 「アンルシア…ッ!」 「グルァァァォッ」 討ち漏らした魔物が背中より急襲してきた。妹の意識はエクスに向けられ、反応が遅れる。気づいたときには狂牙が肩口に迫っていた。 くっ、間に合わない!▽
2015-04-25 12:11:33#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 肉が引き千切れる音。 しかしそれは妹のものではなく、「グ…ガ、ァッ」真っ二つになった魔物が崩れ落ちた。 妹はエクスの胸に抱かれている。エクスは血を払い、懐へ短剣を納めた。▽
2015-04-25 12:12:58#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 「討ち損じていたか。すまないアンルシア」 「いえ………大丈夫」 「アンルシア、よかった!けがはないか!?」 私の声に気づいていないのか、妹はただ言葉なくエクスを見つめていた。▽
2015-04-25 12:13:47#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 平静を保ってはいるが、その瞳は潤んでいる。 優しげに見返すエクスをまっすぐに見て、妹は、腕の中で小さくなっていた。 傍目からもわかるほど頬を紅潮させて、唇をきゅっと結ぶ。▽
2015-04-25 12:14:30#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない ああ…妹よ。 間違いない。 この反応。私の懸念はきっと間違っていない。 ああ…アンルシア、いけない。いけないよ。それはいけない!▽
2015-04-25 12:15:26#俺の妹が勇者姫で盟友と危ない 私を見るんだアンルシア! さっきまでのように、憧憬を込めて呼んでくれ。兄さま、と呼んでくれ…。 「盟友は、勇者を守る」 私はトーマ。真の勇者の影――。 「盟友…エクス」 アンルシアが…妹が……。私の妹、勇者姫が盟友とアブナイ!
2015-04-25 12:16:12