Voice ～Happy Birthday～

りえぷぅ @riem124blue

1 渋谷『 27日？あー、その日は昔の連れに久々会う約束してんねん。』 付き合いだしてまだ１ヶ月も経ってなくて、自分の誕生日とか、とても言い出せない…。 □□「そっか、ならいーの！」 渋谷『なんかあった？』 ましてや“久々”とかなら尚更。 □□「ううん！何でもない！」

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2 せめて一緒にって思ったんだけど、ま、仕方ないか。 ◇◇「それで、何であたしなの？」 久しぶりに大倉さんのBARに来た。 結局１人きりで過ごすのもなんだかイヤで、彼女を誘った。 ◇◇「それにしても、いくら久しぶりだとしても、彼女の誕生日ほったらかして友達と会うかね？」

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3 大倉「えっ！！□□ちゃん、今日誕生日なん？」 □□「はい。あ！や！彼はわたしが誕生日ってこと知らないんです！」 ◇◇「はっ？！言ってないの？！」 □□「うん…なんか、付き合い初めたばっかりだし…言いづらくて…。」

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4 大倉「でも誕生日やろぉ…？誕生日はちゃんと言うたがええんちゃーう？」 □□「んー…でも…。」 ◇◇「…よし！！じゃ、あたしが…、」 □□「いい！！いい！！連絡しなくていいから！！」 スマホ取り出した彼女を慌てて止める。 きっと盛り上がってる頃…邪魔したくない。

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5 大倉「はい、これ。俺からの誕生日プレゼント♪」 目の前に置かれた華やかなカクテル。 □□「…ありがとうございます…！」 ニコッと笑って違うお客さんのところへ行った。 その姿を見送って◇◇が小声で話す。 ◇◇「大倉さん、ホントかっこいー♡」

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6 □□「錦戸さんじゃなかったの？」 ◇◇「狙ってるのは錦戸さん！大倉さんは目の保養♡錦戸さんはぁ、かっこよくて、かわいくて、優しくて、仕事もできてー…とにかくステキなの！大倉さんはなんか手の届かないアイドルみたい…あの笑顔も仕事って割り切ってそうだからなぁ…。」

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7 それだけ冷静に分析できてるのがスゴイと思います…。 □□「で？錦戸さんとはどうなの？」 ◇◇「まだ〇〇さんのこと吹っ切れてないと思う。あーほら、安田さんともう１人女の人いるでしょ？あの仲良し３人…〇〇さんは安田さんと付き合ってるみたいなんだけどね？」

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8 □□「三角関係…？」 ◇◇「たぶんだけど、錦戸さんはフラれちゃったんだと思う！だから、今はチャンスっちゃーチャンス！がんばるよ！」 なんだろ…たくましいってゆーか、なんてゆーか…。 その時、わたしたちの背後にある、お店のドアが開いて、誰かが入って来た。

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9 大倉「いらっしゃ…あー、来た来た。」 大倉さんの目線を追って、つい振り返ったら、なんとそこにはすばるくん。 ちょっと…いや、だいぶコワイ顔して立ってる…。 ◇◇「あれっ、部長だー！」 □□「すばるくん…どうして？今日…、」 渋谷「おまえ、なんで言わんねん。」

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10 これは…怒られてる？ えっと…もしかしてわたしが誕生日って聞いた？ 渋谷「なんで大倉から聞かされなあかんねん。」 大倉「俺からの２つ目のプレゼントさん、怒ってはるわー。」 ◇◇「せっかくの誕生日なんだから、怒らないでくださいよー！」 渋谷「あー、うっさい！」

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11 どうしよ…すっごい怒ってる…。 渋谷「なんでや？あん時言えたやろ？」 □□「えっと…、」 大倉「言えんかったんやん。誕生日プレゼントとかおねだりするみたいやし、なー？まだ付き合い短いのにさー…乙女心やんかー、わかったってーやー？なー？」 渋谷「・・・・。」

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12 財布を出して大倉さんの前にお金を置くと、わたしの腕を引っ張る彼。 渋谷「来い！」 ◇◇と大倉さんに、片手でごめんとしながら、引っ張られたまま外に出る。 無言で強く腕を引っ張ったまま歩く彼。 謝るしかなくて。 □□「すばるくん…ごめんなさい…。」

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13 すると、その言葉に彼の足が止まった。 ゆっくり振り返ったすばるくんは、さっきと違ってなんだか…悲しそう…？ 渋谷「…俺のせいで言えんかったん？」 □□「えっ…？！」 渋谷「…誕生日…俺と一緒に居りたいて思わんかったん？」 □□「そんなわけないよ！」

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14 □□「思ったから…！だから電話したんだよ…。」 渋谷「・・・・。」 何かを考え込んで、俯く。 □□「…すばるくん…、ごめんなさい。わたし、変な遠慮しちゃった…。お友達とも会って欲しかったし…本当にごめんなさい。」 掴んでいた腕を自分に寄せて抱きしめてくれた。

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15 渋谷「…誕生日は特別やろ。俺確かにイベント事とかは苦手やけど、誕生日ぐらいちゃんとするやん…遠慮なんかすなよ…。おまえが望むんやったら苦手なりにイベント事もちゃんとするから…ちゃんと言うて？」 □□「すばるくん…ありがとう…。じゃあ…言っていい…？」 渋谷「んー？」

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16 □□「今日…一緒に居て欲しいの…。」 渋谷「最初からそう言わんかい！…行くで？」 ちょっと照れた顔して、スタスタ歩きだす。 慌てて後を追いかけて、彼の腕に腕を絡ませた。 渋谷「それ…、 」 □□「だめ？」 渋谷「・・・・今日だけやぞ。」

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17 □□「へへ…♪…すばるくん、どこ行くの？」 渋谷「黙ってついて来い。」 え、教えてくれないの…？ けちぃー…ってふくれてたら、すばるくんが連れて来てくれたのは近くの高級ホテル…えっ、ここ？！ 渋谷「ちょ、待っとれ。」 迷いなく受け付けのカウンターに歩いてく彼。

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18 その背中をボーッと見てると、鍵を受け取ったらしい彼がこっちを見る。 たぶん来いってことだな、と思って近付くと、わたしを待たずにまたスタスタと歩きだす。 エレベーターに乗って上へ。 そのドアが開くと、また先に行く彼を追って着いた、一室。

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19 鍵を開けると、わたしを先に部屋に通してくれた。 □□「…わっ！広～い！きれぇ～…。」 渋谷「そこ座っとき？」 言われた通り、ふっかふかのソファーに座る。 と、部屋のチャイムが鳴ってすばるくんが入り口へ。 黙って待ってると、彼がカートを押して戻ってきた。

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20 渋谷「急やったから、こんなんしかできけど…ん。」 差し出された花束。 □□「…ありがとう…！」 お花に見とれてると、テーブルにケーキとシャンパンが置かれてた。 □□「すばるくん…ありがとう！うれしい！！」 こんなことしてもらえるなんて思ってなかったから余計感激。

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21 グラスを渡されて、それにシャンパンを注いでくれた。 渋谷「お、ローソクも用意してくれとるわ…火つけよか？」 □□「うん！」 それにフーッとして消したら、すばるくんが「お誕生日おめでとう」って言って、グラスを合わせた。 シャンパンもケーキも、すごくおいしい。

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22 それにしても、こーゆーの苦手宣言してた彼が…。 □□「すばるくん…、」 渋谷「んー？」 □□「こんなことよくしてるの？」 渋谷「ぶっ…！」 むせちゃう彼。 渋谷「こんなん、よーせんわ！初めてやーっちゅうねん！」 □□「…そうなんだ…。」 誰の入れ知恵…？

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23 渋谷「…大倉から連絡もろて…とりあえず…急いでなんか用意せなあかん思て…ヨコ…友達に電話して聞いてん…///」 □□「そうだったんだ…！」 渋谷「…気に入らんやった…？」 □□「そんなわけないじゃん！さっき、うれしいって言ったでしょ！ありがとう、すばるくん！」

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24 隣で照れてるすばるくんに、抱きつく。 □□「すばるくんが居てくれるだけで充分だったのに、こんなことまでしてくれて…すごくうれしい♡」 渋谷「…おー…ほんなら良かったけど…。」 そして、ゆっくりと腕を回して抱きしめてくれた。 キスして欲しくて、彼の胸から顔を上げる。

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25 それに気付いて彼もわたしを見る。 見つめると、ニヤニヤして…分かってるくせに何もしてくれない。 □□「んー…。」 渋谷「なに？」 □□「・・・・。」 バレてるのが恥ずかしいけど、“キスしたい”とか言うのは、もっと恥ずかしい…。