マザーウィル泊地　#25

Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

脚部の制御システムは提督から切り離され、アクセス権も特に問題なく接続できた。 あまりうまく動かせない。ここにいるのは先任とも言える最初期からSoMにいる金剛ばかりだ、SoMのEN系統は熟知していた。それでも尚、巨大構造物というものは動かしがたいのだ。 #マザーウィル泊地

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脚部の水位計は未だゆっくりと沈みつつあることを示している。だが、あとはゆっくりと出力を上げていきさえすればどうとでもなる。 ここにきて、やっと最先任金剛に余裕ができた。これから先、どうするかを考える余裕が、だ。 #マザーウィル泊地

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「柱島Harborに連絡はしましたカ？」 「Negative!」 「SoMのCorrespondenceを撃つには近すぎるネー」 「RadioはPowerが足りまセーン」 「Hey!　YouのCanonは飾りデスか!?」 #マザーウィル泊地

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最近はずっとメインシャフトにこもり、戦闘に出ることはあまりなかった。もとより如月のジェネレータ改修で戦力としても最前線には向かない。故に忘れていた。自らの主砲の射程、35450mを。 今のSoMは岩国飛行場南、柱島まで20kmほど。充分届くのだ。 #マザーウィル泊地

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柱島からの増援、いや、正しくはSoM泊地主力艦隊だ。柱島泊地防衛に割かれた温泉艦隊を除いた全戦力が縦一列に並ぶ。 コンテナや艦娘をぶら下げたF21Cも随伴している。あの中には元艦娘、現『普通の女の子』がひしめいているはずだ。 #マザーウィル泊地

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燃料弾薬は支給、これほどの容赦なき火力をつぎ込めば被弾も少ない。正規空母が艦載機を飛ばせばボーキも湯水の如く減るのだろうが、赤城の航空甲板には41cm連装砲が鎮座していた。 加賀を肇とする正気空母や軽空母は惜しみなく艦載機を飛ばすが、消耗は弾薬の比ではない。 #マザーウィル泊地

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Ju87Cが空を埋め尽くす。護衛戦闘機はいない。巨大な虫みたいな艦載機がいるくらいか。 勝利のサイレンが鳴り響き、一斉に1000kg爆弾が落とされる。誰が壊したかわからない敵艦が増えてゆくが、今回の報酬は歩合制ではないため誰も撃破数を数えさえしない。 #マザーウィル泊地

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赤城は空母のはずだった。 しかし水雷戦隊よりも前にいて、弾の尽きた41cm砲で敵艦を殴り、雇った第七駆逐隊に回収させていた。借金王だった赤城ではあったが、最近は牧場の経営で多少の余裕はあった。 「鮮魚店もはじめましょうか」 「これ、売れるの？」 #マザーウィル泊地

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やがて敵艦隊が全て沈むか食糧候補になるかしたあと、SoMへと上がってゆく。 退避していたF21Cも甲板にコンテナを降ろして無事着艦していた。 泊地所属艦隊の損害はほぼ皆無と言っていいだろう。 「加賀さん。その矢でこれをシメられませんか？」 「殺ってみます」 #マザーウィル泊地

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敵さえいなければ平穏極まりない。 空母共はSoMの制御には向かないため、今回の仕事はここまでだ。どこにあったのか七輪に火をつけ、龍田の捌いたイ級の切り身を焼いている。 「お腹壊しても知らないからぁ」 「正露丸と技師がいます。大丈夫です」 #マザーウィル泊地

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島一つに住んでいたイカれ艦娘の群が移住しようとも、SoMの沈みを加減するほどの質量にはならない。 メインシャフトも簡素な修理で済み、防衛に割いていた金剛は皆メインシャフトに引っ込んだ。 鎮守府防衛という依頼で働かせている。 #マザーウィル泊地

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資源なくして艦娘は動けない。 また、通貨経済は「生き残れる艦娘」の選定としても有効だった。今や、SoM泊地の艦娘は金さえ出せば相応分は働く存在と化しており、借金王として名高い大型艦共はまさに切り札であった。 #マザーウィル泊地

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如月が甲板を引き連れて帰ってきた。 SoM整備のドサクサに紛れてしばらく野放しにされていたが、戻ってくるとは。SoMは如月共の檻でもあると大淀は思っていた。 どこでどんな非道なことをしていようと知ったことではないのだが。 #マザーウィル泊地

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「珍しいわねぇ、司令官さんのお出迎えがないなんて」 「戦艦のエスコートがないのも寂しいわねぇ」 実に呑気なものだ。かつて日常的に行方不明になっては泊地総出で捜索していた頃は戦艦共に主砲を突きつけられながら帰ってきていたと聞く。 #マザーウィル泊地

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「SoMが沈んでいるようだけど」 「提督が原因不明のエラーで止まっていて制御不能です」 「人格の再構成に失敗したのね。長門さんはソフトが苦手だから仕方ないわね」 #マザーウィル泊地

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「金剛さん達が作業記録を見ていますが、たった一人で、手動制御でどうにかしていたようです」 「司令官さんが不在なら、ここまで保たせてくれたことを褒めるべきよね」 「SoM内回線網もあまり使えないので、1時間前の情報ですが……稼動状態は3割です」 #マザーウィル泊地

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「あんまり良くない数字ね。ちょっと司令官さんを起こしに行きましょう」 「えっ」 すたすたと去ってゆく。マザーウィル、メインシャフトの方へ。 「提督を再起動できるんですか？」 「過去何度もあったことよ。やり方は覚えているわ」 #マザーウィル泊地

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インターネサイン。 由来も不明な、提督の本体。 「そもそも司令官さんの意識は一つではないの。あ、司令官さんの制御下にないから近づいちゃダメよ。取り込まれてしまうわ」 大淀は一時考える素振りを見せ 「取り込まれた人の意志が？」 「話が早くて楽ね」 #マザーウィル泊地

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インターネサインより少しばかり離れたコンソールエリアで、如月はまず金庫を開けた。 「機械化された意志なんて言っても、結局は複雑なだけのプログラムなのよ。いろいろ説明のできないことも多いけど、とりあえず解決できるからそう考えるといいわ」 「なぜそれを私に？」 #マザーウィル泊地

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「政治的な事に私は興味ないけれど、SoMと司令官さんが危ないのはよく知ってるわ」 金庫が開き、紙束とディスクが大淀に渡された。 「金庫の番号は19821218よ。持ってていいけど、読んだらここに戻しておいてね」 #マザーウィル泊地

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簡易マニュアルと表紙には記されていた。 本当に簡易マニュアルなのだろう、それはレポート用紙に手書きであった。 一枚めくると目次があったが、清書はされておらず鉛筆と何度も消しゴムをかけられた跡があった。 「大丈夫なんですか？」 「正規マニュアルなんてないのよ」 #マザーウィル泊地

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大淀は耳を疑った。兵器にはどんなものでも説明書がつく。整備の方法、正しい使い方、性能諸元など。直接、間接を問わず膨大なエネルギーを扱うのだ、慎重かつ正しく使わなければならない。 「SoMは発掘されたものなの。現行人類の技術では作れないもの」 #マザーウィル泊地