- Wong_Shao_Lung
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暗闇の室内。明滅するUNIXモニタだけがその光を保っていた。ちらちらと入るノイズはこの室内の無線LAN接続状況が決して良好でないことを示していた。ザザザ。ピコピピピロローン。不愉快に歪んだメッセージ到着音が男を覚醒させる。男はフートンの横にある無線端末を無造作に操作した。 1
2015-05-05 12:37:53キャバァーン!男がメッセージを開くと、黄色い惑星めいたエンブレムがくるくると回り、黒い背景が白へと変化していく。男は突然増した光量に鬱陶しそうに目を細めると、その暗黒メガコーポのロゴを認めた。オーメル・カガク・ギジュツ。技術力と、その政治力で鳴らしたオバケ・オオキイ企業。 2
2015-05-05 12:38:50男…リンクススレイヤーは手元のコジマ・カクテルの空き瓶を忌々しくゴミ箱に放ると、ようやくフートンから身体を起こした。端末はメッセージの確認を促すようにチカチカと点滅を繰り返している。(((グググ…どうした。依頼だぞ)))(((黙れセレン)))邪悪なオペレーターの声を制す。 3
2015-05-05 12:40:01リンクススレイヤーはモニタのタッチパネルを操作し、依頼受諾画面を開いた。欺瞞めいたオーメル・カガク・ギジュツの企業ロゴが消え、 「作戦概要説明な」のミンチョ体が浮かび上がる。「ドーモ。カラードマーセナリー=サン。アディ・ネイサンです」声色の端に嘲りの色を隠そうともしない声! 4
2015-05-05 12:40:42「ドーモ。アディ・ネイサン=サン。カラードマーセナリーです」向こうにいかな意図があれ、向けられたアイサツは返さねばならぬ。傭兵とはいえ、奥ゆかしさを失っては生きてゆかれぬのだ。だが神経質そうな声色の男は通信の奥で露骨に鼻を鳴らした。シツレイ! 5
2015-05-05 12:41:40「ミッションを説明しましょう」アディが言った。「依頼主はオーメル・カガク・ギジュツ社。目標はベルナルドサン・アンド・フェリクスサン財団の主力ブキ・ベース、タマシイ・オブ・母ますの排除となります」 6
2015-05-05 12:42:44「システム総じ緑な」「コジマ粉充填状況確認重点!」オーメル・カガク・ギジュツの擁する発射ベースに、凍結されたモーターネクスト・ストレイドが運び込まれてから、技術サラリマンの動きは著しく慌ただしくなっていた。無理もない、一大作戦が始まろうとしているのだ。 8
2015-05-05 12:44:17(((オーメルの小細工に頼らねばならぬとは、実際嘆かわしい!私に任せておれば、あのようなもの、鉄クズにかえてやるというに)))リンクススレイヤーに宿る邪悪なオペレーターソウルは呆れ半分に語りかけてくる。リンクススレイヤーはそれを黙殺した。シリエジオでは火力が足りない。 9
2015-05-05 12:45:23「ヤバイ級推進装置センクシャ、準備ヨロシ」「モーターネクスト解凍措置ハジメ!」「ハイヨロコンデー」「危険!」屋外では、耐重コジマ粉末装備を施した奴隷エンジニアが危険な作業を進めている。モーターネクストの動力・あるいは防御システムを構築するコジマ粉末は致死性の猛毒なのだ。 10
2015-05-05 12:46:54リンクススレイヤーは己のAMS適正力を体内で練り直した。「オーメルのカガク・ギジュツ」「レイレナードとは実際無関係」「悪い選択ではない」などのショドーが視界から融けるように滲み、ヘイキンテキが高まってゆく。今日殺すのはリンクスではない。しかし、それらはもはや無関係だ。 11
2015-05-05 12:48:20(((リンクス殺すべし。リンクスを飼う企業もまた、私の敵)))利用し、準備し、滅ぼす。そのために別の企業の協力を仰ぐこともあるだろう。だが、いずれオーメルも滅ぼす。オーメルのリンクス、オッツダルヴァ。ヤツもまた、時が来れば殺す。殺気とともにAMS適正が高まっていく。 12
2015-05-05 12:50:18「あのう、そろそろ準備を……アイエエエ!」ネクストへの搭乗を促しに入室したサラリマンが失禁しながら転げ回った。充満したAMS適正力をマトモにその身に受けたのだ。リンクスリアリティ・ショックを受けても無理はない。リンクススレイヤーは静かに殺気を鎮め、チャを飲んだ。 13
2015-05-05 12:51:20リンクススレイヤーはじわりと己のAMS適正力を解き放った。耐Gリンクス装束と耐Gメンポが形成され、その身を覆う。耐Gメンポに刻まれた「猫」「殺」の威圧的ショドーが揺らめく。「アイエエエ!アイエエエ……!」サラリマンが更なるLRSを発症し痙攣!ナムアミダブツ! 14
2015-05-05 12:52:25リンクス装束となったリンクススレイヤーは解凍処理を施されたモーターネクストの搭乗口へと向かう。赤黒のアリーヤが光を受けて心地よさげに佇んでいる。リンクススレイヤーがコクピットに乗り込むと搭乗フスマが閉められ、慌てて奴隷エンジニアの退避が始まる。首筋のAMSジャックに触れた。 15
2015-05-05 12:53:15AMSジャックにLANケーブルを接続し、リンクススレイヤーはAMSシステムをオンに切り替えた。同時に管制室からネクスト起動キーがタイプされ、ネクストが静かに駆動音を響かせる。「アババーッ!?」逃げ後れた奴隷エンジニアが汚染死!「モーターネクスト・ストレイド、AMS作動!」 16
2015-05-05 12:54:14「AMS作動……グワーッ重力!」ナムサン!AMSジャックからニューロンに、とてつもない重量のデータが流れ込んだ!リンクススレイヤーを怯ませるほどの機体負荷情報はまるで現実のようにリンクススレイヤーを苛む!まるで背中にソルディオスを背負ったがごとき苦痛!カラダニキヲツケテネ! 17
2015-05-05 12:56:07「重量過多ドスエ」合成マイコ音声が既知の不具合を喧伝!ウルサイ!「アー、アー」管制室から暢気にマイクテストをするような通信が入る!その声色はアディ・ネイサンだ。「スミマセン、AMS機体情報にヤバイ級推進装置センクシャの情報を入力し忘れてました。担当者をケジメさせます」 18
2015-05-05 12:57:50「非リンクスのカスめ!傭兵は体のいい捨て駒か!」突然鳴り響くジゴクめいた通信!リンクススレイヤーに宿る邪悪なオペレーター、セレン・キリの声だ!「アイエエ!すみません!セプク!セプクさせます!キミィ!」アディは隣に立つカカリチョを指差した。「アイエエ……ヨロコンデー」 19
2015-05-05 12:59:26セプクして果てたカカリチョを横目に見ながらタイプするオペレートサラリマンによってストレイドの機体情報が書き換えられ、リンクススレイヤーのニューロンにかかる重量情報は取り払われた。「この借りは高くついたぞ、オーメル=サン。後でゆっくり話をするからな」「ドーモ、お手柔らかに…」 20
2015-05-05 13:01:03(((セレン!もうよい、出撃する!オペレートせよ!)))(((グググ……ウカツなリンクススレイヤーよ。私の対応にカンシャし、私に機体を預けよ。まずはオーメルのクズどもを。しかるのちにBFFの鉄くずを始末してくれる)))ジゴクめいて笑うオペレーターを意思で押さえつけた。 21
2015-05-05 13:02:18「ヤバイ級推進装置センクシャ、点火準備ヨロシ」「コジマ粉末ヨロイ、射出より4秒後に展開な」「スシ補給機構総じ緑」そうしている間に全ての準備は整い、あとはリンクススレイヤーがヤバイ級推進装置センクシャに点火すれば、作戦開始だ。「予定時間4分超過」「ストレイド、射出!」 22
2015-05-05 13:03:32(ARMORED CORE for ANSWER CHAPTER1より:「ディスインテグレイション・オブ・マザーウィル・スピリット」 # 1終わり。# 2に続く)
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