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【魔法少女まどか☆マギカSS】オフィーリア

叛逆後世界で杏子が魔女パワーに目覚めて悪魔と共闘する話。
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GammaRay @sizuoka074

杏子は輝きの中を数秒落下し、馬の力強い嘶きを聞いた。グランドファーザー、洗礼を施す大いなる父。杏子の心を守る信仰そのものの名を取った、大理石の肌を持つ馬は、高々と前足を掲げたあとで、まっしぐらに闇の中を駆け抜けていく。

2015-05-16 22:00:21
GammaRay @sizuoka074

蹄の音をかき鳴らし、オフィーリアは、杏子は疾走した。どこまでもどこまでも、限りなく深い絶望と呪いの闇を、諦観の魔女は走破する。『杏子……』「そこか!!」馬上の杏子が槍を逆手に持ち替えて、背をしならせ、闇を睨む。「見えるかほむら!」杏子は叫んだ。「ローンレンジャーが助けに来たぜ!」

2015-05-16 22:07:38
GammaRay @sizuoka074

杏子の投げ放った渾身の槍は、円環と現世の次元の容易く貫き、ほむらの頭上百メートルで数千万度の炎に変わった。唸りを上げて落下するビルは破片も残さず蒸発し、有り余った熱エネルギーは上空の雨雲を打ち消した。 「待たせたな、このポンコツ野郎」杏子は馬上でキザに笑った。

2015-05-16 22:12:33
GammaRay @sizuoka074

「杏子、あなた……」ハッとした表情のほむらが何かを言いかけ、「『あなたは私のヒーローよ!』なら聞き飽きてるぜ、お嬢さん」「…………本当に来るのが遅いのよ、このクソ女」むっとした顔で、口をへの字に結び直す。杏子はげらげらとそれを笑った。

2015-05-16 22:15:21
GammaRay @sizuoka074

「くたばってまでお前の泣き言を聞かされちゃいたが、生きて帰ってこれってのもな!」「黙りなさい。あなたが最初から私の話を聞く姿勢を見せてれば、そもそもこんなことにはなってないのよ」「聞かなきゃ話そうともしねえネクラが図太さだけは一丁前に」「なら話せば聞いたわけ?」

2015-05-16 22:18:32
GammaRay @sizuoka074

にわかに真剣みを帯びたほむらの言葉に、ほんのわずかな間を置いて、杏子は片眉を上げて応えた。「イービーカエさ(あったりめえよ)」ほむらの表情がひどく歪み、元に戻ろうと試みたあと、結局失敗して顔を逸らした。「あのまま死ねばよかったのよ」すん、と鼻を鳴らす音がした。

2015-05-16 22:22:53
GammaRay @sizuoka074

杏子はふっと笑い、上空にいる嵐の魔女を見た。「あんたに殺されてやるのはいいが、まずはアレを締め上げないとな」ほむらはなんとかいつもの顔に戻った。「なにか良い作戦でも?」「ああ」杏子は晴れ晴れとした顔で言った。「んなもんないけど、なんとかなるだろ。あたしとあんたならどうとでもよ」

2015-05-16 22:26:40
GammaRay @sizuoka074

● 「これで終わりだとは思わないでね」 嵐の過ぎ去った緑の丘で、さやかは忌々しげに吐き捨てた。 「あたし達はどこにでもいる。時間はいくらだってある。あんた達のやってることは所詮無駄なあがきだよ」 「ほざいてろってんだ負け犬野郎」余裕たっぷりの杏子の悪態に、さやかは不快な顔をした

2015-05-16 22:30:41
GammaRay @sizuoka074

「杏子、いい気にならないで。あんたのそれは呪いの力だ。人間の手には扱えない。そんな力に頼ったことを、あんたは必ず後悔するよ」「後悔なんてあるわけない」杏子がさやかの目を見て言い、「……って、言えたらよかったんだが、あたしも結構半端だからなあ……」ぼりぼりと後頭部を掻く。

2015-05-16 22:36:47
GammaRay @sizuoka074

「だけどどんだけ後悔しようと、あたしは二度と諦めない。一度始めちまったことに対して、イモを引くのはごめんだからな」「…たとえ結果が見えてても、あんたは同じことが言えるの?」「あたし達は神さまじゃない。悪魔でもない。人間だ。先のことなんてわかりゃしないさ」「あたし達は」

2015-05-16 22:41:38
GammaRay @sizuoka074

「あたしの持ってるこの力は、人を幸せにすることだってできるはずだ」「――ッ!」今度こそ言葉に詰まるさやかだったが、杏子は怪訝な顔をしただけだった。「あんたもいつか助けてやるさ」「……あたしを?」「ああ。ゲイでサディストのファッキンゴッドは、あんたの飼い主にゃ相応しくねえ」

2015-05-16 22:47:50
GammaRay @sizuoka074

ほむらが小さく吹き出した。「あんたと一つになったときにわかった。あんたはあいつらとは一緒じゃあない。あたしの知ってるウスノロは、まだあいつらの中に残ってる」「…………」「必ずあんたを助けてやる」さやかは顔を伏せ、踵を返した。

2015-05-16 22:50:32
GammaRay @sizuoka074

強風が吹き、二人がわずかに目を閉じると、そこには小さな水たまりが残っているだけだった。「たいした啖呵を切ったものね」ほむらが茶化すように言うと、杏子が肩をすくめた。「さすがにゲイのサディストは言い過ぎだったか」「いえ、神さまはレズビアンのサディストよ。寝たことがあるから保証する」

2015-05-16 22:53:19
GammaRay @sizuoka074

普段の杏子なら爆笑だったが、彼女は顔を青くした、「最悪のことを思い出した」「なに?」ほむらは興味本位で聞き、「マミとヤる途中で逃げてきたんだ」声を上げて大笑いした。「苦労するわね、あなたも。まったく」「替わってくれるやつを募集してるよ」

2015-05-16 22:56:20
GammaRay @sizuoka074

「考えておくわ。今後のことも含めてね」ひとしきり笑ったほむらが遠くを見ると、薄紫色の地平線に朝日が昇るところが見えた。「オフィーリアが目覚めた今、『円環の理』の行動は激しさを増していくはずよ」丘に無造作に置かれていた椅子を、ほむらは蹴飛ばし、崖から落とした。

2015-05-16 23:00:29
GammaRay @sizuoka074

そこらの草むらからほむらの使い魔達がちょこちょこと姿を表し、杏子にまとわりつこうとする。杏子は子供達の頭を撫でた。「何度来てもぶちのめしてやるさ」「頼もしいわね。諦観の魔女の言葉とは思えない」「……ああ、それなんだけどなあ」杏子はなんともいえない顔をした。

2015-05-16 23:03:13
GammaRay @sizuoka074

「その名前、縁起が悪いしよくないぜ」「『諦観の魔女』?他に候補でもあるかしら」「ああ、もっといいのを思いついた。『あいつ』も大喜びで賛成してたさ」「なるほど。聞かせてもらえるかしら」「そいつはな――」杏子は朝日に目を細めた。

2015-05-16 23:06:54
GammaRay @sizuoka074

あたしは佐倉杏子。 神の見捨てたこの世界で、暗闇を照らす光を捧げる。愛と、勇気と、希望の魔女だ。

2015-05-16 23:20:39
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