自分用:フリーライター(主にヤクザ方面)鈴木智彦さんが「囀る鳥は羽ばたかない」(ヨネダコウ著)を語る

「囀る鳥は羽ばたかない」(ヨネダコウ著)3巻は2015年6月1日発売 ヨネダコウnote https://note.mu/yoneco 新刊購入特典情報(ヨネダコウ商業情報ブログ) 続きを読む
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鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

拳銃を持っている人間なぞ日本では警察や麻取(ヨネダさんんも『NightS』で取り上げている)や自衛隊しかいない。それらはすべて公務員、権力側の人間で、ヤクザだけが民間人…おまけに明確に反社会的です。つまりヤクザ設定はそれだけで舞台が異常になり、立ち位置を非日常的に転換させます。

2015-05-20 07:16:00
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

これじゃあヤクザ物語の考察みたいだな。ちょいと脱線多めになるかもですが、俺は本来ヤクザクラスタ所属なのでご寛恕を。頭煮えてるかもです。すまん。

2015-05-20 07:18:23
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

書き手だと『凶健』や『広島ヤクザ伝』を執筆した本堂淳一郎(柳橋)さんが公募小説の下読みをしてた。話しを聞くと多くの作品にヤクザが、安直に登場するらしい。非日常狙いです。ちなみに柳橋さんは双葉の出身で麻雀放浪記の阿佐田哲也の担当です。同窓の猪野健二さんとは犬猿の仲でした。余談です。

2015-05-20 07:19:17
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

話を戻そう…一般人には伺い知れない非日常世界で、ヤクザは生存を懸けて殺し合う。ヤクザは殺してなんぼです。現実社会でも殺さない・殺されないヤクザに存在価値はない。断言していい。言い換えると舞台が異常で、登場人物もキチガイなので「クサいセリフがばっちりはまる」ということを意味します。

2015-05-20 07:22:46
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

俺が取材したある九州ヤクザの組長は、抗争で自分が銃殺した対立組織の親分の息子を引き取り、養子にして育てます。二十歳の誕生日、組長は息子を実の父親の墓前に連れ出し、その時使った拳銃を渡した後、「お前の親父を殺したのは俺だ。これで撃った。お前には俺を殺す権利がある」と告白します。

2015-05-20 07:23:49
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

突飛すぎますよね。狂ってる。でも殺った・殺られたという世界に生きているヤクザだから、この言い分は当人の中で正当なんです。舞台が異常という前提を受け入れれば、この自己陶酔は他人の胆にも落ちる。凄みも感じる。一般の社会で生きる我々がキチガイになり得る瞬間はなにか。それは恋愛でしょう。

2015-05-20 07:25:43
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

人間がキチガイになる瞬間は、クサいセリフがびしっときまります。ヤクザと色恋をこんな形でミックスした物語は、既存の、つまりノーマルな恋愛・セックス感ではあり得なかった。ヤクザ劇は量産されすぎ、マンネリの極地です。今年だけでも沢山のヤクザ(を題材にした)映画が公開されています。

2015-05-20 07:27:30
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

新しいヤクザ映画は違いを出そうと力んでいます。俺の感性が錆び付いてる自覚あるけど『龍三と7人の子分たち』が限度でした。そのいずれより『囀る~』は新しかった。いずれ一般作品も『囀る』の要素を取り込んでくると思います。そんなにうまくは出来ないでしょうが、未踏の地はここしかない。

2015-05-20 07:32:12
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

@watchman0211 最初はほんまかいな?と思ってしまいました。映画の見過ぎだろう、と。

2015-05-20 07:33:09
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

俺は既存のヤクザ劇に挿入された恋バナが嫌いです。女はスパイス程度でいい。姐さんと、恋人と、ホステスと恋に落ちたヤクザの描写は、取って付けたようなぎこちなさが拭えない。極悪人のストーリーで、そこだけ人間らしく愛を唱えてどうすんだとも思う。むりくり入れ込むから本編のテンポも狂う。

2015-05-20 07:36:22
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

ヤクザはいびつに歪んだ男社会です。本来、女の出る幕はない。主軸は親と子、兄貴と舎弟(または五分)の盃…疑似血縁関係です。そして親分は絶対的な存在、神に等しい。でも親分の女房は姐さんと呼びおふくろではない。盃もありません。正妻と2号は同じ姐さんで、子分や舎弟からみると同列です。

2015-05-20 07:38:02
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

ヤクザの日常に女の役割はゼロです。組事務所には男しかいないし、抗争でも女を狙うことはないし、彼らが別荘や大学と呼ぶ刑務所にも女はいない。現実に姐さんの出来不出来は、ヤクザの出世に関わる一大事なんですが、映画・極妻のように「あほんだら、撃てるもんなら、撃ってみぃ」はあり得えません。

2015-05-20 07:39:23
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

だからヤクザ劇には、基本的に色恋の話がうまくはまらないんです。どうしてもとってつけたサイドストーリーになる。ヤクザに話が寄りすぎかも。いったりきたりで申し訳ない。まぁいい。早く三巻届かないかな。仕事に影響しますねぇ。ほんと。連投すると原稿が140字の段落続きになっちゃうし。

2015-05-20 07:41:39
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

もちろん『囀る鳥は羽ばたかない』はBLで、恋とセックスがメイン・ディッシュです。ヤクザ要素はあくまでパセリでしかない。ヤクザ劇の「後付け感満載な恋バナ」が嫌いな俺は、『囀る~』をスルリと読みました。あれ?なんだ?理由がよく分からなくて、俺はもしかしてホモなのかと疑ったほどです。

2015-05-20 07:44:25
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

度重なる脱線を反省し、俺のホモ体験は後述するとして、『囀る~』のヤクザ濃度が薄いからではなさそうでした。読み返してもそれがおまけにしか過ぎないBLの中で、見事な現代ヤクザ物語になっている。おかしな部分はあります。でもそれは一般のマンガも同じだし、フィクションではナンセンスです。

2015-05-20 07:45:54
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

基本に立ち返ると違うのは恋愛対象が女か、男かの一点です。一般的なヤクザ劇と『囀る~』はそこが決定的に違う。でも言い返せばそこだけしか違わない。物語の肉付けは一般社会のそれだし、細部はリアルに現代ヤクザです。物語のたった一要素を裏返しにするだけで、物語が劇的に変わる。想像以上に。

2015-05-20 07:48:36
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

今までなぜ気付かなかったのか悔しかった。本来、「男と女」にある恋愛とセックスを、「男と男」に置き換えるだけなのに。でも一般の常識から外れるのはそこだけで、先の展開は男と女のそれから外れない。ノーマルの俺が『囀る~』を読めた一因でもあります。たとえばこんな場面が分かりやすい。

2015-05-20 07:50:08
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

「ここにいるヤツら何人分咥え込んだかも憶えてねぇんだろ」 「もう5人しかいねえよ、竜崎ィ」 「てめ…」 「そんなに俺の下半身が忘れられないならよ…いつでも来な?ご自慢の真珠入り、ケツの穴空にして待ってっから…な?」 「いつまでもそこにいられると思うなよ。雌が!」(一巻第三話)

2015-05-20 07:50:54
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

雌が!というセリフは明らかに侮蔑の響きを持っている。ヤクザは男社会なので、女は格下ということでしょう。調べてみると男と男のセックスでも(ゲイでも)、どうやら挿れられる側が女のような位置になるらしい。は、もう8時じゃん。でも今日はもうちょっと書くか。

2015-05-20 07:55:16
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

『囀る鳥は羽ばたかない』の中で、1巻の第3話は、世界観を理解する上でとても重要なパートです。前記のシーンはカタギだった頃、主人公の矢代が連れ込まれ、何人もの男に輪姦された事務所を、嫌がらせとして再訪させられる場面になります。竜崎は矢代を犯したひとりで、続くシーンも象徴的でした。

2015-05-20 07:56:50
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

「松原組の奴ら、いつでも締め上げる準備出来てますから。奴らにどっちが上か分からせる良い機会です。武闘派だろうが知ったこっちゃないです」 「やめとけ、あれは個人的なもんだろ」 「関係ないです。頭のメンツは俺らのメンツですから」 「俺のメンツがいつ潰れたって?言ってみろ七原」(3話)

2015-05-20 07:57:58
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

引用したシーンをみてわかると思います。前述したように男と男のそれあっても、セックスでの関係性は挿れる側が攻め、従属させる側です。挿れられる側が女性、受けで従属する側です。わかりやすくいうと、犯すのは凸の側で、犯されるのは凹なんです。ここに新たな価値観は登場しない。ちょい乱暴かも。

2015-05-20 08:04:00
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

だから道心会(一次)真誠会(二次)では平田がトップの親分で、矢代以下、すべての組員は平田と盃を結び直した若い衆、もしくは舎弟に当たるはず。でも『囀る~』ではそのあたりの事情が不明瞭です。ディティールは不要だからでしょう。でも皮肉なことに、ヨネダさんはヤクザ劇を描き込んでいった。

2015-05-20 08:08:00
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

漫画家のインタビューでみるように、キャラが勝手に走ったのかもしれない。想像するしかありません。本来、編集サイドからすれば、BL愛好家のニーズを満たすことが第一のはず。でも2巻の第7話から、話の主軸は抗争です。ここもよかった。BL愛好家の萌え要素をすべ共感できる感性は俺にない。

2015-05-20 08:12:49
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