黒い鶴と椿の花

刀剣乱舞二次創作。 オリジナル審神者(男)×鶴丸です。 あらかじめご了承ください。
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gude2hiro @gude2hiro

夜中、衣擦れの音と微かな声に目を醒ます。声を出すな、誰か起きたらどうする。主の声がいつもより熱を帯びている。別に悪事を働いているわけでもあるまい。応える声に眠気が一気に飛んだ。何故、彼らが。ふ、と艶やかに笑う声。ああ、彼は僕が起きたことを察したのだ。

2015-03-28 22:24:36
gude2hiro @gude2hiro

誘いをかけても主は乗らない。ならばと一週間程添い寝だけを試みた。君のやることは理解出来ぬと同室の大太刀はぼやいていたが、他言はしなかったようだ。まるで壊れ物を扱うように優しく、武骨な手が頭を撫でてくるのは心地好かった。主よ、本当は誰の頭を撫でたいのだ。問う代わりに腕を掴む。

2015-03-28 22:28:36
gude2hiro @gude2hiro

腕を掴まれ引き寄せられる。鶴の名を持つ太刀は艶やかに黄金色の瞳を煌めかせていた。狸寝入りか。いや俺は鶴だ。馬鹿なことを。主は何も言わぬな。ならば何も問わぬ。暇潰しと思えば良い。…暇潰しか。時間は無限にあるのだ。刀の化身はそう言って唇を重ねてくる。髭が痛いとぼやきながら。

2015-03-28 23:21:41
gude2hiro @gude2hiro

俯せに組み伏せられ、耳を食まれる。堪えきれず声を上げると指を口に含まされた。上も下も塞がれ、熱を帯びて体は悶える。まるで獣の交わりだ。指を舐めてぼやくと、睦言が欲しいならもうここに来るなと耳元で囁かれた。返事の代わりに指を噛むと呻かれた。そんなもの、最初から期待などしていないさ。

2015-03-30 21:59:23
gude2hiro @gude2hiro

鶴の名を持つ刀は、肌も新雪の様だった。これがお前の望みか倶利伽羅。驚きだ。組み敷かれてもなお、余裕たっぷりの笑顔。爪先を口に含むと、艶やかな吐息が漏れる。憎らしい筈なのに、目を背けることが出来ず歯を立てる。好きなだけ貪れ。誘う月の様に金色の瞳が妖しく光る。 #同題刀剣SS #刀刀

2015-04-04 22:59:37
gude2hiro @gude2hiro

睦言などいらない。元より人の形を借りている我が身に人と同じものを求めるなど愚かしい。体は交わせど情は交わさぬ。夜中主の魘された声に起こされ、そっと頬を撫でる。過去を、己を語らぬ無口な主が、目を閉じたままささやいた。姫様。愛しげな声がちくりと胸を刺す。#同題刀剣SS #男刀/針

2015-04-06 20:10:36
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 頬を撫でる手の感触に目を醒ます。魘されていたぞ、怖い夢でも見たか。月と同じ色の瞳は冷めきっている。…分からん。ほう。首に回された腕に引き寄せられ唇を重ねられる。では俺を抱くことに支障はないな。何時だと思っている。俺も忘れたいことがあるのだ主。良いだろう?

2015-04-06 22:01:07
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 馬鹿か…眠りにつく前に散々。事情が変わった。あっさり言い切った鶴は、首筋に噛みついてくる。痛みに顔をしかめ睨むと、睨み返される。出陣の時と同じ目だと気付いた時に再度噛みつかれた。痛みを刺激に。刺激を糧に。この男の信条そのもの。繊細な外見と反する生き様。

2015-04-06 22:08:41
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro そんな所に噛み跡をつけるな。尚も噛もうとするのを止めると子供の様に不満げな顔をする。ただでさえ素知らぬ顔を必死でしている光忠が気の毒だ。俺の言葉に鶴は面白いと笑う。では俺を抱け主。だから今夜は。針が刺さって痛い。何?こんな痛みはいらんのだ。

2015-04-06 22:23:16
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 針?そんなものどこに。…どこかは俺にも分からぬ。いいから、早く。いつもと異なるねだり方に、思わず頭を撫でる。優しくしなくて良い、いつも通りで。まるで俺がお前に強いているかの様な言い方だな。言いかけてやめる。結局関係を続けることを選んでいるのは俺自身だ。

2015-04-06 22:35:54
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 押し切られる様に交わった時罪悪感と同時に安らぎもあった。美しい女主人も、その婚約者も、この戦いの日々も、忘れることが出来た。己が呼び出した付喪神に何をさせているのか。迷いや罪の意識を、鶴の名を持つ刀は下らないと斬り捨てる。心が死ぬより良いではないか、と。

2015-04-06 22:41:54
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 丁寧だが心のない愛撫に人の体は熱を帯びる。心など、睦言などいらない。望んでなどいない。退屈で心が死ぬより刺激が良い。太い腕に優しく抱えられ、貫かれると声が漏れる。揺さぶられ引き寄せられ、唇を重ねる。消えろと願っていた痛みが何故か激しくなる。いらないのに。

2015-04-06 22:48:10
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 自分を主は躊躇いなく抱いた。丁寧に、それでいて慈しみなど欠片もない抱き方は今も変わらない。だから分かる。きっと主は「姫様」に指一本触れなかったろう。心のみ捧げたのだろう。武骨なこの男らしい。愉悦に浮かされ、何度も口づけを交わす。体はこんなに近いのに。

2015-04-06 23:54:33
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 針のようにささやかだった筈の痛みは愉悦に比例して激しくなる。堪えきれず背中に爪を立てると褒美だと言わんばかりに深く貫かれた。首を噛まれたのは仕返しか。されるがまま、ただ溺れる。心などいらぬ。そんなものは人間同士捧げ合えばいいのだ。だが、それ以外の全てを。

2015-04-07 00:12:37
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 傍らで寝息をたてる鶴の頭を撫でる。首につけてしまった痕が赤く染まっていた。装束で隠れるだろうが。すがるように求められ、それでも優しさはいらないと言う。睦言も、情もいらぬと。俺はそれを利用しているのだと自嘲する。酷い生き様だと自覚はしている。

2015-04-07 00:23:47
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro 鶴。閨での呼び方で彼に声をかけると、しかめ面で睨まれた。部屋に戻れ、光忠が起きる。別に構わん、見られたところで。いいから自室で寝ろ、今日は出陣はない。…主。ん?真名は何と言う。…捨てた。俺は仮にも神ぞ?捧げてみてはどうだ。お前のようなふざけた神がいるか。

2015-04-07 00:31:27
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro そもそも神と言うならば、ご自身で見破られては如何かな、鶴丸殿。ふん。月と同じ色の瞳が楽しげに笑う。俺と同じ鳥が関係しているだろう。…適当なことを。本気でそう思ったんだがな。ではまた夜に。寝間着の乱れを直すと鶴丸はさっさと部屋を出ていく。

2015-04-07 00:37:25
gude2hiro @gude2hiro

@gude2hiro ここのところ毎晩だな。石切からそろそろ何か言われるかもしれない。思いつつ、訪れてくるのを待っている自分がいるのも確かだ。刺さったという針は抜けたのだろうか。真名を捧げれば俺が食われるのだろうか。白くなり始めた月は何も語らない。〈終〉

2015-04-07 00:40:49
gude2hiro @gude2hiro

出陣の際主は必ず共に行く。何処であろうと僕達だけを出すということはない。戦場は慣れている。煙草を燻らせ、笑う。小夜はいざという時に主をお守りするのですよ。兄や石切丸から再三言い渡されているので僕は常に主の話し相手になる。主の戦いはどんなだったの。何、こことさほど変わらぬさ。

2015-04-07 22:14:40
gude2hiro @gude2hiro

けれど、主は刃物を使わない。俺は銃が専門でな。でも包丁は上手だ。はは、料理は必要に迫られてやっていただけだ。いつも美味しい。そうか、良かった。大きな手は僕の頭を優しく撫でる。穏やかで、普段は無口な主は、それでも復讐や憎しみの心を失ってもいない。貴方は不思議な人だ。いつも思う。

2015-04-07 22:24:20
gude2hiro @gude2hiro

人は復讐や憎しみを抱くと壊れて狂うものだ。救われぬと分かっていても戻れぬ道を突き進んでしまうものだ。小夜。思考は硬い声で中断される。加勢に行ってやれ。…え?鯰尾が兵装を飛ばされた、あのままではまずい。何処で…辰の方角だ、急いでやれ。主、見えるの。目だけは良いと昔誉められた。

2015-04-07 22:36:18
gude2hiro @gude2hiro

小夜!たぬきの声に応じる前に短刀を振りかざす。厚樫山はある程度深く入ると敵の強さが格段に上がる。丁度良いところに来たじゃないか。笑う鶴丸の装束は破れ、所々赤く染まっていた。主が行けって。僕の言葉に皆顔をしかめる。主、そんなに近くにいるの。ううん、でも見えるからって。

2015-04-07 22:41:02
gude2hiro @gude2hiro

主の所に皆で戻る道すがら、鯰尾はますます顔をしかめた。ねえ、結構離れてるよね?しかも木が多いよ?でも僕の兵装が飛ばされたって言ったんだよね?どんな目してるの、主は。僕に聞かれても。だって小夜が一番主と一緒にいるだろ。そんなことはない、言いかけて口をつぐむ。鶴丸は素知らぬ顔だ。

2015-04-07 22:44:38
gude2hiro @gude2hiro

主と合流すると、ご苦労だったと頭を撫でられた。撤退するぞ。部隊長の鶴丸は不満げな顔をする。ここまで来たのに?帰ればまた来れる。つまらん。…ほう。片肌脱げた鶴丸を見て主の目の色が変わる。何故かたぬきと鯰尾がびくりと震えた。小夜、先に戻り、手入れ部屋の準備を鳥羽に頼んでくれ。

2015-04-07 22:51:42
gude2hiro @gude2hiro

あら小夜、お帰りなさい。鳥羽と二匹の猫は兼定と共に刀装を作っていたところだった。手入れ部屋を。たぬきでも怪我したのか。ううん、鶴丸。僕の言葉に兼定は意外そうに唸る。珍しいな。鶴丸は意外と無茶するのよね。すぐに準備するわ、兼定、後はお願い。おう。小夜も部屋で休んだら?大丈夫。

2015-04-07 23:01:08
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