あきつ天龍帝都奇譚 第一幕 その一

艦これで大正パロ風のSSを書いてみました 第一話ということで大正浪漫成分は薄めですが、何卒よろしくです
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あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

ちなみに本の題名は「小公女」。 児童文学と呼ばれてはいるが、面白いのは事実。 彼女はぺらり、またぺらりとページをめくっている。

2015-03-13 22:13:18
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

春も近づく今日、窓から入る柔らかな日差しに打たれながらの読書は、それはもう格別だ。 彼女、あきは一人静かに、悠々とそのひと時を楽しんでいた。 のだが。

2015-03-13 22:15:17
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

バタン! 「今帰ったぞ、あきつ丸! 早速だが事件だ! 依頼が来たぞ!」 扉を勢いよく開け放ったのは、同居人の天田お龍だ。 その声で、束の間の平穏はあっけなく崩れ去っていった。

2015-03-13 22:18:27
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

「…天龍殿、今度はなんでありますか」 「さぁ知らん。 依頼が来たのは事実だけどな」 あきは天龍へと恨めしい声で尋ねるが、返ってきたのはそんなものどこ吹く風の素っ気ないものだった。

2015-03-13 22:22:31
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

「天龍殿、重ね重ね言いますが、自分は特に依頼など受け付けてないのであります」 「何言ってやがる、この前あんな事件を解決に導いたのはあきつ丸、お前じゃねぇか」 「いやそれは偶然で、それに天龍殿がいなければ到底解決など…」 「ごちゃごちゃ言うな、依頼人がお待ちかねだぜ。 さ、入りな」

2015-03-13 22:26:59
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

「お邪魔します…」 天龍の後ろから和装の少女が姿を現したのを見て、あきはしまったと思った。 てっきり、この前のような厳めしい華族の男かと思ったからだ。

2015-03-13 22:29:59
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

「そこに座りな、嬢ちゃん」 「は、はい」 「よし、とりあえず名前を教えてもらおうか」 「て、天龍殿!」 「あ、どうした?」 一人で段取りを始めた天龍を止めようと、あきはそこへ割って入った。

2015-03-13 22:32:24
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

「勝手に物事を進めないでいただきたい!」 「いやいや、もう依頼人来てるし、早い目に話をだな」 「断りもなく上げたのは天龍殿でありましょう!」 「困ってるやつを見過ごすわけにもいかねぇだろ?」 「それは確かにそうでありますが」 「何があったかくらいは聞いてもいいんじゃないか?」

2015-03-13 22:35:44
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

天龍は後ろを振り返り、少女へ促すようにそう言った。 少し間を置いて、少女は泣き出しそうな目をして、懇願するように必死に呟いた。 「お、お願いします。 このままだと、私…」 あきは口振りから察する。 どうやら、かなり困ったことが起きているようだ。

2015-03-13 22:40:26
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

「ふむ…」 さて、どうしたものか。 あきは考え直し始めた。 …。 噂ではそう言われているらしいが、別に自分は探偵などではない。 しかし、少女はこうして尋ねて来てくれたのだ。 抱えている問題を解決したいために。 それなのに追い返すのは、いかがなものか。

2015-03-13 22:43:48
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

「…分かったであります。 お話、聞かせてもらいたい」 「あ、ありがとうございます!」 「良かったな、嬢ちゃん。 ありがとな、あきつ丸」 「いえ、別に天龍殿が頼みこんだからではないのであります」 「はは、分かってるよ。 じゃあ俺は茶でも淹れてくるぜ」

2015-03-13 22:47:05
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

バタン 「はぁ」 天龍が出ていった後、あきは溜息をついた。 彼女に上手く乗せられた気もしないではないが、こうなった以上は仕方あるまい。 人助けは、別に嫌いではないから。 「では改めて…貴方のお名前を伺いましょうか」

2015-03-13 22:50:47
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

「は、はい。 私の名前は"越道吹雪(こしみち ふぶき)"と申します」 「吹雪殿、でありますね。 単刀直入に聞くであります、貴方はいったいどのような件でいらしたのでありましょうか?」 「はい、実は……」 対する少女も意を決したのか、表情を引き締めて話を始めるのだった。

2015-03-13 22:54:44
あきつ天龍帝都奇譚 @akitsutenryu

これが、"津洲あき"ことあきつ丸と、"天田お龍"こと天龍が、少女吹雪と初めて出会った日である。 そして、二人が以後様々な事件に巻き込まれてゆく第二の引き鉄ともいえる幕開けなのであった…。

2015-03-13 22:57:45