#トラ泊神戸支部~激闘の本土近海決戦編⑧

Twitter上で書いている、自分のところの鎮守府をモチーフにしたSSのまとめとなります。 6月7日更新。
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ですか @desuka_desuyo

これまでのあらすじ AL,MI作戦の最中、突如として現れた深海棲艦の本土強襲部隊を抑えることとなったトラ泊神戸支部。偵察として向かった青葉たちは、敵中枢すらたどり着けずに撤退してしまう。それでも諦めずに出撃し、彼らはようやく敵の頭を叩くことに成功するのだが…。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:02:49
ですか @desuka_desuyo

「クソッ!!」 行き詰った現状に、思わず拳を机に打ち付ける。 「提督……」 古鷹に声をかけられ我に返った。 「すまない。取り乱した」 「いえ、大丈夫です。それよりも次の編成をどうしますか?」 「あぁ、そうだな」 そう言って俺は艦娘の一覧を開く。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:05:46
ですか @desuka_desuyo

現在、作戦はあと一押しというところで停滞していた。なんとか敵艦隊中枢を叩き、もう少しで撃退できるというところで敵の編成が変わったのだ。そりゃそうだ、相手も馬鹿じゃない。だが、その変化が大きな影響を与えた。敵の旗艦を倒せないのだ。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:09:12
ですか @desuka_desuyo

深海棲艦は主力艦隊の旗艦がその海域全体を指揮している。そのため、海域攻略には敵旗艦の撃滅が必至だと言われている。逆にいえば敵旗艦さえ残っていれば、深海棲艦はどこからともなく延々と湧き続けてしまうのだった。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:12:40
ですか @desuka_desuyo

進展のないこの状況に、執務室の空気は重い。 「くっそあいつら…鹵獲出来たら指の端からすりつぶしてやるのに」 「提督、恐いです」 思わず出た悪態を古鷹にたしなめられる。ここ数日はずっとこの調子だ。 「艦隊、帰投しました」 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:15:24
ですか @desuka_desuyo

通信機を片耳に当て、大淀が報告する。第一艦隊が帰投したのならば次の出撃の準備を本格的に始めなければならない。このままの編成で行くのか、それとも新たな編成を組むのか。悩んでいる時間はない。ここで手を止めてしまえば、深海棲艦の進行を許してしまうことになるのだ。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:18:30
ですか @desuka_desuyo

「すまない、提督」 そう言って扉を開け中に入ってきたのは長門だった。後ろには第一艦隊の面々もそろっている。先程の出撃は敵前衛艦隊のフラタによって長門が大破させられてしまったのだった。 「気にするな、そういうこともある」 「しかし……」 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:22:06
ですか @desuka_desuyo

さらに謝ろうとする長門を制し、俺は第一艦隊のメンバーを見渡した。 「まだ行けそうか?」 その問いの答えに始めの力強さは微塵もない。特に軽空母の二人の消耗はかなり激しいように思えた。だが、彼女たちに変わる艦娘がそういるわけではない。高練度の軽空母は少ないのだ。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:25:14
ですか @desuka_desuyo

「私たちは大丈夫ですからっ!」 俺の視線を感じ取ったのか、千歳が声を振り絞って答えた。彼女たちも分かっているのだ。羅針盤を安定させるためには自分たち軽空母が編成に必須なことを。たとえ艦戦とダメコンしか積めないとしてもだ。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:29:46
ですか @desuka_desuyo

無理をさせていることに自らの力不足を感じ、俺は拳を握りしめた。だが、ここで引いてしまっては、護るべきものを護れなくなってしまう。俺は彼女たちに頭を下げてお願いするしかなかった。 「すまない、引き続き出撃を……」 「その必要はないわ」 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:32:37
ですか @desuka_desuyo

俺の声を遮る新たな声に思わず顔を上げると、そこには千歳の肩に手を置く加賀の姿が目に入った。 「貴女たちは下がりなさい」 「でも」 「ここから先は私たちに任せなさい」 食い下がる千歳に加賀が静かに、それでいて力強くそう言い放った。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:35:31
ですか @desuka_desuyo

加賀はこの泊地で最高練度の艦娘だ。それだけの実力を持つ彼女にそう言われ、反抗できるものは少ない。千歳と千代田は不服そうに引き下がる。そんな二人に加賀が声を掛ける。 「貴女たちの分まで戦うから、ゆっくり休みなさい」 「加賀さん……」 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:38:35
ですか @desuka_desuyo

あまり口に出すことのない加賀の労いの言葉に二人は呆けたように彼女を見ていた。加賀はというと一瞬二人の方を振り返って確認してから、こちらに向き直った。 「これからは私と大鳳が出撃します」 「しかしそれだと羅針盤が……」 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:41:42
ですか @desuka_desuyo

「羅針盤なんて関係ありません」 「ルートがそれたらどうなるか分かっているのか?」 頑なな加賀にそう問いかける。軽空母が二人いることで固定されていたルートを外れると、夜戦で敵艦隊と戦わねばならなくなるのだ。それはかなりの賭けに思えた。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:44:30
ですか @desuka_desuyo

「夜戦のことを心配していたら進むことは出来ません。提督が夜戦に対して抵抗があることは重々承知です。が、これ以上彼女たちに無理を強いるぐらいなら、私が戦いに行きます」 覚悟の決まった力強い目に押し黙らされる。だが、本当にそれで大丈夫だろうか。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:47:33
ですか @desuka_desuyo

「どうやらわたくしの出番のようですわね」 どうしたものかと悩んでいるところにさらに新たな声がかかる。声の主は熊野だ。 「どういうことだ?」 「正規空母二人に戦艦では編成が重すぎますわ。それに夜戦の火力不足が心配ですわね。そこでわたくしたちの出番ということです」 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:50:30
ですか @desuka_desuyo

胸に手を当て誇らしげにそう語る熊野は、さらに続ける。 「制空、砲撃、雷撃、夜戦とパーフェクトにこなせるわたくし熊野に加え、先制雷撃と夜戦で爆発的な火力を持つ雷巡のお二方。そして……」 そこで一旦熊野が言葉を切り、一呼吸置く。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:53:35
ですか @desuka_desuyo

「青葉、貴女の出番ですわよ」 そう言って熊野は青葉を指差した。 「えっ、青葉ですか!?」 指差された張本人は予想外だったのか、自らを指差して驚いている。 「この編成でどうでして、提督?」 「う~む」 熊野に尋ねられ、俺は腕を組んで考え込む。 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:56:34
ですか @desuka_desuyo

「大鳳、加賀はあぁ言っているがお前は行けるのか?」 遅れて執務室にやってきた大鳳に問い掛ける。 「はい、行けます!」 ビシッと姿勢を正して大鳳が答える。俺は次に部屋の端で待機していた雷巡の二人を見やった。 「お前たちは……」 #トラ泊神戸支部

2015-06-07 23:59:36
ですか @desuka_desuyo

「あたしなら全然大丈夫だよぉ」 「北上さんが大丈夫なら私も同じです」 全部を言い切る前に二人が返事をする。それでも決めきれなかった俺は、青葉に目を向けた。青葉が少しだけ戸惑ったような表情をする。だがそれは一瞬で、決心したように頷くと、俺の目をまっすぐ見て答えた。 #トラ泊神戸支部

2015-06-08 00:02:40
ですか @desuka_desuyo

「青葉も大丈夫です」 「決心はおつきになられましたか、提督」 青葉の答えを聞いた熊野が俺にそう問いかけてくる。俺は少しの間目を伏せ考えてから、答えた。 「第一艦隊。旗艦大井。随伴艦青葉、熊野、北上、大鳳、加賀。出撃を命ずる」 #トラ泊神戸支部

2015-06-08 00:06:09
ですか @desuka_desuyo

「その言葉をお待ちしていましたわ」 熊野が得意げな表情で答える。 「お前らのこと、信じているからな」 「任せて。たとえ夜を過ぎることになっても、必ず勝って見せるわ」 俺の問いかけに答えたのは、決意に満ちた表情の加賀だった。ならばこれ以上俺がとやかく言う事もない。 #トラ泊神戸支部

2015-06-08 00:11:27
ですか @desuka_desuyo

「勝って、全員で帰ってこい。いいな?」 俺の言葉に全員が力強く頷いた。 #トラ泊神戸支部

2015-06-08 00:12:34