- cousinusagi8
- 13040
- 2
- 0
- 0
電は小学校でもお友達がいませんでしたが、お手紙で暁ちゃん達とやりとりをとっていました。 電も本当はお母さんのところにいきたかったのですが、お父さんは自分のウンチもふけないのです。 だから電がついていないとダメだったのです。 それでも夜、寂しくなってめそめそ泣くこともあったのです。
2015-06-08 21:40:57電のお父さんは弁護士さんなのです。 暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃんは別れたお母さんのところにいったのです。 家にはお金がいっぱいありましたがお父さんはいつも電をいじめたのです。 だからお父さんのことは嫌いだったのです。 そんなある日お父さんがうんうん言いながら家に帰ってきたのです
2015-06-08 21:41:15電は恐る恐る聞いたのです。 「お父さんどうしたのですか?何か難しいお仕事なのですか?」 お父さんは答えました。 「うるさいナリ。千葉のクソ提督が住所開示されたとかで助けを求めにきたナリ。当職は無能だけどこいつから金を巻き上げる方法を考えているナリ。それより飯はどうしたナリか?」
2015-06-08 21:41:41ある日学校からかえるとお父さんから電話がかかってきました。 「電、大切な書類を忘れたナリ。それを今から持ってこいナリ。持って来なきゃまた殴るナリよ」 電は、はい、と答えて書類を持って電車に乗りました。 途中道に迷いながらも、お父さんの弁護士事務所までなんとかたどり着きました。
2015-06-08 21:42:10事務所に入るとお父さんは見たこともないニコニコ笑顔をしていたのです。 誰かからお金を巻き上げられたのかもしれないけど、電に難しい話はよく分からないのです。 書類をお父さんに渡して、電はそそくさと立ち去ろうとしたのです。 すると、ソファーに座っていたお兄さんから声をかけられたのです
2015-06-08 21:42:50「ワイは長谷川、あだ名はチンフェや。千葉の松戸鎮守府で提督やっとるんや。お嬢ちゃんは?」 かっこいいお兄さんなのです。 電はびっくりしながら 「い、電です。唐澤貴洋べ、弁護士の娘、なのです」 と答えたのです。 長谷川…いえ、司令官さんはそのあと優しく頭をなでてくれたのです。
2015-06-08 21:43:17それから時が流れ電が小学三年生の夏の日のことでした。 電が晩御飯のシチューをうっかりお父さんのスーツにこぼしてしまったのです。 お父さんは烈火のごとく怒り狂って、電をいっぱいぶったのです。 ごめんなさいといっても、お父さんは馬乗りで電を殴り続けたのです。 電はいっぱい泣いたのです
2015-06-08 21:46:49その日は夏休みの前日、電は豚さんの貯金箱とお母さん達と撮った写真と筆箱をもって、夜中に家を飛び出したのです。 そう、家出なのです。 もうお父さんのところには戻りたくない一心で、電は歩き続けました。 お父さんにぶたれた足がヒリヒリ痛んで涙がポロポロ溢れたのです、それでも歩いたのです
2015-06-08 21:49:15何時間も歩きました、自分がどこに向かっているのかも分からないのです。 とにかく逃げて逃げて、草むらに座って。 晩御飯で作ったお米をおむすびはしょっぱい味がしたのです。 電はポロポロ涙を流していました。 「誰か助けて下さいなのです…」 電の非力な叫びは夜の闇に吸い込まれていきました
2015-06-08 21:52:56月明かりを頼りに歩いて歩いて歩いて。 すると、懐かしいような切ないような匂いがしたのです。 潮のかおり…海が近いのです。 昔、お父さんもお母さんも仲が良かった頃にみんなで来たのです。 電は駆け足で海に向かいました。 海なんて、なん年ぶりでしょうか。
2015-06-08 21:56:51ここはどこの海でしょうか、港区から歩いて歩いて…もしかしたら青森の海でしょうか。 そんなはずはないのです。 お月様は綺麗で浜辺を優しく照らしています。 海は静かで波の音が優しく心に沁みいります。 数時間前までボコボコにぶたれていたのに、嘘のように綺麗で穏やかな気持ちなのです。
2015-06-08 22:00:20都会から離れた、どこかも分からない星空は宝石を散りばめたように輝いています。 電は浜辺に腰かけ空を仰ぎました。 「おつきさま、おつきさま、電はいっぱいぶたれるのはもう嫌なのです。また皆で仲良くご飯を食べたいのです。お願いを聞いてください」 手を合わせてお月様にお願いしたのです。
2015-06-08 22:02:45月に手を合わせてお願いをするなんて格好悪いのです、それでも願わずにはいられませんでした。 殴られた傷跡に潮風がちょっぴり染みましたが気にならなかったのです。 「…お友だちがほしいのです…」 思わずぽろっと声にでてしまった…その時でした。 「なんや、友達が欲しいのか?」
2015-06-08 22:05:43「はわわっ、誰なのです!?」 夜の浜辺に先客さんがいたのでびっくりしたのです。 砂を踏みしめる音と共に月明かりに照らされた浜辺に人影が現れました。 「潮風は毒やでお嬢ちゃん。なにしとるんやこんなところで」 どこかで見た、ブラックスーツにピンクのネクタイを締めた男性なのです。
2015-06-08 22:09:19「あなたはお父さんの事務所にいた…ち、ちんふぇさん!」 「なんや、どっかで聞いた声だと思ったらあのデブの娘さんやんけ!なにしとるんや!」 電はチンフェさんに事情を話したのです。 するとチンフェさんは何も言わずに電を抱きしめて涙を流したのです。 電も思わず泣いてしまったのです。
2015-06-08 22:11:52