田中宗一郎さんによる、Tシャツの宣伝 & ペパーミント・パティとスヌーピーとチャーリー・ブラウンの関係について

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田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

再定義が生業/編集者/DJ/音楽評論家/snoozerの人/#POPLIFEThePodcast#thesignpodcast の制作&出演/クラスヌこと @clubsnoozer レジデントDJ/合言葉はいつだってKEEP COOL BUT CARE🖖

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田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

この二つの絵柄はお店には並びません。クラスヌ会場限定の別注です。 ディガウェルはこちら。 ↓ digawel.com pic.twitter.com/McxhBe9p6l

2015-06-10 22:05:53
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田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

PEANUTS/SNOOPYをモチーフにしたディガウェルのクラスヌ会場別注Tシャツ第二弾の柄について、ちょっと説明します。モチーフになっているのはペパーミント・パティとスヌーピー。まずはこの二人のキャラクターと二人の関係から。 pic.twitter.com/6lqCmjr4fs

2015-05-30 15:03:08
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田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

ペパーミント・パティは、ピーナツの主人公であるチャーリー・ブラウンを中心としたピーナツ・ギャングの面々が暮らす街とは別の地域に暮らしている女の子。隣町だと思ってもらえばいい。で、まずチャーリー・ブラウンは万年全敗のどうしようもない野球チームのピッチャーであり、監督でもあります。

2015-05-30 15:06:19
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

ペパーミント・パティもまた隣町で敏腕選手ばかりを揃えた野球チームを率いている。髪の毛はボサボサで、日焼けのせいかソバカスだらけで、まったく勉強が出来なくて、授業中居眠りばかりしていて、放課後でしか輝くことの出来ないスポーツ少女。部活女子。まともに女の子として相手にされないタイプ。

2015-05-30 15:09:51
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

なので、おそらく容姿には自信がない。特に顔の真ん中のでっかい鼻を他人に揶揄されるのが我慢ならない。チャーリー・ブラウンと共通しているのは、どちらも誰よりも父親のことを愛しているということ。パパのことを世界一素敵な存在だと思っている。チャーリー・ブラウンの父親の商業は床屋さん。

2015-05-30 15:13:54
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

50年代以降のアメリカの文化状況から考えるなら、戦後の経済復興が進む中で経済的にも文化的にも発展から取り残された家庭とも言えなくない。どうやら仲間からはそれをさりげなく揶揄されることもあるようだが、チャーリー・ブラウンは床屋さんという生業も含め、誰よりも父親のことを尊敬している。

2015-05-30 15:19:44
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

ペパーミント・パティの父親の職業については、具体的なストーリー・ラインの中では明らかにされていない。ただ明らかに放任主義的に育てられたと思しきペパーミント・パティの性格から言っても、おそらくは片親。一人っ子で、父親と娘だけの家庭で育ったということがそれとなしに示されている。

2015-05-30 15:22:48
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

チャーリーとパティそれぞれの野球チームは幾度となく試合をするのだけれど、常に勝つのはペパーミント・パティのチーム。彼女のチームにはヒスパニック系の敏腕バッター、ホセ・ピーターソンや女性蔑視の塊のチボーって男の子がいて、さりげなく人種やジェンダーの問題についても触れてられている。

2015-05-30 15:30:51
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

ところが、そんなうだつの上がらない野球チームの監督であるチャーリー・ブラウンのことをペパーミント・パティは好きになるんですね。でも、おそらくその恋は何がしかの勘違いというか、間違った自己投影の産物だということがストーリー・ラインの中でさりげなく示される。この辺りがすごく上手い。

2015-05-30 15:36:25
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

パティはチャーリーの名前を覚えられない。常に彼のことをチャックという愛称で呼ぶわけです。チャーリー・ブラウンは、仲間のギャングたちからは何も出来ないうすのろ扱いされてはいるんだけど、実際は子供の皮を被った、聡明であるがゆえにすべてに期待することをやめてしまった老人のようなキャラ。

2015-05-30 15:40:41
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

なので、チャーリーはパティの恋心に気づいていながらも、同時にそれの理由が何がしかの勘違いと自己投影の産物だとわかっていて、それが故に相手にしない。もっともそれ以前に、彼には赤毛の女の子という、ずっとコミックの画面には現れない女子に夢中なので、当然、取り合おうとしないわけです。

2015-05-30 15:45:25
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

赤毛の女の子が実際に具体的なキャラクターとしてコミック上に登場しない理由は明白。つまり、それがチャーリー・ブラウン自身のファンタジーの投影だから。つまり、チャーリーは現実の彼女をしっかりと見ているわけではなく、自分自身の理想を彼女に見ているわけです。まあ、ありがちですよね。

2015-05-30 15:49:30
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

こんな風にピーナツのキャラクターたちは誰もが必ず欠点を抱えていて、その言動において、いくつもの間違いを犯している。それが故にすれ違いながら、でも、どうにかひとつの穏やかなコミュニティを形成しているわけです。これが何よりもピーナツの世界観の特徴。端的に言うと、アメリカのメタファー。

2015-05-30 15:53:28
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

ピーナツのすべてのキャラクターの中でもっとも荒唐無稽で、どんなことでもやれてしまうスーパースターで、自信たっぷりで、自分以外の登場人物すべてを小馬鹿にしているのが、スヌーピー。彼自身もまたアメリカのある側面のメタファーだと言えます。でも、実際はビーグル犬だっていうところがミソ。

2015-05-30 15:57:46
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

スヌーピーはすべてのキャラクターを自分の下に見ている。飼い主であるチャーリーのことも、あの頭の丸い男の子、としてしか記憶していない。基本的に家来だと思っているわけです。でも、そんな彼が唯一優しく接する相手がペパーミント・パティなわけです。彼女以外の女子にも優しくはあるんだけども、

2015-05-30 16:00:46
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

それはあくまでプレイボーイがすべての女性に対してジェントルだというだけの話。スヌーピーの女子全般に対する優しさは、ある意味、女性蔑視の裏返しとも言えなくない。でも、ペパーミント・パティに対してだけは違うんですね。誰もが粗暴だと思っている彼女の素顔とか、本質を唯一見抜いている。

2015-05-30 16:04:10
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

で、件の絵柄の話にようやく到達しました。この絵は、ある日、とある理由で、突然スヌーピーが家出をした時のストーリー・ラインから採られたものです。突然スヌーピーがいなくなったことにライナス初め、大方のキャラクターが大騒ぎするんだけど、唯一落ち着きはらっているのがチャーリー・ブラウン。

2015-05-30 16:07:04
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

つまり、チャーリーは家出したスヌーピーがどこに行ったかが最初からわかっていた。で、ペパーミント・パティの家に電話をする。その最後のコマの絵柄がこれ。完全にリラックスしたスヌーピーを膝に乗せたパティが電話を取って、ハロー?と呟くところ。 pic.twitter.com/AczUtfOXot

2015-05-30 16:11:03
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田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

ペパーミント・パティはとても怪訝そうな顔をしているわけだけど、これには理由がある。というのも、パティは年がら年中チャーリー・ブラウンに電話をするものの、その逆というのはほとんどないわけです。だから、この絵というのは、とても残酷な瞬間でもある。ようやく電話がかかってきた、でも、

2015-05-30 16:14:54
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

その目的はペパーミント・パティと何かしら話がしたかったわけではなく、スヌーピーの所在の確認にすぎなかったということだから。つまり、この絵というのは、3人のキャラクターの間のとても複雑な関係性を描いた瞬間でもあるわけです。心温まる部分とすれ違いの悲しみの両方がここに表現されている。

2015-05-30 16:17:43
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

こんな風にすれ違いと勘違いが様々に交錯しあいながら、その時々にそれぞれのキャラクターたちは明らかに少しだけ傷ついている。でも、作者のチャールズ・M・シュルツは、それを大袈裟に、エモーショナルに描くことはなく、笑いのオブラートに包んで読者に差し出す。それがピーナツらしさです。

2015-05-30 16:22:46
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

にしても、俺、このペパーミント・パティが一番好きなキャラクターなんです。実はとても繊細なくせに、いつも強がっていて、不器用なところがとにかくチャーミング。いくつかある自分の好きな女子の系譜のひとつにぴったり重なったりする。テイラー・スウィフトとか、仲里依紗とか、その系譜ですね。

2015-05-30 16:25:54
田中宗一郎🖖 @soichiro_tanaka

テイラーも、言ったら、垢抜けない田舎娘じゃないですか。ステレオタイプな基準からすれば、とても女の子扱いされない、あまりに身長が高すぎるデカい女子。でも、彼女は自分だけの美の基準を作り上げた。仲里依紗の場合も、ここ日本で求められるステレオタイプの女性像からはどうにも食み出している。

2015-05-30 16:31:24