お題は @shiroboshi2さん、@hatz0_0showさん、@p_boy_kkkさん、@NWJP_FJ_R2さん、 @createmachinesさん、 @uha771さん、 @hato_0410さんから。ありがとうございます!
2015-06-21 23:41:04*試用* @yulou_headzの方でお題を募りましたので、完成品を此方で放流します。オリジナルなので #yulou_tx とかでオネガイシマス。では始めます。 *お題*
2015-06-21 23:47:05ある世界線、時は真っ昼間。場所は、大砂漠。こんなにもふもふで砂漠を踏破できるのか、不思議なくらいの生命体が疾走する。その生命体……彼女が小さく身震いするたび、毛の間に溜まった熱気が排出される。発したナーンという鳴き声はのんきに砂漠の真ん中に響き渡った。 1
2015-06-21 23:49:47それを聴いているのは、その背にまたがった少女ただ一人。中々にかわいい。「もう少しでオアシスだから、がんばろう、ウェイブ」「ナーン」器用にコルセットの結び目を直し、少女は身軽にそこから降りた。そして、ウェイブと呼んだ生命体にリンゴ様の果実を差し出す。 2
2015-06-21 23:51:14いかにも温そうだが、獣は大喜びでかじりついた。「ナー」が、うまくいかない。仕方なく少女は歩きながら、腰に下げた短刀を抜き、果実をようく切った。ついでに一切れ頂戴しながら、片手で獣に差し出してやる。砂に足元を掬われぬよう、注意深く歩く。 3
2015-06-21 23:52:09短刀を拭きながら遥か彼方を見やり、少女は目を擦った。「……!」巨大な建造物が見える。蜃気楼か?「ナーン」「あれかも」「ナーン」少女は素早くウェイブの背に乗り、その背を叩いてやった。「行こう」獣は砂煙と共に走り出す。もっさりとした体からは想像もつかない速度で。 4
2015-06-21 23:54:10やがて見えたのは、朽ちた古代の都市だった。背を降り、それに駆け寄った少女は、ほうと息をつき、歓声を上げてウェイブに抱きついた。「やった!ここだよウェイブ!」砂漠の中心、蜃気楼に紛れて存在する古代都市の亡骸。いわゆるオアシス。そして新たな砂漠都市へのヒント。 5
2015-06-21 23:55:59水が未だ滾々と湧き出るこの遺跡が如何様にして滅びたのかは永遠の謎とされている。たどり着くのが困難、または、たどり着いたとしてもある時忽然と姿を消してしまい、調査どころではないのだ。少女は地図を開き、ほとんど白紙のそれに線を素早く引いた。 6
2015-06-21 23:58:41「ウェイブ、おいで」「ナーン」少女はウェイブの体に吊られた地図入れを開き、そこに今しがた書いた地図を放り込んだ。一度ではルート確定はできまい。また来ることになるだろう。……と、ウェイブが首をめぐらせ、広場と思しき場所を見やった。泉?「ナーン」 7
2015-06-21 23:59:55それは、池でも泉でもなかった。「わあ……」魚が泳いでいる。大小さまざま、色とりどりの宝石のような、魚の群体。少女は丸い石を取り出し、何事か呟いた。ぼんやりとした光が投影され、魚達を照らす。「広さは不明。地下に空間がありそうです。引き続き調査します」 8
2015-06-22 00:01:20それから彼女と獣は、普通のオアシスを見つけて体を癒した。ただの水ではなく、なんらかの魔力がこもっているようだ。少女はそれを採取してビンに詰めた。「あちこち見ないで帰ろう。最後に遠景だけ撮影するよ」「ナーン」「記念撮影じゃないよ!」「ナーン」 9
2015-06-22 00:02:37先ほどのように丸い石を取り出し、呟く。「……はい、帰るよ」「ナーン」ざわ、と吹き降ろすような風が頬を打った。冷たい風。空が翳る!少女はウェイブに飛び乗り、叫んだ。「ドラゴン!」砂色の竜が、彼方から舞い戻ったのだ!「加速ーッ!」「ナーオ!」 10
2015-06-22 00:03:51少女と獣は走った。来たときの倍以上の速度で。それこそ尻尾を巻いて逃げるかのような速度であると、竜は追いかけるのを諦めながら思った。『次に来る時は土産を持て。でなくば取って食らうぞ』「もちろんさあ!」竜の声に、少女は背後を振り返りながら叫んだ。 11
2015-06-22 00:05:30