【短文】残り香すら忘れて

荀攸の臨死体験ツアー
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伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

二荀のほのぼのチュエーション 『約束の場所で 私(あなた)の肩に顔を埋めながら 私は 「諦めなくてよかった。 」と言いました。』  shindanmaker.com/338356

2015-06-03 22:34:19
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

残り香すら忘れて。(荀彧) 願ったのに、約束したのに。叶わぬ夢は露と消え。 pic.twitter.com/70t202k7Hg

2015-06-10 19:36:01
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伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

ーーーかつて、夢見た物がある。描いていた希望がある。それは、遥か昔の夢……願い、声を上げ、奪い合った。誰もが想った理想郷。荀攸とて、それを目指していた。主君の下、知を振るった。 尊敬する、叔父と共に。→

2015-06-03 22:39:00
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

(ここは、桃源郷か) まず、目覚めたばかりの荀攸は、目の前に広がる光景に声を失った。木々は青々と繁り、様々な実を付けている。どこまでも花畑の絨毯は続き、高い空には鳥が歌う。幻想か、と頬をつねるが、あいにく多忙が見せる夢幻では無い様だ。→

2015-06-03 22:43:32
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

荀攸は途方に暮れた。何せ、何ゆえにこのような場所に居るのか、見当がつかないのである。与地図で溢れた執務室でひたすらに筆を滑らせていた記憶はあるが、桃源郷に遠乗りに来た記憶はないのだ。 夢でも無い、幻想でもない、化かされたわけでもない。しかし、大事なことを忘れている気がする。→

2015-06-03 22:47:38
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

瞬間、荀攸は走り出した。 自分がこの様な場所に居る理由は分からない。しかし、行かねばならない気がする。駆けて、あの場所へ…まだ見ぬあの地へ、早く駆けねばならない気がした。 甘い蜜の川を飛び越え、静かな林を抜け…走ったのはたった僅かな時間であったが、荀攸にとっては万年にも思えた。→

2015-06-03 22:51:59
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

(ここが何処か、分からないのではない。…最早、覚えておらぬのだ!) 唇を噛み締める。やはりそうだ。ここまで駆けてきたあの風景が、古い順に荀攸の記憶の中から消し飛んでいく。 (しかし、これだけは分かる。私は、ずっとこの場所に来たかった!) そうして走り続けた荀攸の目の前が開けた。→

2015-06-03 22:59:11
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

青い花が、どこまでも咲いていた。ゆらりと揺れ、まるで荀攸を誘うかの様だ。 その中で一人佇む、一人の男。ーーー嗚呼、と荀攸は息を飲んだ。 かつて、夢見た物がある。描いていた希望がある。それは、遥か昔の夢……荀攸と、その叔父が想った理想郷。 荀攸が乞い願い、想い続けた桃源郷。→

2015-06-03 23:03:41
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

敬愛している荀攸よりも年若の叔父は、少し前にその地へと旅立った。鳥が唄い、言葉の一片に『綺麗』を入れねばならぬほど、溜め息しか出ぬ夢の様な美しい世界へ……昔、幼い頃に叔父と語らった事があったが、まさか本当にこの様な場所だとは想像すらしていなかった。→

2015-06-03 23:08:12
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

常世の人という生き物が、想像しうる美しき地。それは、時に理想として語られーーー人は、此処を『天国』と呼んだ。 (あなたは、此処に居たのか) 透度を持った黒が、荀攸を射抜いていた。 彼ほどこの地が似合う人は居ないであろう。聖人君子とも言われた叔父は、静かに微笑んでいた。→

2015-06-03 23:12:31
伊月(創三垢) @Itsukimiho_sou3

何が書きたかったのか……とりあえず、荀彧の死後、臨死体験する荀攸の話が書きたかった……

2015-06-03 23:13:39