柑橘鎮守府、機帆船夏の日の風物詩

瀬戸内にはたくさんの機帆船が行き来してます。蜜柑舟なんかぐっときますね。http://ailine.jp/eaeuaeyeoeaafafafaf この鎮守府の日常も機帆船は欠かせません。たとえば提督がでかける下駄がわりとか…
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「みんな正真正銘の海揚がりだからね。」「海揚がり?」「うん、古い船で運ぶ途中沈んだ陶器だよ。普通は古備前焼を指すんだ。こういうやつ」といって大皿を見せる。こっちは古伊万里かな?と別のかわらけをつまむ。#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:22:28
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「海揚がりは値がつく。特に最近はうちみたいに探査機もったのが探しつくしたから特に稀少なんだよ。偽の海揚がりも多い、」 「なんであなたはそんなに一生懸命なんだい?」#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:26:33
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「鎮守府を立ち上げたころは苦しくてね、何でも手を出した。『海賊』もやった。」機帆船が身がまえるのを感じた。#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:28:42
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柑橘提督は苦笑した。「燃料廠で書類を操作して多めに積んだ燃料をこういう島影でほかに転売することを海賊と言ったんだよ。誇れることじゃないがな、あのトップランカーたちも手を染めていた。」#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:31:04
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機帆船はため息をついた「私らも人に言えないことをやってきたからねえ。」提督はしかし話し続けた「海揚がりや海中の船遺物にはその時々に苦労して運ぼうとした人間や船魂の念がこもってる。それを彼女や彼らの思いをかなえてやるためにひろってやる。それが船魂の鎮めになるとおもう」#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:35:10
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機帆船の自分の船上の少女を見た。彼女も冷凍貨物船の船魂だといった。それを覚えていた。「たしかに●●遺産登録とか言ってかつての先達の労苦をたたえると言いながら下心丸見えと言うのが当世流だし、それはとても辟易することだからな。」大人びた口調で機帆船の船魂は言った。#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:39:47
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沈船の積荷を売ると言うことはいささかためらわれることだが、もともと到着地で売買される運命の品々だ。そしてお金と言うものを物神化して嘘でも讃えることでこの世界は回る。深海との戦争でもそうだ。戦費はいくらか?が常に勝ち負けよりも優先される。#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:43:26
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どぼんと音をあげて二人が水上に現れた。最後は潜水病予防にゆっくり浮上してきたらしい。このへんが潜水艦との年季の差だろう。「はいこれ、最後」漣が揚げたのは4本の爪を束ねたような鉄の棒。#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:45:52
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「碇か!」柑橘提督は声を弾ませた。弁財船の4本ある碇の一本。#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:47:39
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ちょうど明るさの増した島影から木曽と涼風が海面を滑ってやってきた。こちらの駆逐艦二人が手を振る。 提督はそこで機帆船のほうを向いた。「少しボーナス出すよ。この碇はあんたにあげる。」#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:50:55
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機帆船はじっとそれを見つめて笑った。「ありがと。」 かつて、同じように同じ海を物資輸送の責任を背負って走った先達の形見。 柑橘提督一行を母港に送って一人きりになったあと、その碇を彼女は船尾の機関室のかげにそっと置いた。#柑橘鎮守府

2015-07-05 23:54:33
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「この国の軍事的な覇権移動はたいてい私たち和船が舳先を連ねて内海を走り回ったからできた。見世物にされるよりもこちらのイサシオが誇りなの。外洋を渡ってきたリーファーのあなたにはわかるわよね?」#柑橘鎮守府 pic.twitter.com/cyRkMubJfI

2015-07-06 07:52:26
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「他人に嘘をつかれてそれへの言い訳を作り上げてまで『存在感』とやらを示したいとは思わないわ。あたしたちはただひたすら昔からこの海で人や物を運び続けただけ。」#柑橘鎮守府

2015-07-06 07:46:11
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「私たちはあなたみたいに魂が擬人化しないかぎり口を利くことは許されない。でも私たちがいてちゃんと動き続けたことを見ていてくれる人もいる。私はそれで満足。」#柑橘鎮守府

2015-07-06 07:48:28
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心地よい暖かな霧に包まれたような感じの中で柑橘提督は少し大人びた口調のその女の声を聞いていたが 「て~とく、陸じゃ舟こがないでください!」 はっと気がつくと目の前に腕組みして大潮が仁王立ちしていた。#柑橘鎮守府

2015-07-06 07:55:36
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「もう、疲れたのはわかってますけど、もうすぐ『業者さん』来ちゃいますから。」雑木林の妙に如才ない深海棲艦たち。やたら気風のよい人間の女を頭に頂く何でも屋たちだ。どうやら骨董のほうにも顔が利くらしい。 #柑橘鎮守府

2015-07-06 07:59:38
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またどうせ買い叩こうと言う魂胆だろうがそうはいくかよ。機帆船娘の碇を見たときのやさしい微笑み、夢の中の和船のおねえさんの心地よいボイス。そして海底に散らばった幾隻もの弁財船の破片。これが彼女の背中にぎゅうっとのしかかった気がした。#柑橘鎮守府

2015-07-06 08:02:45
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一度作られたものは何らかのカタチで世に出てこそ本懐。きちんと売りつけてやるさ。部屋を出た柑橘提督は大潮を引き連れて応接室のドアをたたいた。#柑橘鎮守府

2015-07-06 08:04:46