稲川淳二のつぶやき怪談　2015年6月27日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

後片づけしている時、 怖いことを思い浮かべていると、 なぜか必ず変な気配を感じるんですって。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

なんだか知らないけど、 店の中に他の誰かがいるような気配を感じるタイプの人なんです。 だから怖い話は本当に嫌なんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

だけど、お店の女の子たちは怖い話が大好きだし、 山田さんの話はおもしろいから、 その日もマスター以外はあれこれ怖い話で盛り上がっていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのうち、ママの方が用事があって先に帰ってしまった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

山田さんは女の子たちと、 「あの話はね、こんな怖いことになって…」 と怖い話を続けていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、山田さんも明日の仕事を考えて、 「いけね、俺も帰らなくちゃ。」 と、引き上げたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

実はその後、このバーで信じられないことが起っていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それから２日ほどして、山田さんがその店に顔を出したんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そしたらマスターのほうから、山田さんに話しかけてきたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あのね山田さん………この間ね、あれからおかしなことがあったんですよ」 神妙な顔で話し始めたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

聞いてみると、山田さんや女の子たちが帰ったすぐ後だったそうです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

もう時間も深夜と言うか、どの店も閉店する時刻だったからマスターも、 「じゃぁ、今日は店閉めるか」 と、外の看板の明かりを消したり、後片づけを始めたそうです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

マスターは女の子たちに、 「ねぇ、ちょっと悪いけどさぁ。誰か片づけ終わるまで残っていてくれない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

お願い、すぐ終わるから残ってよぉ」 なにしろ散々怖い話を聞かされたマスター、 ひとりになるのが嫌なもんだから、一生懸命に頼んだけど、 女の子たちは、結局笑い転げながら帰ってしまったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

賑やかなお店も、お客や女の子たちが帰って、ひとりになると、 急に寂しいような、怖い気持になったりするんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

賑やかなところほど、人が居なくなると余計に侘しいというか、 変な雰囲気があるもんなんです。 その日はマスター、なんだか妙に胸騒ぎがしたそうです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あーあ、皆、帰っちゃった……」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

仕方ないから、ひとりで店の後片付けしていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、トン、トン、トン、と階段を上がってくる足音がしたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“ギィ～……” 扉が開いたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

音がしたので入り口を見てみると、 みすぼらしい姿の男がひとり、陰気な様子で入ってきたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あぁ、すみませんね。今日はもう、看板なんですよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その陰気な男はうつむき加減で、小さな声で、 「一杯だけでもいいんだ。飲ませてくれないか」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「いや、みんな片付けちゃってるから、勘弁してくださいよ。」 と、マスターはなおも断ったんですが、 その男は小声で、自分はママの知り合いだって告げたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そう言われるとムゲには追い出せないから、 「あぁ、そうだったんですか。 でもママは用事があるから早く帰ったんですよ」