- rainbow_solara
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【12】 ある日、夜勤を終えて病院を出ようとすると。 『ナス子ちゃん♡』 「丸山先生、」 小児科の診察室から手招きする丸山先生。 「先生も夜勤ですか?」 『んー?ちゃうねんけど、論文なかなか終わらんくてオールしてもうた!』
2015-07-01 00:03:23【13】 へらへらと笑いながらデスクの引き出しを開けると、そこにはお菓子がぎっしり。 うわ…ドクターのデスクって、みんなこうなの? 診察用の椅子に座るよう促されて、引き出しから適当に出したお菓子と温かい紅茶を淹れてくれた。 「あの、」 『今日休みやろ?大倉から聞いてるで』
2015-07-01 00:03:34【14】 「はぁ…」 『夜勤でお疲れのとこやけど、たまにはゆっくりお話せぇへん?』 いつも廊下で会うばっかりやからちゃんと話してみたいなぁって思うててん、と笑う。 「お話と言われましても…」 話せるようなことは何もない。 直属の上司でもなければ何でも話せる人でもない。
2015-07-01 00:03:41【15】 『辞めたい思うてたやろ』 「!」 いきなり真剣な顔で、核心をつかれてドキッとする。 『まぁ、嫌々やって務まるような仕事ちゃうし止めへんけど』 「やっ、辞めません!」 丸山先生らしくない意地悪な言い方をされて、ついムキになって言い返してしまった。
2015-07-01 00:03:47【16】 すると、にんまりと笑った丸山先生。 『言うたな?♡』 「…はい。」 あれ? もしかしてこうなるように誘導された? 『新人看護師の配属、ドクターからのドラフト制も入っとるって知っとった?』 「え?」 『俺、1番に君のこと指名してんから!』
2015-07-01 00:03:52【17】 『そして大倉にジャンケンで負けた。』 「ジャンケン、って…」 『昔の俺によぉ似てんねん、ナス子ちゃんは。』 あ。 これが"泣く子も笑う"と院内で話題の、丸山先生のキラースマイルか。
2015-07-01 00:03:57【18】 『俺も不器用やし臆病やし、医者向いてへんなってちょうどナス子ちゃんぐらいの時に思うてたもん。辞めたいなーって、毎日。』 「そんな…」 今の丸山先生からは、想像もつかない。 『やから放っとかれへんねん、ナス子ちゃんのことは。』
2015-07-01 00:04:04【19】 『似た者同士の先輩からアドバイス。今辞めたら後悔するで。』 「…はい。」 自分でもわかってた。 辛い現実から逃げたかっただけで、この仕事を嫌いになったわけじゃない。 「丸山先生、ありがとうございます」 目を見てお礼を伝えると、気まずそうに目を逸らされた。
2015-07-01 00:04:10【20】 「丸山先生?」 『…まぁ、放っとかれへん理由はそれだけじゃないねんけど。』 「え?」 小さな声で何か言ってたけど、聞き取れなかった。 『何でもない!独り言やで』 んんっと咳払いをして、続ける。 『大倉も、厳しい分ナス子ちゃんにはめっちゃ期待してんねん。』
2015-07-01 00:04:15【21】 『もう君はおたんこナースちゃう。自信持って頑張りや、◯◯ちゃん』 「、」 初めて呼ばれた名前とぽんぽんと叩かれた肩に、ドキドキが止まらないのは夜勤疲れのせいだ…きっと。 【おしまい】 #えいとでお医者さん pic.twitter.com/6YoY0AYabO
2015-07-01 00:04:33