- genzaikouanchu
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@genzaikouanchu シナリオのギミックをいえば無口な男と一等航海士はPCの協力者であるとともに行動を抑止できるものです。 二人が死ねば船が立ち往生してしまうので、ゴリラ(ゲームマスター)がどちらかを殺すと急速に難易度が跳ね上がるという。
2015-07-07 22:58:07@Misokatu1129 「おい、どうなってんだよ」 「知るか。俺が知りたいくらいだ」 「分かった分かった。とりあえず落ち着け」 洋上の船でそんな騒ぎが起こっている。 無理もない。 こんな場所で、ありえない現象が起こってるのだから。 「なんで船長が?」
2015-07-07 22:58:49@Misokatu1129 彼らの、カリスマあふれるとはお世辞にも言えない上司。 その船長のかわりはてた姿が見つかったのだ。 それが悲しいとか、彼の人柄を偲ぶ、というわけではない。 ただ、それをもたらした者がいまだここにいるという恐怖が彼らの胸をしめている。
2015-07-07 23:00:04@Misokatu1129 「誰がやった」 一等航海士が口を開く。 誰かに言った、というわけではない。おおよそ独り言。 何かを口にする事で、動転しそうな気を紛らわそうとしてるようであった。 だが、口をついて出た言葉は意味を持って方向性を作っていく。
2015-07-07 23:01:28@Misokatu1129 誰が? その問いかけは、間違いなくその場にいる全員に向けられたものだ。 この船の中にいる、それほど多くない者達に。 そう、船長は死んだ。 場所は船の中。 その船は、海の上を走っている。 犯人はまだこの中にいる可能性があった。
2015-07-07 23:02:37@Misokatu1129 可能性として、犯人が既に逃げてる、という事も考えられる。 しかし、陸地までまだ遠く、泳いでいく事は不可能に近い。 救命用のボートならば、と思うが、それは全て残ってる。 そもそも、それを使ったのならば、その時点で気づくであろう。
2015-07-07 23:03:36@Misokatu1129 また、犯人がこの中の誰かなら、最低一人はこの場から姿を消しているはず。 しかし、今の所船内にいる者達で姿を消した者はいない。 誰かが船内に潜んでいたかもしれないが、その可能性も低い。 それほど大きくない船だ。潜める場所はほとんどない。
2015-07-07 23:04:59@Misokatu1129 また、潜伏してるのであれば、消費される食料などで何かしらの痕跡が残る。 今の所そういったものもない。 そう考えれば、犯人がこの中にいると考えるのは当然の帰結であった。 一等航海士の言葉は、居合わせた全員に向けられたものとなる。
2015-07-07 23:06:21@genzaikouanchu なるほど。まだゴリラはでてこない。TRPGのシナリオやプロットでは真っ先に判っている情報ですが、小説では後に出てくるモノなんですねぇ。犯人ですしね・・・なるほど。
2015-07-07 23:07:17@Misokatu1129 自然と疑惑が発生する。 それは、その場にいた全員が、自分以外の全ての者に向ける事となる。 最初は小さく、次第に大きく隣の、正面の、その場にいる全員に皆が目を向けはじめる。 視線を険悪にしながら。
2015-07-07 23:07:50@Misokatu1129 「いったい誰だ?」 再び一等航海士の声。 力のこもった目がまわりを威圧する。 荒くれぞろいの海の男、それもそれほどたちの良くない連中であるが、それらの上に立っていた航海士はその上をいく。 眼光に射すくめられ、男達は肩を縮ませていった。
2015-07-07 23:10:17@Misokatu1129 「おまえか?」 「まさか!」 最初に声をかけられた男は、すぐに首を振った。 「じゃあ、おまえか?」 「そんな、冗談じゃねえよ」 次の男も否定した。 それでも航海士は詰問をやめない。 居合わせた全員────十人もいない────が終わるまで。
2015-07-07 23:11:29@Misokatu1129 だが、正直に「私がやりました」などという犯人がいるわけもなく。 返答は全て犯行の否定で終わった。 実際、やっていないのであれば彼らは正直に本音を話した事になる。 しかし、それで物事が終わるわけがない。 既に事件は起こってるのだから。
2015-07-07 23:12:28@Misokatu1129 「じゃあ、いったい誰がやったんてんだ!」 航海士の怒鳴り声があがる。 その場に居合わせた航海士以外の者達は、もっとも有力な容疑者を見つめた。 一等航海士を。 彼が船長と折り合いが悪かったのは周知の事実である。
2015-07-07 23:13:10@Misokatu1129 だからこそ、全員(航海士除く)は思った。 あんたがやったんじゃないのか? と。 それを口にする度胸のある者はいなかったが。 「くそが。でもなあ、黙っていても意味ねえからな。 この船には俺達しかいねえ。他にやったやつなんていやしねえんだ」
2015-07-07 23:14:30@Misokatu1129 その言葉に、一人が反論する。 「いや、ちょっと待ってくれ」 「あ?」 「俺達だけって事はねえだろ」 「んだと?」 「ほら、一応船室にはあれがいるんだし」 「あれ…………あれって、あれか?」 「ああ、あれだ」
2015-07-07 23:15:25@Misokatu1129 その言葉に、一等航海士が呆れる。 他の者達も呆れた。 「おまえ、バカか」 その場にいたうちの一人が声をあげる。 「あれがこんな事できると思ってるのか?」 「いや、そうだけどよ」 「だいたい、あれが外に出てこれるわけがねえ」 「そうだそうだ」
2015-07-07 23:16:15@Misokatu1129 誰もが口々に男の言ってる事を否定した。 無理もない。 男が言ってるように、この船にはもう一人乗船してる者がいる。 正確に言えば、一人ではないが。 それを入れれば、確かに容疑者の範囲は広がるだろう。 だが、それは本当にあり得ないと思われた。
2015-07-07 23:18:29@Misokatu1129 第一に、それは厳重に封鎖された檻の中にいるので、外に出られない。 第二に、仮に出たとしても、そんな行動に出るとは考えられない。 特に二番目の理由の方が、その場にいた全員に、それが犯行に及ぶ可能性を否定させた。
2015-07-07 23:19:42@Misokatu1129 「だいたい、あんなのにそんな事する智恵があると思ってんのか?」 「いや、さすがにそうは思わねえけどさ」 「だったらバカな事いうなよ」 まわりの者達は口々にたしなめる。 「あれがやったなんて────ゴリラがよ」 その一言で、笑い声が起こった。
2015-07-07 23:20:56@Misokatu1129 そう、奥の船室に、それも檻の中に捕らえられてる者。 それは、ゴリラだった。 この船に乗船する男達が捕獲した。 当然ながら、この捕獲、誰かの許可を得てるわけではない。 そんな許可がとりたてて必要というわけでもなかったが。
2015-07-07 23:21:57@Misokatu1129 それでも、この船の航海目的の中に、動物の捕獲や運搬などはない。 出港の前に提出する出港許可の要請書には、ありきたりの物資の運搬しか記載されていない。 もちろんそれは嘘ではない。 運搬という業務はしっかりこなしてる。
2015-07-07 23:23:35@Misokatu1129 それとは別に、彼らが独自の思惑として、主に貧困からの脱出として行った事なのである。 そう。 これは密漁なのだ。 バレれば相応のお咎めをくらうだろう。 だが、それを恐れるような者達ではない。 そういう事に手を染めて生きている者達なのだから。
2015-07-07 23:24:41@Misokatu1129 だが、そんな状況だから、こんな事件が起こればそれなりの騒ぎになる。 後ろ暗い事をやる物騒な連中だ。 誰がいつ後ろから刺してくるか分からない。 日頃の恨みや、金銭の分け前でもめる事なんてしょっちゅうである。
2015-07-07 23:26:10@Misokatu1129 また、そんな分かりやすい理由がなくても、ただただ虫の居所が悪かったり、ちょっとした言い争いでナイフを抜くなんて事はよくある。 だからこそ、明確な動機がなくても、誰もが被疑者になりえた。 今、この船にいる者達全員は、自分以外の全てを疑っていた。
2015-07-07 23:27:41