【アット・ア・ハイク・バー・ナイト】

#忍殺深夜の真剣創作一本勝負 特別編向けな。時間オーバーのためたんとうしゃはケジメしました
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しまな @cimana_ns

チリンチリン。引き戸に取り付けられたフーリンが涼しげな音を立てる。「ドーモ」「ドーモ」店主とたった今入店したスーツ姿のサラリマンがアイサツを交わす。ここはネオサイタマのアッパー階級エリアにはありふれたバーの一形態、ハイク・バーである。

2015-07-12 13:08:35
しまな @cimana_ns

ハイク・バーの形式はシンプルだ。客が注文するのはサケ、そしてハイク・ノート。客たちはエンダイに座り、季節替わりの物理庭園の風景を詠み、その場に居合わせた者同士でのハイク・コンペティションを行う。様々なストレスに曝される上級サラリマンにとって、この場所は癒しのいわば隠れ場であった。

2015-07-12 13:13:19
しまな @cimana_ns

既にエンダイにはサムエ・ウェアーに着替え(店のロッカーにキープされた私物だ)ハイクを詠むサラリマンが二人。「風鈴に/季節を知ります/インガオホー」「我々に季節は関係ないですからね」「そうですね。私もここに来るまで30時間働きました」「明日からまた30時間です」

2015-07-12 13:16:33
しまな @cimana_ns

ナムアミダブツ、彼らのような会話はそう珍しくもない…上級サラリマンは得てしてその立場に比例した労働時間、そしてUNIXめいた人間性を得る。その点でもこのハイク・バーは貴重と言えた。「エート…ハイク・ノートはプライベート、企業への忠誠ハイクを詠む必要は無しな?」

2015-07-12 13:19:55
しまな @cimana_ns

入店サラリマンは店員から手渡されたハイク・ノート2ページに記載されたルールに目を通す。彼は半ば安心したような面持ちでスーツに留めた雷神エンブレムの社章を外した。そして奥へ。「隣、よろしいでしょうか?」サラリマン二人が返事。「ドーゾ」「ドーゾ」「ドーモ」入店サラリマンが腰掛ける。

2015-07-12 13:22:58
しまな @cimana_ns

「貴方はこの店にはニュービーですか?」「ええ、たまたま見かけたものでして」「そうですか、では時間の許す限りハイクといきましょう」「私が詠みます」そう言うと彼はハイク・ノートにペンを走らせる。「新人な/風鈴の音/蝉しぐれ」「「ワザマエ!」」「アリガトゴザイマス」

2015-07-12 13:27:24
しまな @cimana_ns

ハイクを詠んだサラリマンがぎこちなく微笑む。「実は妻が昨日戻ってきたんです」「そうですか、それはメデタイ」「メデタイですね」スーツ姿のニュービーは庭園へと目を向ける「もうすぐ娘が帰ってくるんですよ」「メデタイなことですね」「でも、長く会っていなかったから…どうすればいい物やら」

2015-07-12 13:31:48
しまな @cimana_ns

「上手くできるかどうか」そしてため息。「ドーモ、ご注文いただいたサケ・ボムです」ウェイターの声。振り向くと三人分のサケ・ボムが注文されている。「これは」「メデタイなことがあったのです、これは私の奢りですよ」「アリガトゴザイマス」…それから暫く、彼らは庭園を眺めていた。

2015-07-12 13:45:36
しまな @cimana_ns

「そろそろオイトマします」ハイクを書き終えたスーツ姿のサラリマンが口を開く。「そうですか」「明日もガンバロ」「こちらこそ…ありがとうございました」立ち上がったサラリマンが詠む。「親心/ハイクで包む/あたたかみ な。オソマツさまでした、では」「「オタッシャデー」」

2015-07-12 13:59:46
しまな @cimana_ns

ハイク・バーを出たサラリマンは懐から雷神のエンブレムを取り出しスーツに装着、顔を上げて歩き出す。彼には不思議と、初対面になる娘と上手くやれる気がしていた。

2015-07-12 14:06:29
しまな @cimana_ns

【アット・ア・ハイク・バー・ナイト】 終わり

2015-07-12 14:07:08
しまな @cimana_ns

(テキストカラテを終えて) ・初めは割りといけた、が途中からスシ切れな ・ハイクを詠むのをかんがえずに書きだしたためのアレ ・けっきょくニンジャでなかったね

2015-07-12 14:41:59