twitter詩小説【レッズ･エララ神話体系】中世編「時雨とエヴィル」シリーズ、「オーズ界秘境探検」第1章「エンドダン先端観測街」（後半）

8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

――詩小説、レッズ･エララ神話体系、中世編「時雨とエヴィル」 「オーズ界秘境探検」第一章「エンドダン先端観測街」（後）

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【前回（前半、幕間）のあらすじ】エンドダン先端観測街に来訪した時雨とエヴィル。そこで金髪幼女の博士、ミシェと出会う。こいつバカップルだった。まあそれはともかく、この西側の暗黒大陸・オーズ界は、それそのものが召喚魔法陣の磁場であり、この世の神隠しをまねくマヨイガであった。

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――遠野にては山中の不思議なる家をマヨヒガと云ふ。マヨヒガに行き当りたる者は、必ず其家の内の什器家畜何にてもあれ持ち出でゝ来べきものなり。

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――此聟実家に行かんとして山路に迷ひ、又このマヨヒガに行き当たりぬ。家の有様、牛馬鶏の多きこと、花の紅白に咲きたりしことなど、すべて前の話の通りなり。（柳田國男「遠野物語」63,64）

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会談がとりあえず終わって茶を飲む時雨とエヴィルだった。目の前にはミシェが優雅にくつろいでいる。博士との会談は、主にエヴィルとの学術的な会話で終わった。この場合時雨は口を挟まんほうがいいだろう、ということを思い、ゼンソンが出してくれた薬草茶を飲んだ。癖になる苦さだった。1

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「で、どういうことだったのかな、エヴィル君」知らぬことを質問、少女の美徳「ざっくりまとめると、この地は過去にあれこれあって、異世界・異次元との結びつきが非常に強い場所になっている。が、異世界・異次元からポイポイとモノがくるというわけでなく…」エヴィルは妙に神妙な口ぶりになった。2

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「むしろ問題は、この結びつきの強さゆえに、この大陸全土が奇妙な磁場を得ていることだ。それが……この世のあっちこっちから、モノを召喚・移転しまくっているのだ。煉瓦や石畳とかこの土地に」「召喚しまくっている……？　ひとも？」「人が雲隠れすることはよく聞くよな」「うん」3

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「マヨイガ、というものがある。山里の土着神的現象だが、ひょいとそういう異世界に引き込まれて神隠しにあっちまう、というものだ」「その【マヨイガ】が……この磁場を持った、西側の大陸全部、だというの？」「簡単に言えばそうだ」4

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「はー……スケールの大きい話だね。でも、じゃあ、なんで東側のひとたちは、こっちの西側にこないんだろう。探し人もいるだろに」「私ガ説明シマス」ゼンソンが口を開いた。その目には、防人としての武力とは違ったおちついた知性があった。「東側ノ帝国ハ厳シイ圧政ヲ敷イテイルノはゴ存知デスネ」5

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「まあそれなりに繁栄はしてたけど、いろいろ国体設備なり社会制度なりが限界になってたわな。兵卒の大量解雇とか」エヴィルが言う。「簡単ニ言エバ、【イラナイヒト】ガ多クナッタノデス」「ふーむ」時雨は納得する。6

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「ソノ【イラナイヒト】ヲ、極地探検トイウ形デモッテ、コッチノ大陸ニ葬ルノデス」「葬る……！」その剣呑には驚く時雨であった。しかし気づく。同時に。「じゃあ、ゼンソンさんが最初【引き返せ】っていったのは……」「貴方タチは【イラナイヒト】の類ニ見エナカッタ。モシ奴ラナラ斬リマス」7

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「要するに国家的口減らし、ないし粛清ってわけだ。島流しだな。だが……」エヴィルが口ごもる。「ここが【マヨイガ】だとして、そこから脱出しようと考える人間はいないのか？」ミシェが答える。「様々ね。この地のポテンシャルに惚れる人もいれば、この地の野蛮性に絶望する人もいる」8

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「そもそもこの地は【マヨイガ】だから、神隠しにあいそうな人がそもそも来るってわけね、召喚される場合は。そして、そういう神隠しに会いやすいひとは、どうすることも出来ないの。既知世界との繋がりが失われかけているから」9

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「じゃあお前さんたちはなんなんだ？　マヨイガに率先している、っちゅう。しかもマヨイガを【先端観測街】として守り、【先端観測街】として学究に専念する。それは静謐を主とするマヨイガのそれではないだろう」エヴィルは根幹の疑問を問うた。10

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「……私たちも、結局はこの地に召喚されたモノなのよ」ミシェは言う。「私も神隠しにあった、ってわけね。でも、それでも、私たちは私達。どのような場所で召喚されようとも、私は私よ。それに……悪いことばかりではないわ。恋人もできたし」「だからそれはええっちゅう」11

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――ちょいと長めに休憩――

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――詩小説、レッズ･エララ神話体系、中世編「時雨とエヴィル」 「オーズ界秘境探検」第一章「エンドダン先端観測街」（後-2）

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確かにミシェは「どこにいても私は学者、時空魔術師」というスタイルを崩すことはなかろう。それが天才の根源「自分に対する自信」である。魂と手腕と思考とアウトプットが全部一体化しているもの。それが天才なのだ。それを才能の奴隷といわばいえ。とにかくミシェは博士なのだ。12

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だがそれは彼女のような天才であるからこそ、いえることであって。「どこぞよりムリクリ召喚されてきたひと」がこの大原始森林でさあレッツシンプルライフ、というのは「フ・ザ・ケ・ン・ナ！」と憤慨したりするだろう。そもそもこのオーズ界、超めちゃくちゃバケモノとかいたりする。13

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よって――情報が必須となる。先端観測街エンドダンは、この地に住まう……住まわされたモノとして、何よりも情報が必須なだけに、第一級の情報収集施設が必要となるわけだ。同時に、それだけの情報収集処理能力がある街は、外界の情報をも得ることが出来る。この街が前線基地たるはソノ故。14

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「さて、今日のお仕事ね」ミシェは午後のおかし談笑を終わりにして、ゼンソンを連れ家を出る。「どーせだから着いてきなさいあなたたち」時雨とエヴィルに声をかける。どうやらこれから「来たるモノの観測」がはじまるらしい。街の中心部の二股の天文台のような施設に、恋人つなぎで行くミシェ。15

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V字型をした巨大望遠鏡を有した天文台で、まずミシェは左側の望遠鏡を見る。「今度は城が落ちてきたわね……」「城！？」時雨がびっくりする。「見てみる？」「見たい見たいです」時雨がミシェの望遠鏡を覗き込むと、空中に次元ゲートが発生し、白亜の大宮殿がずむむむと地面にめり込んだ。16

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「ケタが違うね……」時雨は呆然とした。「あ、ひょっとして……」「ソウデス、あのようなもはや廃墟の城から、我々ハ煉瓦や石細工ヲ持ッテキマス。……ソウシナケレバ、コノ街ハ固クナリマセン」「固く？」「堅牢性という意味よ」17

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「ここがオーズ界でも重要な場所だということはいったわよね。でも、この街が次元の捩れと無関係ではない……いやむしろ【この次元外、もしくは別の地域のモノ】を積極的に街で使い、研究し、日常で用いてるから、やっぱり磁場は発生する。何か来るかもしれない。それに対する備えよ」18

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「それで、もうひとつの望遠鏡は、【あっち＝東の世界】の防衛観測用なのだけど、今日はゼンソンが貴方達を連れてきたから、別に見なくていいわね」「んだなぁ……ときに、あの城、このままうっちゃっておくんか？資材取ったら」そこで、ミシェはニヤりとした。「まさか」19