替え玉ファン

力水(ちからみず) かける @see_yalla

516【替え玉ファン】 「たぶん取れると思うけど、薫くん、午後から雑誌の取材じゃなかったっけ？」「うん。大丈夫だよ。こんな事になるだろうと予想つけてたから、取材は夕方6時に変更してもらってるよ」薫くんの勘の良さに感心しながら、ヒカルは鈴木に電話を掛けた。「あっ、繋がったよ」

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517【替え玉ファン】 「ゴメン。ボクが出る！」薫くんはヒカルから携帯を受け取ると「鈴木さん、薫です。さっきヒカルくんといっしょに穴類巻に会ってきたよ」「そうでしたか。それで、何といって来たんですか？」鈴木の質問を薫くんはスルーして、「詳しくは会って話すから、今、どこですか？」

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518【替え玉ファン】 「私は合同庁舎です。薫くんは、どこですか？」「ええっと…まだ福島辺りだから、そっちへ行くよ。すぐだから」その声に鈴木はすぐに返答した。「いや、ここで会うのはマズイ。穴類巻の息のかかった奴に見られるとも限らないから。それよりは、中央郵便局で落ち合いましょう」

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519【替え玉ファン】 「うん、分かった。じゃ、切ります」と言って、薫くんは、ルームミラーに映ってる運転手を見ながら「ゴメンなさい。行き先変更です。悪いけど大阪駅前の中央郵便局に行って下さい。たぶん、そこで降りると思います。近くてゴメンね」「気い使わんで下さい」と運転手は笑った。

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520【替え玉ファン】 薫くん達は中央郵便局の前でタクシーを降りた。「うわー！あっついなー。夏の日差しが強過ぎるよ。ヒカルくん、中に入っとこう」「そうだよね。もっと合同庁舎の近くにしてくれたら良かったのにね」 中に入ると薫くんは自分のiPhone を掴んで、誰かに電話していた。

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521【替え玉ファン】 「あっ、ユキちゃん。」「薫くん、なーに？」「あのね。ユキちゃん、あれ得意だったよね？」「あれって？ああ、縛りのこと？」薫くんは、ヒカルの方をちょっと見て、小声になった。「そう。それよ。明日の晩、暇？」「えっ！暇だけど…薫くん、僕に縛らせてくれるの？」

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522【替え玉ファン】「違うよ。ボクに言い寄ってるおじさんを縛って欲しいんだ」「えっ、薫くんに言い寄ってるって、そんなの相手にしなけりゃいいのに」薫くんは、ヒカルの方をチラ見して、小声で続けた。「かなり危ないことなんだけど、ユキちゃんでなきゃできないから…頼まれてくれる？」

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523【替え玉ファン】「なんか、どうしてもやらなくちゃいけない事なんだね？分かったよ。薫くんが僕に頼み事をしてくるの、久しぶりだし、いいよ。今からなの？」ユキちゃんの返答に薫くんの眼が輝いた。「ありがとう！ユキちゃん！」思わず声が大きくなったので、離れて自分を見てるヒカルに気づき

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524【替え玉ファン】薫くんは、また小声になった。「ボクの部屋で、明日の晩に一応仕事の話で会う事になってるんだけど…それは口実でボクは、そいつに抱かれるかも知れないんだ」「それで僕がそいつを逆に縛るんだね。面白そう！」「いや、油断できないんだ。相手は、あの穴プロの社長だからね」

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525【替え玉ファン】ユキちゃんの電話の声が大きくなった。「えー！薫くん、チャンスじゃない！思い切って抱かれたら、穴プロで大々的に売り出してもらえるかもだよ」「ユキちゃん、ボクがそんな事する奴だと思ってるの？」「そうだね。薫くんってそんなのやらない子だったね」そこへ鈴木がやって

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526【替え玉ファン】来たので薫くんは、慌てて「ユキちゃん、とにかく明日の6時に来てね。詳しいことは、その時するから…」と言って電話を切った。鈴木は二人のそばに近づきながら言った。「待たせましたね。あまり庁舎の近くでは、君たちに会うのはまずいですからね。じゃ、喫茶店に入ろう」

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527【替え玉ファン】プツッと切れたスマホの画面を見つめながら、ユキは思った。…僕と会うのが9時って、始めるのは結構遅いんだな。そんな時間からなんて、仕事の話するわけないな。穴プロの親父、みえみえだよ、ホント… 薫くん達は、近くの喫茶店で奥のテーブルを見つけ、座った。

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528【替え玉ファン】みんな飲み物をオーダーすると、薫くんが口火を切った。「Xがボクと二人っきりなら仕事の話をしてくれるということなんで、明日の晩、ボクの部屋で会うことにしたんです」鈴木は、頷きながら「そうですか。会う場所に、こっちが監視しやすく出来るから、それは上々ですよ」

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529【替え玉ファン】鈴木は続けた。「だが、奴の事です。すでに薫くんの部屋は知られてるでしょう。我々は、薫くんの部屋に盗聴機を仕掛けますが、明日の昼間にガス器具の点検の服装で行きますので、薫くんは昼には自宅に戻っておいて下さい」「分かりました。でも、朝は、いつも通りでいいよね」

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530【替え玉ファン】薫くんの問いに鈴木もあっさり答えた。「そうですね。いつも通りの方が相手も安心するでしょう」あと、薫くんは、ユキちゃんもXとの対面に加わることを告げた。最初こそ鈴木は反対したが、相手がＸ一人なら十分対処出来ると判断し、薫くんの計画に賛成した。打ち合わせが終わり