風邪【横山家】

かおり @orange_shake_

◎横山家 横山パパ…学校の先生。照れ屋でクールぶってるけど本当は優しくて子供っぽい。 まる母さん…あたしンちのお母さんみたいなの。元気いっぱいだけどちょっと、いやかなり変。 信五お兄ちゃん…しっかり者の兄。だいぶ頭固めの昭和男。 弟忠義…ぐーたら大学生。超超超シスコン。

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◎会社の皆さん 錦戸さん…かっこいい上司。優しさを素直に表現できない不器用さん。渋谷くん大好き 渋谷くん…上司を敬う気のない後輩。先輩からかうの大好き。でも憎めない。 章ちゃん…同期であり彼氏。優しい。 章ちゃんの存在は横山パパと信五お兄ちゃん以外の家族、社内全員が公認。

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【風邪・1】 横山家の人々は、風邪をひきません。 なぜなら… 「風邪なんか気持ちでひくもんや。気合いが足りてへんねんそーいうのは！」 と言うのは、信五お兄ちゃん。 「たくさん笑う人は風邪ひかないって昔からよく言ったものですよリバッサァィ」 と、お母さん(井上陽水風)。

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【風邪・2】 「あっはっはっは！」 それを聞いてお母さんの言う通り爆笑する弟。 「帰ったらただいまより先に手洗いうがい！納豆とフルーツ毎日食って、よく寝てたら健康。」 唯一まともな風邪予防をするお父さん。 こんな家族に囲まれて、風邪知らず！ の、はずだったのですが…

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【風邪・3】 「…ごほっ」 数日前から、喉の痛みと頭痛、そして寒気。典型的な風邪の症状に苦しむ私。 仕事はちょうど新しい案件の締め切りが近いし、家族に風邪ひいたなんて言えないし自分でも認めたくないから騙し騙しでいつも通りに過ごしてきた。 「あれ、朝飯食わへんの？」

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【風邪・4】 いつもの食卓。 お父さんがいつもと違う私に気づいた。 「あ…うん、昨日飲み過ぎちゃって。」 「何やねん、年頃の娘が平日から二日酔いかい。」 「えへへ。」 上手く誤魔化せた。 「何、寒いん？」 今度はお兄ちゃん。

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【風邪・5】 ブランケットを羽織ってもまだ寒くて、膝を抱えてしまっていた。 「んーん、眠いだけ。」 「早よ目ぇ覚まさんかい」 軽く頭を小突いて新聞を取りに行った。 セーフ。 「おはよー♡ぐはっ」 朝っぱらから背中に抱きついてきたシスコン弟を裏拳一発で黙らせるのも朝飯前。

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【風邪・6】 「毎朝毎朝、やめてくれるかな。」 「○○、今日いつもよりあったかいな♡ちょっと熱いぐらいやで。やだーやらしいっ！♡」 こいつに関しては心配にも及ばない。 怖いのは、キッチンから黙ってその様子を見つめているお母さん。 お母さんに隠し事はできないんだよなぁ…

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【風邪・7】 「シャケェェェェ！！」 訂正。黙っていませんでした。 そうだ、お母さんの口が尖ってるときは自分の世界に入ってるときだった。 軽く朝食を済ませて、家を出ようとすると。 「なーぁ、一緒に二度寝しよぉ？」 と何故か甘えてくる弟。

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【風邪・8】 「ふざけんな。電車あるからもう行くよ。あんた大学は？」 「今日は昼からー。会社までは俺がバイクで送ってくから、な？ちょっとだけ。」 「アホお前離せ、タツ。」 私を助けてくれたのはお兄ちゃん。 「バイクなんかこの時期寒いやろ。俺が車で送ってくわ。」

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【風邪・9】 「いや、お兄ちゃん私電車…」 「今日最初の営業先お前んとこの近くやねん。道案内がてら乗ってってくれへん？」 「あ、そういうことなら…」 「あと15分したら出るから。それまでは二度寝でも何でもご自由に」 「やったー♡」 抱きついてくる弟。

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【風邪・10】 引き離す体力もなくてそのままにしていたら本当に15分で少しうとうとしてしまっていた。 「○○、行くで。」 お兄ちゃんの声で目が覚めた。 慌てて起き上がって、お母さんが用意してくれたお弁当の袋を持つ。 「重っ」 思わずよろける。 「何やっとんねん、貸せ。」

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【風邪・11】 いつもより異常に重いお弁当袋の中身を確認する前にお兄ちゃんに奪われて、後をついていくしかない。 「ほれ、乗れ。」 お兄ちゃんが開けてくれたのは助手席じゃなくて後部座席のドア。 「お兄ちゃん、朝から天然…」 「ちゃうわボケ。ええから乗れ。」

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【風邪・12】 言われた通り後部座席に乗ると、そのまま椅子を倒されて上から大きめのブランケットをかけられる。 あれ、これ… 「たつの寝床から奪ってきた。」 「忠義泣いちゃうよ。」 「ええねん。」 後部座席のドアを閉めて、運転席に乗る。 「ごめんな。」 「え？」

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【風邪・13】 何が？ 「体、しんどいんやろ。」 「え…」 バレてる？ 「俺が、風邪ひく奴は気合いが足りんとか言ったから、言い出しにくかったんやんな。」 「いや別にそういうわけじゃ…」 どちらかというと、風邪ひいたことを認めたくなかったのは私です。

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【風邪・14】 「風邪言うてもウイルスやからな。季節の変わり目なんか、注意しとってもなるもんはなるから。お前は悪ない。」 運転しながら、前を見たまま話すお兄ちゃん。 「ちなみに営業先はお得意さんやから道案内なんかいらん。寝とけ。」 私をチラッと見て、エアコンの温度を上げた。

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【風邪・15】 「ちょっとコーヒー買うてくる。なんかいるもんあるか？」 コンビニに止まったらしい。 「ううん、大丈夫。」 「すぐ戻るから」 本当にその言葉の通り、お兄ちゃんはすぐに戻ってきた。 私の横のドアを開けて、私の膝にコンビニの袋を乗せる。 「……？」

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【風邪・16】 中を覗くと、マスクとのど飴。 マスクはいい匂いのするピンク色のマスクだし、のど飴も辛くない甘いフルーツのど飴。 「お兄ちゃん…」 「どこまで頑張るかは自己責任やぞ。」 「…はい。」 お兄ちゃんは本当に優しい。 自分のコーヒーなんか買ってないじゃん…

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【風邪・17】 忠義のブランケットがあったかくて、悔しいけど忠義の匂いに安心して、会社に着く頃にはすっかり眠ってしまっていた。 お兄ちゃんに起こされて、髪を整えて車から降りる。 やけに重いお弁当袋を持ったお兄ちゃんが苦笑いする。 「気付いとったのは、俺だけちゃうみたいやな」

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【風邪・18】 「え？」 「このブランケット、俺がタツの寝床から持って来たわけちゃうで。あいつが勝手に俺の車に乗せよった。 あと、あいつ昨日の夕方から朝まで寝とったからさすがに二度寝はいらんかった思うで。」 「へ…」 「頑張ってこい。でも無理だけはすんな。」

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【風邪・19】 「今日親父がテスト前で学校休みやって言ってたから、なんかあったら親父に電話せぇ。」 「うん、」 「おし、いってらっしゃい」 お兄ちゃんに乱暴に頭を撫でられる。 「あれー、先輩？♡」 この声は… 振り返ると、やっぱり。 「…おはよう、渋谷くん」

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【風邪・20】 「おはようございます！先輩、こんなええ車でイケメンのお送りなんて、隅におけないっすねー♡」 「紹介するね。兄です。」 兄、の部分を強調して言う。 いらない誤解すんな。その好奇心丸出しの目を何とかしなさい。 「どうも、妹がいつもお世話になっておりますー！」

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【風邪・21】 イケメンと言われて気を良くしたのか、お兄ちゃんもノリノリで挨拶。 「あー！お兄さんっすか！いやー、こちらこそ妹さんにはいつもお世話になってますぅ。あ、渋谷と申しますー。」 「おぉ、どうもどうも！」 何か意気投合してるし。 おい、ちゃっかり名刺交換すんな。

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【風邪・22】 「お兄ちゃん、私もう行くね。」 「おん、気ぃつけてな！」 「では、僕も失礼します。」 「妹のこと、よろしゅうたのんますー！」 お兄ちゃんが車に乗ったのを確認して、渋谷くんとオフィスに入る。 「お兄さん、脚長いっすねー！」 「そこ？(笑)」

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【風邪・23】 「弟さんも男前やし、すごい家系っすね。」 「そりゃどうも。」 「いや〜、安田さんという人がありながら他の男の車で登場するから焦りましたよ！」 「それはそれは。ご心配なく。」 「珍しいっすね、家族の送りなんて。寝坊っすか？」 「ん…うん、まあね。」