自分は薄暗い石段を駆け上がっている。もはやどれぐらい上ったか、わからない。時々思い出したかのように現れる窓は、通気のためだけに存在するらしく、小さく、床より遙かに高いところにあって覗くこともままならない。 自分がいるそこは美術館であり、城塞であった。 #夢の話
2015-07-17 23:44:54表向きは古い城塞を生かした、おもむきある美術館。実際は遠い昔からあるモノを守り続けている、城塞であった。 階段の最上部に、自分はたどり着く。軽く息を整え、扉を開く。目の前に城塞の屋上と、抜けるような青空が広がった。 #夢の話
2015-07-17 23:48:33素早く視線を走らせ、目的のモノをすぐそばに見つける。この城塞が長きにわたって守り続けてきているモノ。 それは扉であった。城門のように大きく重厚な扉。 しかし、その扉の後ろには何もない。部屋も建物も隔離された区画も何も『無い』のだ。 #夢の話
2015-07-17 23:52:09あるのは扉と、その扉をおまけ程度に縁取っている石壁のみ。 だが、コレを守るためだけにこの城塞は存在し、美術館に形を変えてなおその使命を果たし続けているのだ。 その扉の目の前に立ち、舌打ちする。 少し考えれば当然であった。扉は数多の錠と鎖で、封印がされていた。 #夢の話
2015-07-17 23:55:15しかし、中にはもともと付けられていた錠が朽ちてしまったのか、比較的新しいモノも見受けられる。コレならある程度のスキルを持った者がいれば鍵がなくても外すことが可能かもしれない。 先程から通話状態のままにしておいた携帯電話に耳を当てる。通話先にいるのは仲間の女性だ。 #夢の話
2015-07-17 23:57:56扉を発見した事と状況を報告し、近くにいる仲間をこちらによこすように要請する。 女性は快諾し、しばらく待つように自分に告げる。そのついでに正門の方の城壁との間には深い溝があるから見ない方がいい、との忠告をしてくれた。 #夢の話
2015-07-17 23:59:46時間があったせいだろう。自分は怖いモノ見たさに、ほぼ反対側であるそちらに移動し、ちらりと見てしまう。 後悔した。9階以上の高さがあった。 見るんじゃなかったと、眩んだ頭を押さえながら後退すると、後ろに何かがいることに気がついた。 #夢の話
2015-07-18 00:02:31甲冑を着込んだ兵士が2人、屋上の中央付近に立っていた。さっきまでは確実にいなかった。賭けても良い。 条件により出現するようだと、女性が教えてくれる。通話口から声と一緒にPCの操作音が小さく聞こえてくる。 #夢の話
2015-07-18 00:04:26道理でさっきまでいないと思った。と、自分は返しながら携帯電話を耳から離し、ポケットにねじり込む。甲冑を纏った1人が派手な金属音を立てながら、こちらへと近づいてきたからだ。 #夢の話
2015-07-18 00:05:50甲冑を着込んでいるせいか、動きが異常に遅い。コレならば大した脅威ではないし、不利な状況になっても全力で走れば戦闘を離脱することが出来るだろう。そう判断しながら、手榴弾を取り出す。 戦いの基本は、先手必勝。 甲冑との距離を保ちながらピンを抜いた手榴弾を、頭部に投げつける。 #夢の話
2015-07-18 00:06:362つの手榴弾が文字通り、甲冑の目の前で爆発し、甲冑の頭部と上半身の少しを消し飛ばす。 崩れ落ちる甲冑。自分はすぐさま距離を詰め、甲冑の中身を確認する。 やはり、誰もいない。 #夢の話
2015-07-18 00:08:50甲冑の中には空洞が広がっていた。内部の背面部に半分焼け焦げた札が、名残惜しむように張り付いているだけだ。その札も黄ばみ、随分と劣化してきている。 忠誠か、呪縛か、それとも…… 自分は肩をすくめる。 #夢の話
2015-07-18 00:10:47不意に目の端に光を感じ、顔を上げる。と、もう一人の甲冑が片手を高々とあげていた。その手の先には激しい雷を纏った光球が浮いている。 どうやら、こちらの甲冑に手を出したことで、あちらの甲冑の攻撃範囲にも入ってしまったらしい。しかも、こちらは魔法兵のようだ。 #夢の話
2015-07-18 00:11:36とりあえず、倒した甲冑を引きずりながらもう一人の甲冑から距離をとる。動かなくなった甲冑は中身が無いせいもあって随分と軽かった。 少し距離が取れたところで、倒した甲冑の内部や外装を漁る。少しでも役に立つ武器やアイテムが欲しかった。 #夢の話
2015-07-18 00:14:19手に入ったのはまず、槍。だが、妙な槍だった。長さはどう長く見積もっても1メートルもない。持ち手の長さも辛うじて片手で握れるぐらい。肝心の本体部分は銛の穂先のように全体がギザギザして、いかにも重そうで、刺すのにも振るのにも一苦労しそうだった。 #夢の話
2015-07-18 00:15:45他には鍵が一つ、手に入った。扉の鍵だろう。だが、形は自転車についているのような鍵で、錆もついていないところから、新しい物のだと推測できた。これならスキルがある者なら鍵がなくても開けられるだろう。 #夢の話
2015-07-18 00:18:18そしてもう一つ、手に入ったものがある 和傘だ。これも槍と一緒で全長1メートルほど。傘の部分の色は綺麗な朱色で彩られ、骨と柄の部分は艶やかな黒で塗られていた。なかなかの美しさである。 なんでやねん つっこみを入れながら、思わず投げた。疑問と突っ込みどころが多すぎる。 #夢の話
2015-07-18 00:19:10まず、原材料が紙と竹だ。武器としても防具にしてもモロすぎる。しかも、中世ヨーロッパ風のこの城塞でなんで遠いアジア圏の和傘が手にはいるんだ。 次々と湧いて出る疑問点に頭を抱えて、ため息をつく。 #夢の話
2015-07-18 00:21:50到底、防御などできるとは思えない和傘が開いたまま、光球を掲げている甲冑の近くへとぽとりと落ちた。よく見ると、どうやらこちらの甲冑は鎧の形からすると女性のようだ。 #夢の話
2015-07-18 00:22:58先ほどの甲冑よりもゆっくりとこちらに近づいてくる女兵。掲げる光球からは雷がほとばしり、幾筋かの雷は地面を這って近づく敵を焼き尽くそうとしていた。近接戦闘は難しそうだ。 #夢の話
2015-07-18 00:24:45そんな中、床を走る雷の中の一つが、和傘を直撃した。 瞬間、風船を割ったような音が響く。と同時に、閃光が煌めき、視界を白く染めた。 反射的につむった目を開けた時に残っていたのは、かすかに揺れる無傷の和傘と、黒こげになって膝から崩れ落ちる女兵の姿だった。 #夢の話
2015-07-18 00:28:44