彼は突如として現れた"香辛料屋"と契約を結ぶことに。
「…………契約に文句は無いがね、私の噂をどこで嗅ぎ付けたのやら」 (二階の窓から路上を見下ろすと、事務所の前で止まっていた一台の馬車が煉瓦造りの道を進み始めた。先程まで政治家の彼はこの部屋である人物と話し合っていた。)
2015-03-19 19:57:22(相手が持ちかけたのは一つの契約。彼の必要とする機会に特定の薬物を提供する代わりに、相手への行政活動を極めて緩めるというものだった。一々胡散臭いバイヤーを仲介するよりはその契約を飲むべきだと判断した彼は頷いたのだが、今ひとつ腑に落ちない。)
2015-03-19 20:00:58(市民の味方を装い、表面上は善良な政治家として生きてきた筈だ。しかし薬物を出汁に契約を持ち掛けられたとなると、何処かから彼の黒い噂が流れ出たのだろう。話が話であるため、カマを掛けられたとは考え難い。彼は表情を曇らせた。)
2015-03-19 20:04:45「…………まあいい、顔も名前も覚えた。住所も違いないだろう。怪しい動きをしたなら殺せばいい」 (答えのない問いを続けたとてキリはない。彼はネクタイを緩めると、硝子のテーブルに乗った契約書を手に取った。こんなものまで作ってくるとは実に用意周到だ。)
2015-03-19 20:07:45(淡い胡桃色の癖毛。品のいい衣類は最近誂えたもののように見えた。金があるのか、それとも見栄か。馬鹿なバイヤーは自ら薬物に嵌る。頻繁に彼へ出向かせ、異変の有無を確かめねばならない。) 「いい暇潰しにはなるだろうね。……彼の店は何と言ったかな、確か」
2015-03-19 20:10:12香辛料屋もそれほど彼を信用していない模様
「なに!?ガサ入れ!?やだなぁもう、ただの香辛料屋なのに…………まあいいや、気の済むまで見ていってよ。オレには政治家のご加護が付いてるし、」 (来店した警官にまたか、と言いたげな表情で溜息を吐く。狭い店内に何人も入られては堪らないと表通りに出た青年は手持ち無沙汰に小石を蹴った。)
2015-03-25 17:43:54政治家さんのこどもの日
(リビングの背の高い棚から、ひらひらのリボンが顔を覗かせた。娘は嬉しそうに両手で口を押さえる) 「パパは秘密が苦手なのかな?ニーナねぇ、わかっちゃった!」 (今日はこどもの日。つまり、こどもは何かしらのプレゼントを貰うのだ。大好きな父親は自分のためにプレゼントを用意している)
2015-05-05 17:56:10「おはようニーナ、ご機嫌だね」 「お父様!うん、今日はねぇ、すっごく素敵な日なの!」 (既に身支度を整えた父親を目にすると、しゃんと背筋を伸ばしスカートを摘んでお辞儀をする。父親は満足そうにその様子を見るも、娘にプレゼントを手渡す気配はない。淹れたての珈琲を啜るのみだ。)
2015-05-05 17:57:20「そっかぁ、ニーナがリビングに居ると"サプライズ"にならないもんね」 (訝しげに父親を見つめていた娘であったが、リビングを出た際の顔はきらきらと輝いていた。最近覚えたばかりの言葉を呟けば、父親がプレゼントの用意をしやすいようにと庭先で遊ぶことにした。)
2015-05-05 17:58:55「むー……」 (娘は頬を膨らませた。いつまで経っても父親が、あのプレゼントを棚から降ろす気配がない。何度も読み返した絵本を途中で閉じ、新聞に目を通す父親に疑問を投げかけた。) 「お父様、今日が何の日か知ってる?」 (彼は横目で娘を見ると、新聞を畳み微笑む。)
2015-05-05 21:34:36「忘れてしまったなあ、ニーナは知っているの?」 (娘は幼いながらに、わざとらしいとむくれる。プレゼントまで用意してあるのに、どうしても娘の口から言わせるつもりだったらしい。) 「ママ……お母様が教えてくれたの、今日は、こどもの日なんだよ!」
2015-05-05 21:44:12「そうだ、こどもの日だ」 (彼は慈愛に満ちた目で娘を見つめると、席を立ち棚の包みに手を掛ける。娘は目を輝かせ、その時を待ち侘びた。) 「ニーナのお陰で思い出したよ、ありがとう」 (しかし娘の期待とは裏腹に、彼はプレゼントを片手にドアノブを回し出て行こうとする) 「パパ!」
2015-05-05 21:50:57「何?」 「ねえパパ、こどもの日だよ、そのプレゼント、……ニーナのじゃないの?」 (卑しい言動をしてはいけない、と娘は父親から教わっていたため、少々躊躇いがちに彼の持つ包みを指す。既に「お父様」と呼ぶきまりは破ってしまった。) 「ニーナ。こどもの日はね、男の子だけなんだよ」
2015-05-05 21:56:17「じゃあ、それは、…………」 (娘は俯いて黙り込む。誰に、とは訊けなかった。心底愉しそうに口を歪め、彼は今にも泣き出しそうな愛娘の様子を見ていた。派手な装飾を包みに施したのも、娘に一方的な期待を抱かせる為だ。) 「……ニーナ、もういいかな?私は出かけなくちゃいけなくてね」
2015-05-05 22:01:05「うん、」 「いい子だ、お留守番を頼むよ」 (彼は娘の視線に合う高さまで屈み込み、わざとらしくその包みの装飾を見せ付ける。いっぱいに涙を溜めた娘は、呼吸も辿々しく口を開く。確かめなければならない) 「パパの、こどもは、ニーナだけだよね?大事なのは、ママとニーナだけだよね?」
2015-05-05 22:06:53「そうだよ」 (淡白な声と共に扉の閉まる音がして、彼の足音も次第に小さくなった。じゃあそれは誰に、と尋ねる隙すら与えられなかった娘は、ぐずぐずと鼻を鳴らす。丸い涙がぼろぼろ落ちた。) 「ニーナ、も、男の子が、よかった、なぁ、そしたら、パパからのプレゼント、貰えたのに、なぁ、」
2015-05-05 22:14:16そして父の日
「ねえねえママ、今日はごちそう?パパ帰ってくる?」 「そうね、お仕事が早く終わったら帰ってきてくれるわよ」 「パパのお仕事さん、早く終わらないかなー。今日はパパの日だから、お仕事で帰れないなんてかわいそう」 (リボンで飾られた画用紙を片手に、娘は日の落ちた窓の外を見る。)
2015-06-21 19:45:41@_politician_q 「お父様、いつもありがとう!……うーん、パパって言いたいなあ」 「……ニーナ、そろそろ夕飯にしましょう。お父様が戻られないのは残念だけど、冷めちゃうわ」 「やだ!ニーナはお父様を待つの!」 (時計が9時近くを指そうが娘は窓辺から動こうとしない)
2015-06-21 19:51:16