@oika 仕事の旅日誌

akio @oika

7月13日。つらいのは、何がつらいと言えぬ日よ。

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7月14日。お金をもらって仕事をするっていうのは、怒られて嫌な思いをするかもしれないことをやるってことなんだよという先輩の定義を頷いて聞き、今回は嫌な思いをしないで終わりたいですねって笑いながら、さっき割り箸を入れ忘れた定員を怒る権利が僕にあるだろうかと考えるホテルへの帰路。

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7月16日。初対面の方との世間話に詰まり、いつぞや酒の席で聞いた、話題に困ったときの呪文「たちつてと なかにはいれ」を思い出す。食べ物、地域、つは…ええと机？積み木？？と考え込んでいるときに、今はホテルから通われてるんですかと話しかけられ、なんだよ考え事してんのにと興が醒める。

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7月18日。最近のプロジェクトでは毎回二人三脚で仕事させていただいていた元請け社の人。偉くなられて、今回の仕事では現場に来てもらえない日が続いていたが、夕刻、携帯に届いたメールには「今日の昼どこ行きました？」しか書いてなくて、そうか信頼してくれてんだなってことにようやく思い至る。

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7月19日。同じチームで仕事している他会社の出張組S氏がウッドベースを抱えて登場。じゃあドナリーからやってみようかと言われて、僕はソリッドギターのストラップに肩を通し、アンプのスイッチを入れた拍子に夢から覚めた休日。明日からは結合試験のことをセッションと呼んでみようか。

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7月20日。広瀬香美を冬のものと決めつけるようにトンボを秋のものと決めつけている僕たちは、毎年、この時期に飛ぶそれを見つけては、もう夏も終わりかねぇと間のぬけたことを言う。盛夏の候。

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7月21日。うんこみたいな仕様変更に、匙も矜恃も投げ捨ててしまいそうになる。もういい、あとはよろしくと言い遺して消えようとしたところに電話をくれて、さっきのは無しって話つけときましたよと、さらっと言ってのける人。まったく俺ときたら、どうしてそのかっこいいほうの役をこなせないのか。

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7月22日。空腹の仕事帰り。コンビニで法外な値を付けられた国産うなぎを見て、「絶滅危惧種でしゅ」って噛んでも誰も笑わない程度に疲弊した僕ら国産ビジネスマン。

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7月23日。雷による停電。舞台が暗転。マシンが一斉にダウンし、静寂の後にやってくる再起動の轟音。遅れて響く悲鳴混じりのざわめき。しかし1時間後には皆、何事もなかったかのように仕事に打ち込んでいた。これだけのサプライズをもってしても、僕らを非日常へと運ぶことはできない。

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7月24日。明日は休みだと言ったな。あれは嘘だ。

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7月26日。この町に一年で一度だけ人の集まる花火大会の日。その熱気を避けるように用もなく遠出して、散会した頃合いを見計らって戻ったが、人の捌けた跡に掃かれることなく散乱したままのゴミ、遊びに区切りを付けられずコンビニ前に未だたむろする筋肉自慢、そんなので結局心は折れてしまうのだ。

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7月27日。今回初めて一緒に仕事をさせていただいてる人と、ようやく馬があってきたというか、意思疎通がスムーズになってきた。帰りたい時間帯になるとそわそわし始めるのとかもわかってきた。今日はこのへんにしましょうかーと言うと嬉しそうな顔をする。

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7月28日。新人君のソースレビューで指摘を挙げる度、優越感みたいな自己肯定感みたいな、嫌な快感が満たされるのがわかる。油断すると「何度もいいますが」「そろそろこういう指摘はしなくて済むように」と、本人をレビューするような言葉を打ち込みそうになり、あわててバックスペースを連打する。

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7月29日。しばらくぶりに現場に顔を出してくれた多忙すぎる人。oikaさん、困る困るって言ってましたけど、僕が来なくても問題なさそうですねと言って早々と引き上げて行った。寂しいですぅなんて男同士で言うのも気持ち悪いからそういう表現になるだろ。察しろ。

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7月30日。こっちにいる間に北海道の夏が終わっちゃったら可哀想でしょ？という御厚意で、ひと夏の一時帰還が認められる。この夏は無駄にできない。無駄にできないぞ。

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7月31日。新千歳に着いて携帯の電源を入れると、1件の不在着信。折り返してみれば仕様変更の対応依頼。僕たちの冒険はまだ始まったばかりだ。（第一部 完）