備忘録8

できた
2
夜狐 @minori_1201

「あたし、国広ちゃんのそういうとこ大好きよ」 「そうか。午前中の書類仕事を居眠りで潰した件の言い訳は他にあるか?」 「塩どころじゃない」 「塩…?誰が料理の話をしてるんだ」 「国広ちゃんのあたしへのアタリが厳しいって言ってるの」 「俺はあんたのそういう所が嫌いなんだ」

2015-08-06 13:39:47
夜狐 @minori_1201

塩対応どころじゃない

2015-08-06 13:40:11
夜狐 @minori_1201

「国広ちゃんはあたしのことが嫌いなの!?」 「何言ってるんだ。そんなわけ無いだろう」 「真顔で言うのやめてくれるこの野郎。…嫌いって言ったじゃない」 「そういうよく分からん言動は嫌いだ」 「それ以外は?」 「言ったほうがいいか?」 「あ、ごめん、無しで。心の準備してから聞くわ」

2015-08-06 13:42:16
夜狐 @minori_1201

@minori_1201 嫌いなとこはたくさんあるけど、それ以外は全部好き。がオミさん本丸の国広ちゃんです。よろしくお願いします。

2015-08-06 13:46:54

酒飲み

夜狐 @minori_1201

「――酒好きが増える」 台所の女王こと審神者の声は悲痛ですらあった。彼女に真っ先にそれを告げに来た面々、次郎太刀と陸奥守吉行、それに五虎退という三名もまた重々しく頷く。 「…そうぜよ」 「大変遺憾ながら」 「…取り分が減ります…」 最後の声が一番悲痛だった。五虎退だ。

2015-08-07 23:06:40
夜狐 @minori_1201

参ったわねと彼女は嘆息した。彼女の本丸、諸事情あって予算は潤沢なのだが(彼女の存在そのものが機密なのでちょっと脅すと割と簡単に予算が降りるのである。そのことをバラすと派手に予算を使いこまれそうなので彼女は近侍と他数名以外にはこの事実を伝えていない)、――エンゲル係数が高い。

2015-08-07 23:07:54
夜狐 @minori_1201

大量に買っておいた塩辛をほくほくのじゃがいもに乗せて頬張り冷酒を呑んで「はぁ」と息をついた五虎退が泣きそうだった。――この絵面見てるあたしも泣きたい、と審神者は思った。

2015-08-07 23:10:30
夜狐 @minori_1201

「我が家のエンゲル係数がこれ以上増えると、他を削ることになるわねぇ」 予算は突けば増える、ということは黙ったままで彼女が告げる。次郎太刀が大真面目に人差し指を立てた。 「よし、じゃあまず主の下着代から削ろう」 「うんふざけるのも大概にしようね次郎ちゃん、着物代減らすよ?」

2015-08-07 23:12:16
夜狐 @minori_1201

「…あ、主様、僕、普段の食費なら削ってもいいですから…お酒だけは」 「ごこちゃん落ち着いてそれアルコール依存症のセリフよ」 一方陸奥守が口笛吹いてそっぽを向いてるのは彼がこの本丸の予算の仕組みを知っている数少ない一人だからである。助けろよ、と目線を送って無視された。

2015-08-07 23:14:17
夜狐 @minori_1201

大体なんだってうちの連中はこんなに酒飲みばかりなんだ。審神者は頭を抱えたくなった。今だって広間の縁側で一升瓶を独りで空にした三日月宗近が欠片も酔った風なく月を見上げているし、その横で缶ビール(5本目)を空けている大倶利伽羅は明日遠征だろういい加減にしろ。

2015-08-07 23:15:51
夜狐 @minori_1201

挙句の果てに丁度このタイミングで台所に顔を出した近侍ときたら 「…肴はあるか」 「他に言うこと無いの国広ちゃん」 「…? 手伝った方がいいか?」 「ではなく!」 「何だ、もしかして材料が足りないのか。それなら買いに行くが」 「たまにあたしキミとの意思疎通が不安になるわ!」

2015-08-07 23:17:39
夜狐 @minori_1201

「安心しろ、俺はあんたと会話してて7割くらいは意志疎通に不安を抱えてる」 「何一つ安心できないしキミ酔ってるわね!?」 山姥切国広は酔って顔色に出ないから面倒だった。何でこの男、性格から成り立ちから名前から全部面倒なんだろう。審神者はまた頭を抱える。

2015-08-07 23:19:41
夜狐 @minori_1201

「主様」 五虎退が心配げにすり寄ってきた。足元の虎も気遣うようにこちらを見上げている。ああ、可愛いなぁ、と審神者はふわふわの癖っ毛を抱き締めた。酒の匂いがする。本丸随一の酒豪の短刀は屈んで彼を抱すくめる彼女に、背伸びをしてよしよし、と頭を撫でてから、 「主様も飲みましょう」

2015-08-07 23:21:21
夜狐 @minori_1201

オミさん本丸一番の酒豪は五虎退ちゃん お爺ちゃんはあれもうザルではなくワクだし「アルコールによる酩酊という概念自体が無いのでは…」とオミさんが疑ってるレベルなので番外とする

2015-08-07 23:27:48
夜狐 @minori_1201

「お酒のアテですか?ええと、日本酒なら塩辛とかさんまのワタがいいです」 「ちなみにお肉は何が好きごこちゃん」 「モツが好きです」 「(内臓)」「(内臓系)」「(内臓ばっかりだ…)」

2015-08-07 23:28:39
夜狐 @minori_1201

「大体予算なんて突くところ突けば出るだろう」 「一応血税!血税なんだからね!?無駄遣いノーよ!?」 「あんた散々酷い目にあってるんだからそれくらい毟り取っても文句を言われる筋合いはないと思うが?」 「国広ちゃんちょっとお言葉を慎んでくださる」

2015-08-07 23:31:28
夜狐 @minori_1201

「何であの子急に過激なこと言い出すのよ」 「(主が絡んでるからだろうけど黙っておこう面白いし)」 「(オミちゃんが絡んでるからだろうけど黙っておこうめんどくさいし)」 「そこの二人、なにか言いたいことがあるの?」 「別に?」「あ、オミちゃん、そっちのボトル空けていい?」

2015-08-07 23:32:49
夜狐 @minori_1201

加州清光と大和守安定は新しい赤ワインのボトルを抱えてそそくさと逃げて行った。万屋で珍しいチーズを買ってきたから合わせたのだろう。あのチーズ全員分は無いよなぁ、と思っていると乱藤四郎が広間で「飲み比べで勝った人だけ食べられることにしよう」と余計な提案をしているのが聞こえた。やめろ。

2015-08-07 23:34:52
夜狐 @minori_1201

悲しくなってきたので審神者は台所の床下収納をそっと開けた。生体認証式で彼女にしか開けられないようにしてある――そうでもしないとあいつらこの場所も荒らしかねない。 床下には彼女のとっておきが入っていた。まずは糠床。それからピクルス。最後に、大玉のメロン。

2015-08-07 23:39:07
夜狐 @minori_1201

メロンに頬ずりした。一つしかないのでこっそり食べようと心に誓っている一品だ。そろそろ食べ頃であろう。問題はどうやって冷やしておくか、だが、まぁ冷蔵庫だって最近鍵を付けたからどうにかなる。多分。きっと。

2015-08-07 23:41:02
夜狐 @minori_1201

「国広ちゃんにだけは絶対分けてやらないわ…」 心に誓う。この間マンゴー分けた時も「手品かそれは」と思う速度で平らげてて有難味もないし、おまけにこっちを物欲しげに見るからついつい自分の取り分を分けてしまうし、大変よろしくない。 メロンは元の位置に戻しておいた。明日にでも冷やそう。

2015-08-07 23:43:46
夜狐 @minori_1201

広間は潰れた刀剣と元気に飲んでる刀剣と、全然関係なさそうな様子で縁側でお茶をしばいてる刀剣と、その横で手酌してる刀剣とで溢れていた。 「後片付けは誰がするの」 腰に手を当てて怒鳴れば、よろよろと何人かの手が挙がったのでまぁ良しとしておく。

2015-08-07 23:47:16
夜狐 @minori_1201

――ちなみに審神者は知る由もないことだが、彼女の近侍は最近大真面目に「生体認証って言っても緊急用のパスワードは使えるだろう?管理者特権があれば何とかならないか?」と考えているのでメロンの命は割と風前の灯である。余談であるが。

2015-08-07 23:48:35
夜狐 @minori_1201

「片付けは明日にするわよ、もうあたしだって眠いんだから!」 肴を作って提供して、飲み過ぎる面子を叱り飛ばして、とちょこまか動き回っていた審神者がようやく縁側に腰を下ろす。 「大変だなぁ俺の孫娘殿は」 「労わってよお爺ちゃん」 「…だ、そうだぞ、山姥切の?」 「俺に振るな」

2015-08-07 23:50:25
1 ・・ 6 次へ