くじ引き交換会

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くじ引き交換会【ふしぎ遊戯】 @fy1moe

面を持つ手が僅かに震えた。後1枚…かつて娘娘がくれた物。あの時よりも能力の扱い方には自信がある。だが面はどうしても作れなかった。それがどういう事か。変化の術かそれとも仲間がくれたこの神水か。それともまた面を張るか。…太一君に「あるがままの己を受け入れろ」と言われたのを思い出した。

2015-08-08 00:17:30

くじ引き交換会【ふしぎ遊戯】 @fy1moe

傷があるのは当然だ。その数が己の成長と迂闊さと誇りを示す。お前は生っちろそうやなぁと言いかけ、けれど薄い傷痕を湯に沈む体のあちこちに見付けた。そういや確か左目にも。つるりとした面の下を思い返して笑いが漏れる。なんや、お前もしっかり生きてきてるんやないか。狐の仮面は無言で苦笑した。

2015-08-08 00:24:08
くじ引き交換会【ふしぎ遊戯】 @fy1moe

キミだって、と答えようとした声を飲む。樹木の掻き傷は稲妻のように引き攣れて残る。大地の擦り傷は星の流れた痕になる。翼宿の体に残るのは真っ直ぐな傷ばかりだ。鋭い刃物の裂いた傷、好んで付けた戦の傷だ。彼我の差を苦く笑うことしか出来ず、井宿は逃げるように湯から上がった。

2015-08-08 00:24:16


くじ引き交換会【ふしぎ遊戯】 @fy1moe

そっと掌に載せられたのは、小さな木の蛙だった。「お土産です」口の部分には隙間が開いていて、横一文字に棒が渡してある。覚書の紙も挟める風変わりな文鎮かと首を傾げると、楽器なんです、と彼が笑った。「星宿様にも癒しが必要だと思って」背中を棒で軽くなでると、コロコロと涼しい蛙の声がした。

2015-08-08 00:37:01

くじ引き交換会【ふしぎ遊戯】 @fy1moe

虜囚が賓客に転変した。宴に寝床。男所帯の砦は大わらわだ。「貸してっ、あたしがやるわ!」皺の寄った敷布はついに客人の一人に取り上げられた。身の丈は頭半分低いが、身に纏うのは男物。加えて人並み外れた怪力が、正答を常識から遠ざける。思わず攻児は問うていた「あんさん、ホンマはどっちです?

2015-08-08 00:41:26
くじ引き交換会【ふしぎ遊戯】 @fy1moe

質問は今まで聴かれたことがないもの。驚いてそちらを見れば困惑の視線が体に向けられる。そこで服装を思い出す。女の姿をしていれば康琳なのだから答えは決まる、けれど今のあたしは「あんたが思った方よ」それがあたしよ、言ってやれば僅かの間で「…オカマか」答えに思わず拳が飛んだ。それはいや

2015-08-08 00:48:22

くじ引き交換会【ふしぎ遊戯】 @fy1moe

今日はここまでに、筆を置き目をつむる。揺らめく灯がにじむのは、流石に疲労したのだろう。懐かしい疲れだ。夥しい文書を読んだとき特有のもの。さて、この机の主はどうしているだろう。伸び伸びしていればよいけれど。早いお帰りを、いやどうぞごゆっくり、決めかねひとまず変身を解く。

2015-08-08 00:48:34
くじ引き交換会【ふしぎ遊戯】 @fy1moe

まさに夕日で焼けるとはこの事だと思った。記憶の夕焼けとはいつの頃の物だろう。けれど仲間には見慣れた物か見向きもしない。隣で喜べぬのは少し寂しいが共に旅に出て彼らの居場所に近づけただろうか。留守の申し出には感謝のするしかない。宮を思うと心配は尽きないがもう少し楽しませてはくれぬか?

2015-08-08 00:49:01