Twitter創作交流企画『色彩決闘』――一回戦第三試合

0
『色彩決闘』管理アカウント @sikisaikettou

'△')<1回戦第3戦 '△')<青の国バイスよりシャンシェ=ティパフィス(@Siyayence_siki) '△')<黒の国ニグラタより鋭ノ弍号(@a2_sikisai)

2015-05-01 17:56:28
『色彩決闘』管理アカウント @sikisaikettou

'△')<さあ時間だよ。 '△')<コロル・デュエルの開催だ! '△')<勝者には祝福を、敗者には労いを。コロル・レグナの永き繁栄と平和の祈りを込めて—— >△<)<——デュエルッ!スタートッ!

2015-05-01 18:00:08
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

——円形闘技場だ。 十分に広いそこはしっかりとした地面に固められていて、さきにちらりと様子を覗いだ通り、『父の水』はともかく『母の水』すら無いのは、それでも仕方の無い事だろう。 心細いような、淋しいような。思いながら、長く重い裾を揺らし引き摺りながら、舞台を踏む。

2015-05-01 18:17:06
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

初戦は『黒』の代表者と。 結界に遮られない観客の声に負けてしまわぬように顔を上げて、丸い広い空間の中にその色を探す——

2015-05-01 18:17:06
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

ーーひぃ……ひょろ…… 闘技場に響くのは、寂しげな横笛の音色。 ーーしゃん……しゃん…… 笛に続くのは、儚げに振るう鈴の音色。 『黒』のゲートより歩み出でしは、影絵のような、漆黒のヒキガエルが二匹。 各々が、黒い笛、黒い鈴を手に、ヒョコヒョコと踊りながら歩を進める。

2015-05-01 19:34:44
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

「……ヒトツ、人世ニ密ヤカニ」 それは、不吉の鳥を思わせる、奇妙に甲高く歪んだ声音で。 「……フタツ、舞台ニ黒子ガ上ガル」 音もなく、『黒』のゲートより詠み手が歩み出でれば、影絵のヒキガエル達は、主へ道を譲るように左右へ割れ、うやうやしくコウベを垂れる。

2015-05-01 19:34:46
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

「……ミッツ、惨メニ慈悲ヲ乞エ」 ヒキガエル達の敬う主は、実に、異様な出で立ちの男であった。 素顔を隠す、鴉を模した仮面の大きな瞳が、まるでポッカリと開いた虚のように、『青』の娘を見つめている。

2015-05-01 19:34:48
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

音もなく、鴉の羽を模した漆黒のローブを翻し、両の腕を広げ 「ヨッツ夜鴉、宵ニ呼バレテ……!」 軽やかなステップでくるっと回って 「見☆参!!」 ビシィッ!!と効果音が聞こえてきそうなほど鮮やかに決まったこの口上と振付は、今日の全国放送のため昨日徹夜で考えた自信作であった。

2015-05-01 19:34:50
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

主の仮面に隠されたキメ顔を合図に、影絵のヒキガエルはくるりと宙返り、空中でパチュン!と弾けて、踏み固められた地面へと降り注ぎ、小さな漆黒の水溜りをいくつも作る。 『闇』を生み出し液状化して意のままに操る、非常に高度な黒の奏術を駆使したこの登場演出も、かなりカッコイイと思っている。

2015-05-01 19:34:51
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

音に、青の娘はすんなりとそちらを向いた。 見えた黒い影、蟇蛙のそれに、娘は小さく、あ、と声を零した。 (『親類(みずのもの)』だ。) 魚よりは遠くとも、『母』の許に生きる者の姿。それを模した影に、場違いにもほっとする。水が無い中では、『親類』の人形でもあるのは嬉しい。

2015-05-01 20:17:16
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

そして続いた音——言葉を紡いだその奇怪な声には——娘は、素直に首を傾けた。 ——ひとつ。密やかに。……ひそやか? とても堂々としている気がするけれど。黒の方には密やかという言葉に相応しいのかしら。お婆様、シャンシェは他の色を理解出来るまでにとても長い時間を要す事になりそうです。

2015-05-01 20:17:17
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

——ふたつ。うん、これはわかる。大丈夫。「クロコ」は黒の国の伝統芸能だと聞いている。きっと舞台の上ではあの方のような衣裳を纏って……何か、するのでしょう。劇かしら。

2015-05-01 20:17:26
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

——みっつ。ちょっとわからなかった。殺す殺さないはルール違反のはずだから、慈悲……は、どうなのだろう。要るのかしら。乞う必要も、無いような気がするのだけれど。ならあまり考えなくて良いかしら。 ——青の娘は合理主義であった。

2015-05-01 20:17:43
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

——よっつ。空を見上げた。晴れた蒼穹。心としては『母の慈悲』が降されればと思ってしまう。……なら、では先程のみっつめはその事かしら。雨乞いの奏術は時間がかかるから、試合が終わってすぐに準備して、それなら夜になら出来るかもしれないけれど。

2015-05-01 20:18:00
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

そして現れたその人に——青の娘は再び、首を傾げた。そして、あ、と、もう一度声を零す。そうしてから丁寧に、その人へむかって腰を折った。 「お初にお目にかかります、黒の方。青の国の代表を務めさせて頂きます、シャンシェ=ティパフィスと申します」 まずは、挨拶。

2015-05-01 20:18:13
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

大会の対戦相手にも、不敬の無いようにね——お義兄様の言いつけには、正しく在らねばならない。 顔を上げてから、一拍。その、と、前置いた。 「鋭ノ弐号様……で、宜しいでしょうか……?」 名告りを待つべきかもと思いつつ、名告って終わりでは失礼かと、問い掛ける。

2015-05-01 20:18:24
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

「如何ニモ!我ガ名ハ鋭ノ弐号、黒ノ国ニグラタ屈指ノ暗殺術ノ使イ手ヨ!!」 再びビシィッ!とポーズをキメながら、青の娘へと仮面の瞳を向けて。 「シャンテ、ト言ッタナ。コノ大会デ私ト対峙デキル事ヲ幸運ニ思ウガヨイ!何故ナラ、命ノ心配ヲスル必要ガ無イカラナァ!ケーッケッケッ!」

2015-05-01 21:38:38
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

不躾な台詞を言い終え、ローブの中から取り出したるは、くるくると巻かれた白い紙。 それをサラリと広げれば、墨一色で描かれた、若干気の抜けた顔をした、大蛇の姿が。 「サア……戦イノ宴ヲ楽シモウデハナイカ」 そう言って、仮面の下で不敵に笑う。

2015-05-01 21:38:40
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

(……お婆様、シャンシェは、よもや名告りで噛んでしまうとは思いませんでした) シャンテと呼ばれた気がした。気のせいではなかったと思う。ああなんてそそっかしい、訂正するのも気が引けてしまう。あと何故かルールを念押して重ねてくれる様子がなんだか逆にこわかった。

2015-05-01 22:17:10
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

だが——と。広げられた巻物、描かれたものに、自然と手は動いていた。 胸元からひとつ、指先に丸い球。水そのものを固めて形と為したのは、青の民の好むもの。 「楽しんで頂けますよう、尽力致しますね」 ふわり——笑う。指先の球が、とろりと形を失くしていく。

2015-05-01 22:17:22
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

「——《先ずは一、刃在る者》」 ふわり——指先が宙に舞う。水は、直角に折れ曲がった素早い両翼のような刃へと、姿を定める。 (こわいけど、言っていられないもの) 先に動かれてしまったら、萎縮してしまいかねないから。 「先手、頂きますね、——《一の水、現と為すよう》」

2015-05-01 22:17:28
シャンシェ=ティパフィス @Siyayence_siki

小さな水の球から形を為した刃は三つ。 薄く、薄く、研ぎ澄まされたそれは、青の娘の声に従順に、黒へと向かった。

2015-05-01 22:17:29
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

ニグラタの暗殺者の奏術に、言葉はいらない。 暗殺者が仕事中に『音』を発するのは、すなわち、死へと直結する愚行。 青の娘が刃の鳥を放つのと同時。 音も無く、紙に描かれた蛇をなぞれば、ぬるりと滑らかに、『ソレ』は紙から這い出して。

2015-05-02 00:04:11
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

術者の意思に従って、大蛇は地を奔る。 液状化された『闇』で描かれた墨絵の蛇は、熱量も質量も持たない。 当然、二人の間で水と影が交錯したところで、水の刃の勢いを削ぐことは出来ない。 だがそれは……こちらの蛇とて同じこと。

2015-05-02 00:04:13
鋭ノ弍号 @a2_sikisai

影絵の蛇はさらに加速し、獲物を頭から飲み込まんという仕草で顎を開き、飛びかかる。 ……訓練された兵士でない限りは、反射で目をつぶる、一瞬の隙が生まれるはずだ。 身をよじり、一つの刃をかわし、前へと踏み出す。

2015-05-02 00:04:14
1 ・・ 6 次へ